泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

前市長時代の秀逸な総合浸水対策計画 その手柄を横取りする泉房穂の「嘘六百億」(その3)

さて、問題です。

明石市議会での水防に関する議員からの質問に対する、副市長の答弁を引用します。これは、いつ(何年)の答弁でしょうか。

近年、都市化の進展や温暖化の影響によると思われるゲリラ豪雨や台風の大型化などによる災害が全国各地で発生いたしております。このような降雨すべてに従来型の浸水対策だけで対応するには限界がございます。

 

このことから、本市におきましては本年3月に生命の保護、都市機能の確保、財産の保護、水循環による地球環境保全への貢献という4つの基本理念のもとで総合浸水対策を策定し、ハード、ソフトの両面から全庁的な取り組みを推進しているところでございます。

 

具体的には下水道事業による雨水の施設整備を基本としつつ、新たなハード対策として、既存のため池や公園、グラウンドなどを活用した雨水貯留や雨水浸透、各ご家庭で設置された雨水貯留タンクへの助成などにより、雨水の流出抑制に取り組むことといたしております。

 

また、ソフトの施策として、市民参加型の水防訓練や土のうづくり、防災情報の充実など、水害に対する市民の意識向上や自治会、消防団など地域との連携強化に取り組み、自助、共助の重要性について理解を深めていただけるよう取り組んでいるところでございます。

 

現在、この計画に基づきまして各施設を全庁挙げて推進するため、関係部局によります新たな調整組織として、明石市総合浸水対策計画推進委員会を設置したところでございます。

 

今後も引き続き各関係部局が相互に連携することにより、各施設のネットワーク化を図りまして、より効果的、効率的に浸水対策を推進し、被害の最小化に向けて総合的かつ横断的な観点から、市民、事業者の皆様とともに、雨に強いまちづくりに取り組んでまいります。

 

ヒントとして、本ブログで先日取り上げました、プレジデント・オンラインにおける我らが泉房穂市長の記事を抜粋します。
https://president.jp/articles/-/65717?page=5

当時、明石市の規模からするとかなり大きな下水道ネットワーク計画がありました。市の下水道普及率はすでに99.8%に達していましたが、100年に一度のゲリラ豪雨による床上浸水に備え、改めて市内全域の下水道管を太い管に交換する案です。20年で600億円を費やします。(中略)

 

役所は縦割り組織のため、狭い所管枠内で限定した発想になりがちですが、目的が浸水被害対策なら別の方法もあります。エリアを限定することもできるし、ハード整備だけでなくソフト面での対策を組み合わせて市内全域の体制を強化することもできる。組織全体でみれば、より有効でコストのかからない総合対策を選択することができるのです。

 

結局、整備計画を見直し、ハード整備中心の対策からソフト面も組み合わせた総合対策へと変更しました。結果、計画は総額150億円規模になり、450億円を削減することができたのです。

 

 

泉市長殿が誇っておられる「ハード整備中心の対策からソフト面も組み合わせた総合対策」へと変更したという主張と、副市長の答弁の内容は完全に符合しているような印象を受けますね。

 

泉房穂氏が市長に就任したのは平成23年4月のことなので、そうすると、この副市長答弁がなされたのは、きっと平成24年以降のいずれにかの年に違いない。読者の皆さんはこのように判断されるのではないでしょうか。

 

チーン。残念ながらハズレです。この答弁は、泉市長就任後のものではなく、泉市長就任の1年以上も前、平成21年12月8日の明石市議会定例会における質疑で、当時の村松克行副市長によりなされたものなのです。

 

そもそも「市内全域の下水道管を太い管に交換する」600億円計画自体、架空のフィクションであり、泉市長自身の英断により「ハード整備中心の対策からソフト面も組み合わせた総合対策」に変更し、150億円に事業費を削減して450億円を捻出したという主張も、全くもって事実無根です。これらの主張はすべからく、泉市長が市民を欺くためにでっちあげた虚言に過ぎないのです。泉房穂嘘八百ならぬ嘘六百億と言われる所以です。

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

 

明石市内の浸水をほとんどゼロにするため、仮に従来型のハード整備だけで対応するとすれば、総額600億円程度を要する、といった荒い試算のたぐいを、下水道部局が過去に弾いていたのかも知れません(この点については、次回の記事で解説します)。

 

