泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

不動産業界の各種ランキングに見る明石市の本当の実力(その1)

先般の本ブログ記事において、明石市の広報誌で「明石のまちが選ばれています」との見出しのもと、3つのランキングで明石が「第1位」だとする図表が張り付けられていること、そして、それを泉房穂市長がご満悦でツイートしていることを紹介しました。その上で、次のように指摘しました。

 

この手のランキングものは、マスコミや不動産関連企業、コンサル会社など様々な調査主体が手掛けており、同じようなジャンルのものであっても、結果が大きく異なるのが実情です。

 

この手の民間のランキングに行政がいちいち振り回されて一喜一憂するのは愚かしいことですし、自らの自治体が上位にランキングされているものだけを作為的にチョイスして、自慢げに市民に提示するのは不誠実で滑稽なことです。

 

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

そして前回、前々回のブログ記事においては、日経クロスウーマンと日本経済新聞社が共同で実施している「共働き子育てしやすい街ランキング」と、東洋経済新報社の「住みよさランキング2022」【子育て編】を取り上げ、明石市の無残で衝撃的な結果を紹介しました。

 

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

今回は、不動産関連企業が実施しているランキングの結果を網羅的に紹介し、現在の明石市の本当の実力がどの程度のものか検証していきます。

 

7つの実施主体が「住みたい街ランキング」を公表している

一口に不動産関連企業といっても、マンションのデベロッパーから、宅地開発業者、不動産売買や賃貸の仲介業者、住宅ローンや不動産投資などなど様々なジャンルの会社があります。そして、全国規模の大手企業から、地域密着型の規模の小さな事業者まで、全国には多数の不動産関連企業が存在します。資金力の豊かな全国規模の企業では、マーケティング戦略の一環として、様々な調査を行い、その結果を広く公表しています。このような調査の1つが、いわゆる「住みたい街ランキング」です。

 

ざっとインターネットで調べたところ、順不同で並べると、
長谷工グループ、
MAJOR7(メジャーセブン)、
③いい部屋ネット(大東建託)、
④LIFULL HOME’S (ライフル)、
⑤生活ガイド.com(株式会社ウェイブダッシュ)、
⑥suumo(リクルート)、
⑦ARUHI(アルヒ)
の7つの企業やブランドが「住みたい街」系のランキングを公表しているようです。

 

これらの企業等は、不動産には無関係・無関心な人でも、テレビCMでよく目にする、あるいは、不動産の購入や賃貸を具体的に考えている人がインタネットで各種情報を集める際に、検索で上位にヒットする名称やブランドです。

 

なお、冒頭で触れたとおり、明石市の広報誌では3つのランキングついて、「第1位」だとする図表が張り付けられています。その中で、「(関西)住み続けたい駅ランキング」で人丸前駅が第1位、「【関西圏】子育てに関するサービスが充実している自治体ランキング」で明石市が第1位となっているのは、「⑥suumo(リクルート)」の調査です。また、西明石が第1位を獲得した「本当に住みやすい街大賞2022 in 関西」は、「⑦ARUHI(アルヒ)」による調査です。

 

以下において、各調査における明石市の成績を順に見ていきますが、その前に、この手のランキングものの結果を見る際に、留意すべき点について触れておきます。

 

ランキング結果を見る際の一般的留意事項

ここでは、この手の自治体ランキングものを見る際の一般的留意事項として、次の3点を指摘しておきます。

  • 対象区域は全国か、それとも特定地域限定か
  • 客観的指標に基づく評価なのか、いわゆる「人気投票」か
  • 調査手法等の開示度合いなど、調査の信頼性はどうか

 

それぞれ簡単に説明します。

 

①対象区域は全国か、それとも特定地域限定か

 

「第一位」といっても、全国で一位なのか、関西・近畿ブロックで1位か、県内で1位かで重みは全く違いますよね。高校野球と一緒で、全国1位だと見事なものです。県内1位でも、そこそこ立派なことかも知れませんが、しょせん「井の中のカワズ」のことが少なくありません。

 

関西や近畿が調査の圏域とされている場合、具体的な範囲について確認が必要です。和歌山県滋賀県も含んだ広域の区域を対象にしているものがある一方で、大阪、京都、兵庫の3府県に調査対象が限定されている調査もあります。

 

対象区域が、いわゆる京阪神に限定され、明石市は評価対象であっても、姫路市は対象区域外になっている調査もあります。

 

また、一定規模の自治体(人口〇〇以上の市)に対象を絞っているものもあれば、町や村まで評価の対象にしている調査もあるので、対象区域について把握しておくことが重要です。

 

②客観的指標に基づく評価なのか、いわゆる「人気投票」か

 

この手のランキングは、客観的指標に基づく評価と、いわゆる「人気投票」に大別されます。

 

