昨日の本ブログ記事において、明石市の広報誌で「明石のまちが選ばれています」との見出しのもと、3つのランキングで明石が「第1位」だとする図表が張り付けられていること、そして、それを泉房穂市長が時折、ご満悦でツイートしていることを紹介しました。
また、この手のランキングものは、マスコミや不動産関連企業、コンサル会社など様々な調査主体が手掛けており、同じようなジャンルのものであっても、結果が大きく異なること、そして個別の調査結果に一喜一憂することは全くもってバカバカしく愚かなことであると前回の記事で指摘しました。
なお、泉市長殿は、1月8日23時32分にも、西明石が第一位とされた「本当に住みやすい街大賞2022 in 関西」についてイートしておられますが、この賞の運営主体がいかにヤバい会社で、この賞がいかに胡散臭いものかについては、後日紹介しますので、ご期待ください。
今回は、数ある子育て支援の自治体ランキングものの中で、比較的定評が高い調査として知られる、日経クロスウーマンと日本経済新聞社が共同で実施している「自治体の子育て支援制度に関する調査」に基づくライキングにおいて、明石市がどのように評価されているかを取り上げてみます。
「共働き子育てしやすい街」ランキングで明石市は何位?
日経クロスウーマンと日本経済新聞社が共同で実施している「自治体の子育て支援制度に関する調査」は2015年から毎年実施されているもので、首都圏、中京圏、関西圏の主要市区と全国の政令指定都市、道府県庁所在地、人口20万人以上の都市、計180自治体を対象にアンケートを行い、「共働き子育てしやすい街」として結果が公表されています。
2022年9~10月に実施された調査結果である「共働き子育てしやすい街2022」が2022年12月23日に公表されました。この手のランキング結果に一喜一憂するのはバカバカしいことと言いつつ、やっぱ明石市民して、明石市が何位にランキングされているのかは気になるところです。
さっそく、ランキングを見てみましょう。まずは全国の上位10位です。同順位があるとのことで11の市区がリストアップされています。
あれあれ、明石市が載ってませんね。11位より少し下ぐらいなのでしょうかね。期待して12位から54位までの表を見てみましょう。
あれあれ、上位54までにも明石市はランキングに入らず圏外ではないですか!!この調査、回答数は165自治体、回収率は91.6%とのことなので、もしかすれば明石市は未回答だったのでしょうか。日経クロスウーマンの公表資料には未回答の15自治体名が記載されているので確認しました。だけど、そこには明石市の名前は登場しません。
ということは明石市もアンケートに回答しているはずです。泉房穂市長が日頃から子育て支援が全国でトップクラスだと豪語しておられるところの明石市が、人口20万人以上の全国165自治体の中で上位54位以内に入っていないとはにわかに信じがたいことですね。何かの間違いではないか、と思う人も少なくないのではないでしょうか。
実は2019年の調査では、明石市は全国で12位にランクインされていました。
しかしながら、2020年以降は、2020年、2021年、2022年の3年連続、明石市は「共働き子育てしやすい街」ランキングの上位50位以内に入らず圏外になってしまっています。
2022年のランキング表をもう一度眺めると、ランクインしているのは首都圏の自治体が多く、関西圏では6位の奈良市(74点)、9位の堺市(72点)、25位の京都市(66点)、36位の神戸市(64点)の4市に留まっています。
関西圏だけのデータはないのかと日経新聞の記事を検索したところ、2022年の関西圏だけのランキング表がヒットしました。関西圏だけの集計では、明石市は8位となっています。だけど、得点数(54点)などを見ると、明石は決して自慢できる成績ではなさそうです。
おそらく、明石市役所内では、この調査結果はタブーになっているものと想像します。もし泉房穂市長殿がこの調査結果を目にしたら、「なんで明石が一番ちゃうんや。おかしいやろ。日経新聞社に火つけてこい。(日経新聞社を)燃やしてしまえ」と、わめき散らすこと請け合いですから ( ;゚д゚)
泉市長を支持するいわゆる泉派の人たちにとっても、「共働き子育てしやすい街2022」の調査結果はショックをもって受け止められていることでしょう。これはフェイクや、と叫んでいる人もいるだろうと思われます。一方、泉市長がアンチと呼ぶ市長に反対の立場の人たちは、このランキング結果に、「泉め、ザマを見ろ」と嬉々としていることでしょう。
ちなみに、私たちは、泉市長のことを支持も反対もしていません。決してアンチではないですので、市長のことを、中傷・侮辱するつもりはなく、あくまでも客観的・中立的に判断することを旨としています。客観性、中立性という観点から、「共働き子育てしやすい街2022」において、なぜ明石市が低位にとどまっているのか、少し検討してみましょう。
「共働き子育てしやすい街2022」の調査手法の若干の考察
民間企業が実施する子育て支援自治体ランキングのような類いのものは、調査の対象や選択する指標、各指標の配点重みづけなどによって、結果は大きく左右されます。ですので、ただ単にランキングの順位だけを見て一喜一憂するのはバカげたことであり、どのような手法で調査や解析が行われているのかを把握することが重要です。
「共働き子育てしやすい街2022」については、調査手法や調査結果の詳細が公表されておらず、そもそも調査の信憑性・信頼性は決して高いものではないですが、ランキングの指標・配点内容については簡単に記載されています。
それによると、各自治体からの回答に基づいて、45項目で配点し、100点満点でランキングしたものだそうです(本記事の末尾で、各項目をリストアップします)。項目によって配点は異なり、例えば14項目「保育の質担保への取り組み」のように6点と高い配点のものから、18項目「子どもを対象とした医療費助成の有無」や20項目「未就学児がいる世帯へのその他サービスや現物支給の有無や数」のように配点が1点と低いものまで多様です。
