泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

泉房穂市長の判断ミスで、次世代ごみ処理施設の整備費が200億から418億円に狂騰

大久保清掃工場と明石クリーンセンター

ごみ収集車から、次々とごみが吐き捨てられていく巨大な「ごみピット」。そこから、ゴミの塊をつかみとって引き上げていく巨大クレーン。そして、注ぎ込まれたごみを包み込み生命が吹き込まれたかのように荒ぶるオレンジ色の炎が躍動する焼却炉。数多くのスイッチやボタン、計器類、モニター類が所狭しと並んだ中央制御室ーーー。

 

はるか数十年前、小学校の社会科見学で大久保清掃工場を見学しましたが、今でも施設内の各所の映像が頭の中に鮮明に残っており、そのときの興奮は、一生忘れることはありません。

 

昭和52年に建設された大久保清掃工場は22年間稼働を続けた後、平成11年には役割を果たし終え、真横に新設された「明石クリーンセンター」に機能が引き継がれました。なお、財政難のため大久保清掃工場は解体されず、往年のままの姿で今なお残っています。

明石クリーンセンター(左)と大久保清掃工場(右)

 

鉄筋コンクリートで造られた通常の建築物(ビルやマンションなど)は、50~60年が耐用年数とされているが、適切な維持管理・補修を継続的に行えば、さらに長期にわたって使用することが可能です。しかしながら、腐食など老朽化を早める様々な有害成分を含有した廃棄物、さらには高温の炎に四六時中晒され劣化・摩耗の激しいごみ処理施設の耐用年数は20年程度とされています。

 

しかるに、平成11年に建造された「明石クリーンセンター」は、稼働開始から24年が経過しようとしており、既に標準耐用年数を超過し、老朽化が著しく進行しています。このため、現行のクリーンセンターの後継となる新ごみ処理施設の整備が待ったなしの状況となっています。

 

明石市における新ごみ処理施設の検討

実は、明石市では、新ごみ処理施設の建造に向けた具体的検討が平成25年頃から始まっていました。平成25年度には、将来的な新施設の建造に向け、コツコツとお金を積み立てておくべく、平成25年度に「一般廃棄物処理施設整備基金」という名称の特定目的基金を設置されました。基金設置時点では、平成32年(2020年)頃の着工を目指し、それまでに10億円程度を積み立てるという構想でした。

 

平成31年3月15日の市議会・生活文化常任委員会での宮坂議員と担当課長とのやりとりからは、2019年度から3カ年かけて、基本設計ほか業務委託を実施、早ければ2022年頃に着工というスケジュールが立てられていたことが判ります。総工費については、過去の答弁で、200億円程度という数値が示されていました。

 

令和元年10月には、学識経験者により構成された「(仮称)新ごみ処理施設整備基本計画策定に向けた技術支援会議」が設置され、以後、具体的な検討が進められてきたようです。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大や、環境省によるプラスチック資源リサイクル強化の方針を注視するという名目で、一旦検討が延期されました(後述しますが、着工の延期・先延ばしは、泉市長の判断ミスというべきです)。

 

そして、このたび2023年1月4日に、ようやく基本計画の素案が公表されました。

https://www.city.akashi.lg.jp/kankyou/shigen_junkan_ka/sinnro/ikenn/documents/shingomikeikaku_soan.pdf

 

基本計画素案は全体で162ページものボリュームがある資料ですが、この中には、目玉が飛び出すぐらい衝撃の数字がさらりと記されているではありませんか!!!

 

基本計画素案148ページには概算事業費として、「2019年度にプラントメーカーや建設業者から概算見積もりを徴集した結果」として、「施設整備費  約418億円(うち市負担額 約185億円)」という数字が、しれっと書かれているではないですか。この記載をはじめて目にしたとき、びっくり仰天で、しばらくフリーズしてしまいました。新手のジョークなのでしょうか。

 

上述のとおり、以前の議会答弁では事業費について200億円という考え方が示されていましたが、いつの間にやら、金額が2倍以上に跳ね上がっているのです。しかも、418億円は2019年時点の見積もりによる数字です。その後のウクライナ紛争などを契機とした原油価格、資材費、人件費の高騰により、今の時点で見積もりを取り直すとこれよりも更に2割以上金額がアップするはずです。明石市の財政力や、他の公共投資の予定等も勘案すると、とても明石市が容易に財政負担できるレベルの金額ではありません

 

それとも、これは泉房穂市長お得意の市民を騙すための新たなトリックなのでしょうか。本ブログで前回までの6回にわたって連載してきましたが、泉市長は、下水道事業予算を600億円から150億円に削減したとする架空の「嘘六百億」物語をでっち上げ、市民を欺いてきました。

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

 

すなわち、新ごみ処理施設についても、当局としては本音のところでは事業規模は200億円程度で整備する目処がたっているものの、「無駄な公共投資を抑制するべく、市長のイニシアチブで418億円から200億円への減額に成功した」と言わせしめるための、巧妙なトリックなのでしょうか…。