しかし、具体の事業計画(行政計画)が立案されたことはないし、従来型のハード整備だけで対応するという発想に対しては、すでに前市長時代に決別宣言が出され政策転換されていたのです。にもかかわらず、「架空の政策転換」を捏造し、あたかも自身の手柄であるかのように公言してはばからない泉市長は、あまりにも浅はかで醜く、滑稽です。

 

総合治水から流域治水へ

明石市の浸水対策・下水道事業において、「ハード整備中心の対策からソフト面も組み合わせた総合対策」という考え方が打ち出されたのは、平成21年3月に策定された「明石市総合浸水対策計画」においてです。冒頭のクイズで引用した副市長の議会答弁は、この計画のエッセンスを言及したものです。

https://www.city.akashi.lg.jp/doboku/doukan_ka/shise/gyosei/kekaku/documents/sougousinnsui_1.pdf

 

泉房穂市長が着任する2年前に策定された「明石市総合浸水対策計画」は、現在国が推進している「流域治水」の概念を先取りする、先駆的で秀逸な内容であると高く評価することができます。

 

というのも、わが国の都市部での治水・水防対策は、昭和50年代以降「総合治水」というコンセプトのもとで推進されてきました。「総合治水」とは「都市型水害を低減するために、雨水は可能な限り河川に出さない」ということを主眼としたもので、この考えに沿って、河川整備や下水道整備といった従来の対策と併せ、雨水の貯留・浸透対策や土石流対策などが行われてきたのです。

 

「総合治水」は「総合」を謡いつつ、行政主導の公共事業中心で、住民参画の視点が希薄だと批判されてきました。気候変動など地球環境が変化し水害の被害が激甚化する中で、「総合治水」の概念では十分な対応が困難だとして、提唱されたのが「流域治水」という概念です。「流域治水」は、雨水の氾濫による被害を最小限に食い止めるためには、氾濫域だけにとどまらない流域全体の問題と捉え、国、自治体、民間企業、地域住民の協働によりハード・ソフト両面の対策を進めていくという考え方です。

https://www.mlit.go.jp/river/kasen/suisin/pdf/01_kangaekata.pdf

 

明石市総合浸水対策計画」は、まさにこの流域治水のコンセプトを先取りしていたと言えるのです。

 

前市長時代の「明石市総合浸水対策計画」の秀逸性

本ブログの前回記事で、明石市では平成16年から20年頃にかけて、浸水被害が特に多発した事実を再確認しました。

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

 

このような浸水被害の多発が、「明石市総合浸水対策計画」策定の背景事情です。本計画では、従前の雨水排水対策の取組の状況と限界について、次のように述べられています。

 明石市には、水路や合流管・雨水管が網の目のように設置されています。降雨のときには、地表に降った雨を道路の側溝などで受け、合流管・雨水管や水路を通じて河川や海に放流することで地域の浸水対策を講じてきました。

 

 市域の中でも、早くから整備を行ってきた中心市街地を含む旧明石町などの合流式下水道区域においては、一時間あたりの雨量が40mm 程度となる場合を想定して雨水管の大きさや配置を決め、整備を進めてきました。これは、5年に1回程度の確率で発生する降雨に対応した整備水準で、全国的な水準にならったものです。

 

 しかしながら、古い時代の計画に基づいて整備した市街地では、近年、急速な都市化が進展した結果、当時の想定よりも地表面への雨水流出量が増大し、時間40mm 程度の降雨対応もできないようになってしまいました。(中略)

 

 一方、近年では、全国的に時間雨量50mm を越えるような豪雨が毎年のように発生し、これまでのハード整備だけでは浸水を十分に防ぐことが難しくなってきています。平成16年の台風21号では1時間の雨量が84mm と、100年に1回を超える確率で発生するような豪雨でした。

 

 明石市では、これまで未整備であった雨水管等の整備を進める一方で、平成16年台風の浸水箇所に重点をおいた改修・改良も進めてきました。しかし、今後、降雨記録が更新されるたびに、この整備水準を引き上げて整備を進めていくことは、これまでの整備の経緯や進捗から考えて、対策が遅れてしまうことや、膨大な事業費を費やすことになり、実現可能な範囲を超えていると考えられます。

 

要するに、100年に1回を超える確率で発生するような豪雨への対応として、整備水準を引き上げて雨水管等の整備を推進するとは非現実的であるして、従来型対応への決別が高らかに宣言されているのです。

 