客観的指標に基づく評価というのは、「〇〇の人数」「△△の達成率」「◇◇の金額」といったように、客観的なものさしで対象区域を数値化して評価したものです。前回取り上げた日経クロスウーマンと日本経済新聞社が共同で実施している「共働き子育てしやすい街」ランキングは、どちらかといえばこちらのカテゴリーです。

 

それに対して、一般市民を対象としたアンケート調査で「どこに住みたいか」「今住んでいるところは気にいっているか」などの聞き取りを行い、その結果を上から並べた「人気投票」のような調査もあります。こちらは主観的要素が強く、前者と比べると客観性が低いことはいうまでもありません。不動産関連企業が実施する「住みたい街ランキング」は、たいていの場合、このような「人気投票」なのです。

 

「人気投票」の調査の場合、回答者は無作為抽出でサンプリングされているか、特定のモニターや会員を対象としたものなのか、誰でも簡単に回答でき回答者の素性は不明確(サクラ、なりすましで、1人の個人が複数回投票可能)か、などによって、調査の信憑性は異なってくるので要注意です。

 

なお、客観的指標に基づく評価ではなく、人気投票でもなく、「調査主体において総合的に評価した」とされるも具体的な評価基準等の詳細が不明確なものもあります。こういった調査の場合、調査主体の意向が反映され、恣意的なランキングになる可能性が高いことは言うまでもありません。

 

③調査手法等の開示度合いなど、調査の信頼性はどうか

 

調査方法や調査期間、実際に調査を行った機関や調査・結果集計の体制など情報の開示度合いは調査によってまちまちです。調査手法等の開示の度合いが高いものほど、一般論として信頼性は高いといえます。具体的な記載が乏しいものは、信頼性が乏しく、うさんくさい怪しい調査だと見なせるでしょう。

 

これらの点にも注意を払いながら、7つの実施主体が公表している「住みたい街ランキング」において、明石市がどのような位置づけにあるのか、具体的に見ていきます。

 

 

長谷工グループ「住みたい街(駅)ランキング2022」(近畿圏総合)

https://www.haseko-urbest.com/assets/20220916_ranking_kinki.pdf

 

長谷工グループの㈱長谷工アーベストが、近畿圏居住のモニターを対象に実施した、WEBアンケート形式による「住みたい街(駅)ランキング」の調査結果を2022年9月16日に公表しました。同様の調査を首都圏でも実施しているようです。

 

調査手法等の開示の度合いが低い調査であり、調査対象の「モニター」が具体的にどのような属性の人たちなのか不明です。大阪、京都、兵庫に加え、滋賀、奈良、和歌山の居住者を対象としているようです。

 

評点については、「住みたい街(駅)の 1 位~3 位を伺い、1 位:3 ポイント、2 位:2 ポイント、3 位:1 ポイントとしてポイントの合計を集計」と記載されています。

 

詳細は不明ですが、自由回答形式ではく、主要駅を選択肢として準備し、これら限定された選択肢の中から住みたい駅名をあげる、という調査手法だったと推察します。

 

いずれにしても、この調査では、2022年の調査で明石駅が6位にランクインしています。兵庫県内ではほかに、西宮北口(1位)、三宮(3位)、夙川(8位)、尼崎(11位)、西宮(14位)、神戸(16位)、垂水(20位)の各駅が20位以内に入っています。なお、本調査では、2021年も明石は6位、2020年は9位だったようです。

 

 

新築マンションポータルサイト「MAJOR7」
「マンション購入意向者に聞く、住んでみたい街アンケート(関西圏)」2022年度

 

https://www.major7.net/pdf/trendlabo/research/034.pdf

 

マンション・デベロッパーの大手7社(住友不動産大京東急不動産・東京建物・野村不動産三井不動産レジデンシャル三菱地所レジデンス)が共同運用する新築マンションポータルサイト「MAJOR7(メジャーセブン)」がマンショ ン購入意向の会員を対象に、インターネットで住んでみたい街アンケートを実施した結果を2022年10月6日に公表しています。

 

本調査も調査手法等の開示の度合いが低い調査ですが、首都圏(一都三県)と関西圏(二府二県)でそれぞれ集計され、上位40位までが掲載されていますが、関西圏の表を見たところ、残念ながら明石は登場しません兵庫県では西宮北口(2位)、夙川(3位)、岡本(4位)、5位(宝塚)、御影(7位)、芦屋(9位)、三宮(12位)、芦屋川(14位)、神戸(21位)、住吉(22位)、尼崎(24位)がランクインしています。

 

「1,182個の選択肢から選んでいただく方式」の調査だったようですが、もしかすれば明石は選択肢に入っていなかったのでしょうか。ちなみに、2020年の調査では明石は34位にランクインしていました。

 

いずれにしても、大手デベロッパーは平均購入単価7000~8000万円以上の物件を中心に扱い、5000万円以下の物件を物色する「貧乏人」は客にあらず、というマインドなので、メジャーセブンの会員さん達は、明石のことなど眼中にない可能性があります。