 

ごみ処理施設の整備費に相場はあるのか

日本全国には、1000を超える自治体のごみ焼却施設が存在します(環境省の調査では、令和2年度末時点で1056施設)。一口に、ごみ焼却施設といっても、処理方法や規模、附帯設備などは実に多様です。

 

処理方法は、焼却、ガス化溶解・改質、炭化などいずれの方法とするか、また、炉の形式はストーカ炉か、流動床炉か、などの構造によって、整備や維持管理に要するコストは微妙に異なってきます。また、附帯設備として、余熱利用や発電設備を設けるか否か、設置するとしてどの程度の規模のものにするかによって、整備費は大きく変動します。見学者スペースなども、こだわり始めると、コストアップは天井知らずです。

 

このように整備等に要する費用は、様々な要因に規定されますが、一般的には、ごみ処理施設の建造・維持管理コストは、炉の大きさ(処理能力)に比例すると言われています。通常の建築物について、建造費用を粗く見積るときに、平米単価・坪単価で概算しますが、ごみ処理施設については、一日当たりの処理能力を基準として、整備費用や維持管理コストの多寡が比較検討されます。

 

全国に1000を超える自治体のごみ処理施設の中には、1日あたりのごみ処理能力が600トンを超える巨大なものから、30トン未満の小型のものまで、様々な規模のものがあります。その規模によって、整備費用等が異なるのは当然のことですよね。

 

現在稼働している明石クリーンセンターの1日処理能力は480トンで、総事業費は219億円、うち43億円が国庫補助でした。平成14年と古い資料ですが、兵庫県内のごみ焼却施設の処理能力や竣工時期、総事業費などの一覧がホームページに載っているので、参考までにURLを示しておきます。

https://www.kankyo.pref.hyogo.lg.jp/application/files/8614/5377/4963/hyo23haikibutu12.pdf

 

高砂市加古川市稲美町及び播磨町の2市2町の広域ごみ処理施設として、昨年運用開始された東播臨海広域クリーンセンター(通称;エコクリーンピアはりま)」の1日処理能力は429トン(143トン×3炉)で、建設工事費用は、既存施設の解体・撤去業務等を含め238億円、20年間の運営・維持管理委託費は135億円です。

https://www.city.takasago.lg.jp/soshikikarasagasu/ecocleanpia/eco/eco5/2683.html

 

千葉県市川市では、平成29年に策定した次期クリーンセンター施設整備基本計画において、処理能力396トン(132×3炉)で、289億円という概算建設事業費を示しています。

https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/env05/file/0000414659.pdf

 

なお、余談ながら、市川市の基本計画と、明石市の基本計画素案の様式が瓜二つだと思ってみていたら、委託先が一緒だったようですね。どちらもパシフィックコンサルタンツの作文のようです。

 

 

基本計画素案の418億円はクレイジーな数字!?

繰り返しますが、20年以上前に建造された明石クリーンセンターは、処理能力480トンの性能で整備費は219億円、最近建造されたばかりの「エコクリーンピアはりま」の処理能力は429トンで整備費は135億円、20年間の運営・維持管理委託費は135億円です。

 

対して、今般基本計画素案が示された明石市の新ごみ処理施設については、処理能力297トン(99×3炉)で、整備費は418億円、20年間の運営・維持管理委託費は256億円だというのではありませんか。オー・マイ・ゴッド、完全にクレイジーな数字だと言わざるを得ません。

 

ちなみに、新ごみ処理施設と同時期に建造が進められる予定の市役所新庁舎については、市民の関心が極めて高いですが、こちらは総工費130億円程度と見積もられています。新ごみ処理施設の整備費は、市役所新庁舎の3倍以上の金額が示されているのです。

 

418億円という数字は、やっぱ、泉房穂市長お得意の市民を騙すための新たなトリックなのでしょうか。実際には、事業規模は200億円程度を予定しているものの「無駄な公共投資を抑制するべく、市長のイニシアチブで418億円から200億円への減額に成功した」と言わせしめるためのお芝居なのでしょうか。

 

 

高額化するごみ処理施設の整備費

418億円という数字について、泉房穂市長のねつ造を疑う人も少なからずいるかも知れませんが、必ずしも泉房穂市長が市民を欺くためにでっち上げたとは、言い切れせん。というのも、他自治体における同規模施設の最近の入札状況を見ると、同様に高額で落札されているケースが目につくからです。

 

宝塚市では、処理能力212トン(106トン×2炉)の焼却施設に、可燃性粗大ごみ処理設備やマテリアルリサイクル推進施設を附帯した新こみ処理施設が、建設費421億円、24年間の運営費177億円で落札されました。
https://www.kobe-np.co.jp/news/hanshin/202209/0015634825.shtml

 

また、埼玉県久喜市では、新ごみ処理施設の整備費が、2021年2月に市がまとめた基本計画では約359億円とされていたのに対し、60億円以上膨らみ422億円で落札されたことで、市議会が紛糾したようです。読売新聞の記事を参考までに引用します。

