泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

泉房穂市長の在任期間中に狂騰した新ごみ処理施設の整備費とその財源論

明石市新ごみ処理施設整備基本計画(素案)」が、意見募集の形で市のホームページに掲載されたのは、2023年1月4日のことです。(市議会には、2022年12月13日の生活文化常任委員会で報告されていました)。

https://www.city.akashi.lg.jp/kankyou/shigen_junkan_ka/sinnro/ikenn/documents/shingomikeikaku_soan.pdf



新ごみ処理施設の基本計画素案については、本ブログの前回の記事「泉房穂市長の判断ミスで、次世代ごみ処理施設の整備費が200億から418億円に狂騰」で、以下のように酷評しました。

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

基本計画素案148ページには概算事業費として、「2019年度にプラントメーカーや建設業者から概算見積もりを徴集した結果」として、「施設整備費  約418億円(うち市負担額 約185億円)」という数字が、しれっと書かれているではないですか。この記載をはじめて目にしたとき、びっくり仰天で、しばらくフリーズしてしまいました。新手のジョークなのでしょうか。

 

以前の議会答弁では事業費について200億円という考え方が示されていましたが、いつの間にやら、金額が2倍以上に跳ね上がっているのです。しかも、418億円は2019年時点の見積もりによる数字です。その後のウクライナ紛争などを契機とした原油価格、資材費、人件費の高騰により、今の時点で見積もりを取り直すとこれよりも更に2割以上金額がアップするはずです。明石市の財政力や、他の公共投資の予定等も勘案すると、とても明石市が容易に財政負担できるレベルの金額ではありません。

 

泉房穂市長は、4期目をやる気満々のようですが、新ごみ処理施設の整備費確保は、第4期泉市政における最大の難問の一つとなることでしょう。我らが泉市長が落選するようなことがあっても、次期新市長は、泉市長の置き土産である新ごみ処理施設の整備に頭を抱えざるをえないと思われます。

 

余計なオプション的な仕様を省略すれば、数十億円程度は容易に圧縮することができるかも知れません。ただし、いかんせん、この1~2年で人件費も材料費も高騰しているので、コストカットには限界があります。市債の借入金利も間違い無く上昇し、資金調達コストも割高となることは避けられそうにありません。泉市長の判断ミスで、新ごみ処理施設の着工が遅れたことで、市民にそのツケが回り、後々まで響いてくるのです。

 

前回のブログ記事において、次世代ごみ処理施設の整備費が200億から418億円に狂騰した原因が、泉房穂市長の判断ミスにあると断定的に記載しました。もし、泉市長がこの記事を見れば、「ふざけるな。これはデマだ。俺は、次世代ごみ処理施設については、何の判断もしてないぞ」とブチ切れるに違いありません。

 

確かに、泉市長は、ご自身の趣味でやっている施策については、ツイッターやインタビューなどで雄弁に自画自賛していますが、自身の関心がない又は苦手とする領域は、たとえそれが市民の安全・安心の確保にあたって必須不可欠な施策であってもほとんど言及することはありません。

 

廃棄物処理行政は、市政の中ではどちらかといえば日陰者的な位置づけですが、衛生的で快適な市民生活を維持するとともに、環境保全の観点からも極めて重要な政策領域です。しかしながら、泉市長はこの領域には全く無関心のようで、現実には完全放置プレイで、何の判断もしていないのが実情かも知れません。

 

2023年1月27日の新年度予算編成状況にかかる記者会見において、新庁舎と新ごみ処理施設の整備を巡って、記者からの質問に対し、次のようなやりとりが行われています。

https://www.city.akashi.lg.jp/seisaku/kouhou_ka/shise/shicho/kaiken/20230127.html

 

記者:新庁舎と新ゴミ処理施設ですが、これらの日程というか、今度の予算でどういう条件に基づいて今回はどこまでやるのかというあたりを教えてください。

 

市長:その2つは大きなテーマですが、これまでの延長線上で今回も進めていますから、これまでよりも早めたわけでも遅らせたわけでもなく予定通りにやっており今設計をしているので、特に私が何か判断していません。これまでの経緯を踏まえています。

 

記者:新庁舎について、いろいろな審議の結果を見ているとやるのかやらないのか分からないんですが。

 

市長:庁舎は動いてますから、その方向で動いていると理解しています。特に私がどうこう言う立場ではないです。

 