指標については、いわゆるストラクチャー、プロセス、アウトプット、アウトカムの各要素がちりばめられており、それなりに工夫をこらして設計されていることが伺えます。しかし個別の指標項目を見ると、具体的にどのように配点するのか疑問に感じる部分もあります。例えば、先に挙げた14項目「保育の質担保への取り組み」や34項目「学童保育の質担保への取り組み」のように、サービスの質を評価するという視点は極めて重要ですが、果たしてこの手の調査で適切に質の高さを評価できるのか疑問が残ります。
また、全般的に、保育サービスや学童保育、ワイフワークバランスなどに関するストラクチャーやアウトプットの指標に偏重しており、基礎自治体が取り組むべき子育て支援サービス全体を見渡すと、ややバランスを欠いているように思われます。
もっともこのランキングは、自治体の子育てサービス全般を俯瞰的に評価することを目的としたものではなく、日経クロスウーマンの読者層である大都市に居住する総合職のバリキャリ・ママが、育休明けに子育て・家事と仕事をうまく両立できる自治体はどこか、という視点で調査設計されているようなので、そのことを念頭において指標や配点を眺める必要があります。
ただいずれにしても、本調査では、泉市長が得意とするところの「無料化」などの個別給付のバラマキ政策をどんなに強化したとしても、低得点にしかならなさそうです。45の全項目のうち、泉市長ご自慢の「5つの無料化」について、本調査で配点されるのは、100点満点中たったの5点だけだからです。
泉市長を支持する層には、もっぱらバラマキ施策を期待している人たちが多く、このような層の意見しか市長の耳には入らないようです。なので、泉市長が打ち出す施策は、社会において期待される子育て支援のニーズからはどんどんズレていくのです。
泉市長が、実際のところ全く無理解・無関心な関連領域の一つがジェンダー平等の理念に基づく、「女性活躍」の取り組みです。この領域は、バラマキを行えば効果がでるというものではありませんが、子育て支援として社会的ニーズが高い領域です。「共働き子育てしやすい街2022」では、比較的配点が高く設定されていますが、明石市はこの領域の取り組みがゼロなので、総得点を引き下げられている印象を受けます。
「共働き子育てしやすい街2022」の調査については、上述のとおり様々な偏りがあり、また、調査プロセスの透明性や信頼性の点で多々問題がありますが、それでも、この調査の指標項目や結果を眺めることで、明石市の子育て支援策の課題や弱点も見えてきます。本来行政は、自らにとって不都合なデータであっても目を背けることなく、冷静に分析して、弱点を克服すべく施策を検討すべきものです。だけど、自らの弱点を直視できない泉市長に期待するのは難しそうですね。
(参考)共働き子育てしやすい街2022のランキングの指標・配点
(出典はこちら)
(各自治体からの)回答に基づき以下の45項目で配点。100点満点でランキング化した。()内は点数。
【1】認可保育所の0歳児クラス利用枠数と0歳児クラス申請児童数の比較(3)
【2】認可保育所の全年齢クラス利用枠数と未就学児人数の比較(3)
【3】認可保育所の全年齢クラス利用枠数の2022年度の増減率(2)
【4】認可保育所の全年齢クラス利用枠数の23年度の増減率(2)
【5】認可保育所の全年齢クラス利用枠数の24年度の増減率(1)
【6】認可外保育所の定員数と未就学児数の比較(2)
【7】病児保育施設等の充実度(3)
【8】病児保育の収容程度(2)
【10】待機児童ゼロを達成できているか(3)
【11】自治体が補助する認可外保育施設などに通う家庭への助成制度の有無(1)
【12】最大助成額(2)
【13】その他認可外保育施設に通う家庭への助成制度の有無(1)
【14】保育の質担保への取り組み(6)
【15】就学前教育の支援プログラムの有無(1)
【16】保育現場における手続き効率化のための取り組み(4)
【17】ネウボラのような切れ目ない支援制度や支援拠点の有無(1)
【18】子どもを対象とした医療費助成の有無(1)
【19】子どもを対象とした医療費助成の所得制限の有無(1)
【20】未就学児がいる世帯へのその他サービスや現物支給の有無や数(1)
【21】その具体的内容(3)
【22】コロナ下で出産する妊婦への上乗せ支援の有無(1)
【23】その内容(1)
【24】コロナ下における親のメンタルサポートの有無(2)
【25】自治体が主催、もしくは補助する婚活イベントの有無(1)
【27】2人目以降の出産・育児を支援する、自治体独自の制度の有無(2)
【28】未就学児の人数の増減(2)
【29】子育て支援拠点の数と未就学児の数の比較(3)
【30】学童保育に小3までの希望者が全員入れるか(3)
【31】学童保育の待機児童対策の有無(1)
【32】学童保育の定員を増やす予定の有無(3)
【33】学童保育の預かり時間(3)
【34】学童保育の質担保への取り組み(3)
【35】児童1人当たり1.65平方メートルの空間確保ができている学童保育の割合(3)
【36】 1支援単位当たりの平均児童数40人以下の学童保育の割合(3)
【37】学童保育の夕食・長期休みの昼食提供への取り組み(3)
【38】放課後子ども教室を実施する公立小学校の割合(2)
【39】児童虐待に対応する支援拠点の整備(2)
【40】テレワーク施設などの充実度(2)
【41】テレワーク推進企業への補助の有無(2)
【42】女性のキャリアを支援するための取り組みの有無(3)
【43】男性の意識改革のための支援策の有無(2)
【44】市区役所の男性の正規職員の育児休業取得率(3)
【45】子育て世帯の移住者への優遇策の内容(1)