 

 

ごみ処理施設整備費に市議会「高すぎる」、市幹部も「高いと思う」…市長「理解得る努力したい」

 

読売新聞 2022/09/16 07:58

 

 埼玉県久喜市の新ごみ処理施設の整備計画に対し、市議会から「費用が高すぎる」との指摘が出ている。既存の菖蒲清掃センターの解体費や20年間の運営費を含め、落札額は約422億円。他自治体の同規模施設と比べてどうか、認識を問われた市幹部も「高いと思う」(9日の環境経済部長答弁)。梅田修一市長は「大変高額な契約であり、市民に丁寧に説明して理解を得る努力をしたい」と話している。(菊池裕之)

 

 開会中の市議会9月定例会には、20年間の運営費を除く約276億円の工事請負契約の議案が提出されている。14日の本会議で行われた議案質疑では、議長と副議長を除く25議員のうち7人が質問に立った。

 

 市は「(既存施設を使い続けるよりも)年間10億円の削減となる」と、金額の妥当性を主張。しかし、議員からは「落札者が近年請け負った他自治体のケースはごみ1トンあたり8000万~1億円なのに、久喜市は1億7000万円で倍近い」などの指摘が出た。

 

 整備費は、2021年2月に市がまとめた基本計画では約359億円とされていた。60億円以上膨らんだ落札額については9日の一般質問でも取り上げられた。市は独自の試算を基に「稼働日数の違いで20億円、(建設資材など)物価上昇分が25億円、にぎわい創出と環境・災害対策で30億円」と、増額の要因を説明した。

 

 議案は22日の教育環境常任委員会で審議されるが、同委には高額契約に反対する議員が多く、否決される可能性もある。

 

  ◆久喜市の新ごみ処理施設= 老朽化した3施設を集約して同市菖蒲町台に整備し、2027年4月の稼働を目指す。宮代町のごみも受け入れ、計画処理量は1日約155トン。事業は日立造船などのグループが落札した。市は「にぎわいをつくり憩いの場に」と、屋上庭園や階段ステージなどを設け、隣接地に一体整備する公園や余熱利用施設との調和を図る計画。

 

なお、埼玉県北本市の桜井すぐる市議は、自身のホームページで、「新ごみ処理施設の整備費に関する考察」という興味深いコラムを書かされているので、参考までに紹介しておきます。

http://sakuraisuguru.jp/2023/01/14/gomi-seibi2/

 

ごみ処理施設の整備費が釣り上がる背景事情

事情通に聞いたところでは、ごみ処理施設の整備費の値段など、いかようにでも設定でき、各企業では、それぞれの自治体の財政力や、首長のキャラクター、議会を構成する議員のセンスやリテラシー自治体担当者の能力などを値踏みして、言い値のような形で見積り額や入札額を弾いているとのことです。

 

このあたりは、個人が工務店に注文住宅を発注するときと事情が似ているかも知れません。見栄っ張りでそこそこお金を持っている顧客に対して、「お客様の風格にあったゴージャスでスタイリッシュなデザインにしましょう」「お子さんのため、シックハウスやカビアレルギーに留意した最高級の建材を使いましょう」「地震も心配ですよね。震度8でもビクともしない補強材を入れましょう」「地球環境に優しいことしたいですよね。エコ設備も導入しましょう」などと言葉巧みに営業すると、ごく普通の設計なら1500万円程度の住宅が、一気に3000~4000万円ぐらいに建設費が膨らみます。皆さんの身近にも、このような不動産屋の口車に乗せられた、めでたいカモがいるのではないでしょうか。

 

ごみ処理施設の施工も全く同じです。首長が見栄っ張りで、かつ、SDGsだとかエコとかの単語をふだんから連発していて、それでいて環境工学に関する知識が欠落しているような空疎な輩は、関連事業者にとっていいカモです。環境部局の担当者をそそのかして、「お宅の市長のキャラを考えると、本邦初となる世界最高水準の○○性能の△△システムを導入すれば喜ぶのではないですか。」「NIMBY対策として、新開発のダイオキシン除去装置を導入すれば完璧です」などとやりとりしていると、数十億円ぐらい値段はすぐに釣り上がります。

 

泉房穂市長は、4期目をやる気満々のようですが、新ごみ処理施設の整備費確保は、第4期泉市政における最大の難問の一つとなることでしょう。我らが泉市長が落選するようなことがあっても、次期新市長は、泉市長の置き土産である新ごみ処理施設の整備に頭を抱えざるをえないと思われます。

 

余計なオプション的な仕様を省略すれば、数十億円程度は容易に圧縮することができるかも知れません。ただし、いかんせん、この1~2年で人件費も材料費も高騰しているので、コストカットには限界があります。市債の借入金利も間違い無く上昇し、資金調達コストも割高となることは避けられそうにありません。泉市長の判断ミスで、新ごみ処理施設の着工が遅れたことで、市民にそのツケが回り、後々まで響いてくるのです。