記者:ただ、政治判断もあると思うので。

 

市長:私自身は庁舎に関しては政治判断は特にありません。これまでの延長線上で位置づけているので、予定通り建設する方向だと理解しています。特に私が庁舎に関して、何かの立場はありません。もしかしたら選挙がありますから、次の市長選挙でそれを争点化する方が出られるのかもしれませんが、私の中では特にないです。

 

記者:現実的に自民党がもし市長候補を出すとした場合、庁舎が争点になるということはないと思うんですが、泉市長の陣営がそれを争点化する可能性はありますか。

 

市長:庁舎の見直しとか撤回とか、特に私の中ではそのテーマはないです。出る方がどうかは知りませんが、私の中では庁舎を争点化する予定はないです。クリーンセンターも高いですが、物価も資材も高騰してかないませんが、やはりゴミ処理は重要ですから、しっかり位置づけていくところ、予定通り進めていくと理解しています

 

(中略)


記者:ゴミ処理施設の費用がかなり高いですが。

 

市長:高いです、でも作らないわけにはいかないです。そこも明石だけの問題ではなくて、他市でもみんなゴミ処理はしていますから。他のまちでできていることが、明石でできないわけではない。若干自負すると、私はこの12年間で相当コストダウンをしました。仕事の見直しとか精査をして、明らかに筋肉体質になっているから、他のまちに比べれば格段に年間コストが安くなっている状況にあります。そういう意味では、今の明石市の筋肉体質をもってすれば、他のまちでできていることができないわけがない

 

 

新庁舎と新ごみ処理施設の整備に関し、記者からの質問に「特に私が何か判断していません。」、「政治判断は特にありません」と回答しています。庁舎やごみ処理施設の整備には、全く興味がないということを露骨に言明していますが、衛生的で文化的な生活環境の維持に不可欠で、また、市の財政を根底から揺るがしかねない新ごみ処理施設の整備について投げやりな態度で「判断しない」と責任を放棄してきたことこそが、泉市長の判断ミスであり、市長としての資質を著しく欠如していることの自白であるというべきなのです。

 

客観的な財政分析を行うことなく(泉市長にその能力が皆無であることは自明ですが)、「他市でもみんなゴミ処理はしていますから。他のまちでできていることが、明石でできないわけではない」「今の明石市の筋肉体質をもってすれば、他のまちでできていることができないわけがない」などと根拠のない根性論・印象論でもって、財政確保の見通しについて、他人事であるかのように無責任に放言しています。

 

通常、市町村においてごみ処理施設を整備する際には、10年ぐらい前から蓄財に励み、基金などの形で計画的に事業費の確保を図り、所要額の確保に備えておくべきものです。しかしながら、明石市では、泉市長のもとで、市長の趣味と売名・選挙目当てのためだけにバラマキの散財が行われ、その挙句、10年間に借金だけが溜まってしまったのです。

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

 

基本計画素案で示された金額は、とても明石市が容易に財政負担できるレベルのものではありません。前回のブログ記事で、このように記しましたが、抽象的でイメージがわかない、この主張の妥当性を理解でいない、と判断保留の読者の方は少なくないと思います。ここからは、ごみ処理施設の整備に要する費用の財源について、具体的に検討してみます。

 

市町村がごみ処理施設を建造する際の財源構成

ここで、市町村がごみ処理施設を建造する際の財源構成について、確認しておきましょう。自治体担当者が、ごみ処理施設の整備を企画立案する際には、その財源について①国からの補助金交付金)、②地方交付税交付金、③市債、④基金の繰出、⑤建設時の一般財源、の5つのカテゴリーに大きく区分して整理するようです。

 

まず、「①国からの補助金交付金)」については、ごみ処理施設の整備という特定の目的に特化した国の補助金メニューが存在し、事業費の2分の1ないし3分の1が補助されます。ただし、全ての工事に適用されるものではありません。具体的には、廃棄物処理施設整備交付金、循環型社会形成推進交付金二酸化炭素排出抑止対策事業費交付金の3つの国庫補助制度が併存しており、それぞれ微妙に条件等が異なり、各自治体において最も有利となる制度を活用することになります。

 