そして、その代替して打ち出されたのが、次のような考え方です。冒頭の副市長答弁と重複しますが、計画の記載を引用します。

 これまでの施設整備中心の浸水対策、いわゆる「ハード対策」だけでは、降雨や浸水の記録が更新されるたびに、対策の計画規模を変更しなければならず、浸水対策がいつまでたっても追いつかないばかりか、整備期間がどんどん長期化するとともに、事業費が膨大になってしまう状況が考えらます。これでは、未整備区域や予期せぬ災害への対応が遅れてしまいます。

 

 そこで、浸水の防御という防災重視の考え方から、浸水が起こったとしても被害を最小限に抑えるという減災へと発想を転換し、対策を講じていくことが重要となります。(中略)

 

 総合浸水対策計画で掲げた施策を実現するためには、市民・事業者・行政などの様々な主体が役割を分担しつつ、対策を推進していかなければなりません。実施する対策例を挙げると、行政による従来型ハード対策には、排水施設(水路、雨水管、側溝等)の整備や合流式下水道の改善(分流化)、雨水ポンプ場の設置などがあり、行政による従来型ソフト対策には、危険箇所の点検、ハザードマップの作成(洪水)、市民参加型の水防訓練の実施などがあります。市民・事業者による従来型の対策には、日頃からの防災対策、水防訓練等への参加、日常の手入れ、清掃などが挙げられます。

 

 一方、これらに加える新たな対策として、行政による、雨水流出抑制施設の設置、透水性舗装の普及などのハード対策、巡視や維持管理の充実、水防意識啓発、分かりやすい情報提供、雨水貯留・浸透施設の設置に係る各ご家庭への支援・助成などのソフト対策が挙げられます。また、市民・事業者が行う新たな対策として、止水板や土嚢の設置、各戸雨水貯留・浸透施設の設置や水防訓練等への積極的な参加、自主防災組織の充実などが考えられます。

 

 このようにハード対策とソフト対策の2つを総合的に組み合わせることや、市民・事業者・行政のそれぞれの立場から対策を総合的に実施することによって、地域防災力の向上や浸水被害の軽減が図れると考えています。そのためには、様々な主体の積極的な参加とそれに対する行政の適切な支援、すなわち市民・事業者と行政の良好なパートナーシップが不可欠な要素となります。

流域治水の理念に背く泉房穂市長の愚

前市長時代の平成21年に、既にこのような素晴らしい計画が策定されていた事実は、泉市長殿にとっては封印したい「不都合な真実なのです。「ハード整備中心の対策からソフト面も組み合わせた総合対策」へと変更することにより、事業費を600億から150億円への圧縮に成功した、という「嘘六百億」を流布してきた泉市長にとっては、総合浸水対策計画を自身の手柄であるかのように偽装して、市民を欺き続けるしかないのです。哀れですね。



ところで、本計画おいては、市民による「自助」をサポートする「公助」の仕組みとして、「雨水貯留・浸透施設の設置に係る各家庭への支援・助成」が明記されていました。実際、平成22年度には、家庭に雨水貯留施設を設置する場合の補助制度が創設されました。しかしながら、泉市長は着任早々無駄な補助金だと主張し、即座に廃止してしまいました。この計画の理念を理解できない泉市長の浅薄さを物語るエピソードです。

 

また、計画では、「関係機関との連携」という項目において、「計画の推進に当たっては、国、県が実施する河川改修や高潮対策事業等との連携を十分図っていきます。」と記載されています。浸水対策として、河川管理者である県との緊密な連携が不可欠なのは言うまでもありません。

 

計画では直接明記されていないものの、流域治水の基本コンセプトからして、周辺市町との連携も不可欠です。明石川の治水のためには、流域の大半を占める上の神戸市に理解と協力を求め、協調しての対応が不可欠です。

 

しかし、兵庫県知事や神戸市長を敵視し、常日頃から罵倒してきた独りよがりの泉房穂市長のもとで、兵庫県や神戸市との十分な連携は望むべくもありません。泉市長自身に、県や神戸市との連携・協働という発想は皆無だし、兵庫県庁職員や神戸市職員たちの間では、泉市長への怨嗟が渦巻き、「誰が泉のバカに協力してやるものか」といった本音がつぶやかれてるからです。泉市政が続く限り、残念ながら、水害への安全・安心の確保は期待できそうにありません。

 

 

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