総事業費から、「①国からの補助金交付金)」を除いた金額は、それぞれの自治体において工面する必要があります。とはいえ、多額の建設費を建設時点の単年で支払えるものではないので、後述の通り、かなりの部分は借金(市債を発行)して賄います。これが「③市債」です。

 

ただし、借金に回すことができる額(起債限度額)は総務省によって制限されており、幾分かは、建設の当該年度に頭金を現金で支払う必要があります。建設のタイミングでの頭金にすることを目的として、数年前からコツコツと積み立てているお金が「④基金」です。

 

過去に積み立てた基金だけで、頭金を工面できない場合は、建設工事を行う当該年度の一般財源(市民から集めた市税など)を充てることになります。これが「⑤建設時の一般財源」となります。

 

ここでまでの話を整理すると、「①国からの補助金交付金)」は元々国の税金であるのに対し、「③市債」、「④基金」、「⑤その他の一般財源」はいずれも市(市民)が負担するものであることが判ると思います。ただし、「③市債」は将来の市民が負担する必要があるお金、「④基金」は過去に市民が支払ったお金、「⑤建設時の一般財源」は、今現在の市民が支払うお金、ということで支払いの時点が異なることにご留意ください。

 

ここから先は、少し理解しづらいかも知れませんが、「自治体の財政力に応じ、元々は国から自治体に配分されるお金」である「②地方交付税交付金」というカテゴリーについても、ごみ処理施設整備の財源として重要です。(「交付金」という名前が付いてますが、①の交付金補助金)とは全く別概念なのでご留意ください)。というのも、ごみ処理施設の整備にあたって、起債(市債を発行)した場合には、その返済額(元利償還金)のうちの幾分かは、基準財政需要額に算入され、自治体の財政状況に応じ、「②地方交付税交付金」の形で、国から市町村に財政転移(支払われる)ことになるからです。

 

ごみ処理施設の整備にあたっての国の負担は、狭義では①のみですが、広義には①に加え②も国が負担した額とみなすことがでます。自治体の立場からすれば、広義には②~⑤が自治体が負担すべき金額となりますが、②は国の負担とみなし、実質的な市の負担は③~⑤に留まるという見方もなされます。

 

 

新ごみ処理施設の整備費用の粗い試算

以上を予備知識として、明石市の新ごみ処理施設の整備費用について確認してみましょう。

 

基本計画素案には、「施設整備費 約418億円(うち市負担額 約185億円)」という数字が、しれっと書かれています。不親切極まりない記載と言わざるを得ませんが、上述の①~⑤の財源構成のうち、ここでいう「市負担額」は③と④と⑤の3つの合計を指しており、418億円から185億円を引いた233億円が、「①国からの補助金交付金)」と「②地方交付税交付金」の合計であり、②を実質的に国の負担とみなしていることが推定されます。

 

それにしても、明石市の基本計画素案における整備費の記載は、不親切極まりなく、不愉快ですが、明石市と同じくパシフィックコンサルタンツ(環境コンサルタント会社)が受託し、同社がドラフトを作文した「尼崎市新ごみ処理施設整備基本計画」の105ページには施設整備費の財源構成が示されています。

https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/kurashi/gomi/1014261/1022196/1022198.html

 

 

おそらく、パシフィックコンサルタンツの同一チームが、明石市尼崎市の基本計画策定業務を担当し、基本計画にどこまで具体的金額を明記するかを市の担当者と相談した結果、明石市では具体的な数字の記載を見送るという判断となったのでしょう。両市の情報開示の考え方の相違が垣間見れて、非常に興味深いエピソードです。

 

なお、平成31年2月に策定された「宝塚市新ごみ処理施設整備基本計画」においても、本編とは別に、325ページからなる資料編が公表(ホームページ掲載)されており、236ページ以降で具体的見積額が、254ページ以降で、各事業方式毎の詳細な金額入りにシミュレーション結果が提示されている点は高く評価できます。是非とも、明石市にもにも見習っていただきたいものです。
https://www.city.takarazuka.hyogo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/014/879/keikakusiryouhen.pdf

 

話を戻しますと、パシフィックコンサルタンツの試算では、尼崎市において総工費523億円で焼却施設等を整備するに際し、交付金(国からの補助金)(上述の①)は151.8億円(財源構成比は29%)、地方債(市債)(上述の③)は316.4億円(60.5%)、地方債のうち交付税措置されるのが140.9億円(27%)(上述の②)、一般財源(上述の④と⑤)が54.7億円(10.5%)という財源構成のようです。

 

尼崎市の事業では、し尿処理施設も整備されるなど、明石市が整備する施設とは微妙に異なりますが、パシフィックコンサルタンツの弾いた財源構成比の数値を、機械的明石市に当てはめてみましょう。

 

そうすると、明石市の総事業費を418億円とした場合、国からの交付金補助金)は121億円ほどが交付されることになり、253億円弱の起債が必要となります。ただし、起債額のうち113億弱は交付税措置されることになるので、実質的に明石市民が負う借金額は140億円となります。一方で、一般財源44億円を建設期間中(おおむね4~5年)に、頭金として現金払いする必要があるということになります。

 

なお、起債に際し交付税措置される地方交付税交付金の額は、自治体の財政状況によって大きく変動します。ただし、明石市尼崎市はどちらも中核市と同一カテゴリーで、財政力指数も0.8程度と似通っているので、上述のとおり機械的に比率を当てはめても、実態と大きく乖離することはないと考えられます。

 

ところで、明石市では平成25年度に「一般廃棄物処理施設整備基金」が設置され、新ごみ処理施設整備の頭金とするべく積立が行われてきました。これまでに積み立てられた額は約8.5億円で、着工までにあと1~2億ぐらい積み増しされるかも知れません。

交付金補助金)、交付税措置、市債額を除いた44億のうち、基金から繰り入れられることとなる10億円程度を引いた約34億円については、建設期間中に市税などを財源として歳出することになります。

 

非常に粗い見通しですが、パシフィックコンサルタンツの試算を前提とすると、418億円の財源内訳はこのようになります。市債額140億円、あるいは市税など一般財源として歳出を要する34億円という数字をどう評価するかは微妙です。なるほど、現時点の明石市の財政力や税収が今後も維持され、現行の国庫補助制度や交付税措置制度の補助率等が今度も持続すると仮定すれば、ぎりぎり明石市が負担に耐えることができるレベルと言えなくもありません。

 

しかしながら、この418億円という数字は、2019年度時点で見積もられたものであることを忘れてはいけません。2019年度というと、新型コロナウイルス感染症COVID-19が流行する前であり、ウクライナ危機が発生する前であり、物価水準が安定していた時期なのです。

 

エネルギー価格、建材価格、輸送費、人件費など、いずれもこの2~3年のうちに2割以上高騰しており、2019年度時点で418億円の見積もりだと、現時点で同一内容で見積もりを取ると、おそらく500億円を超過することでしょう。さらに、追加でオプション的な対応を講じることになった場合、天井知らずの価格上昇を招く懸念もあります。

 

金利上昇による「借金地獄」の懸念

今後、さらに物価の上昇が予想されており、2026年度に大久保清掃工場を解体し、27年度頃に新施設に着工するスケジュール感では、現行の内容のままでも、尼崎市の基本計画で示された523億円程度にまで総工費が跳ね上がる可能性も否定できません。

 

おまけに、数年後には、市債に借入金利が急上昇している可能性も否定できません。このあたりは、個人が持家を購入する際の住宅ローンと事情は全く同じです。ごみ処理施設の建設にかかる市債の償還期間は20年(据置期間3年)とされています。これまで年利0.3%程度の超低金利で借入れることができのが、この1~2ヶ月のうちに、じわりじわりと金利が上昇しつつあります。数ヶ月後には1%を超過し、1~2年後には、1.5%、さらには2%程度に金利があがっている可能性も否定できません。

 

仮に、新ごみ処理施設の建設にあたり、150億円を起債するとします。これまでだと年利0.3%程度で資金調達でき、据置期間の3年間は年間0.45億の利子のみを支払い、その後の17年間は年間9.06億円の返済で、利子を含めた総支払額は155.3億円となります。

 

近々、20年定時償還の利率は1%まで上昇するでしょう。この場合、据置3年間の利子払い額は年間1.5億、その後の17年間は年間9.6億円の返済で、利子を含めた総支払額は167億円となります。

 

さらに、利率が2%にまであがる事態を想定しましょう。この場合、据置3年間の利子払い額は年間3億、その後の17年間は年間10.5億円の返済で、利子を含めた総支払額は186.7億円となります。借金地獄で、子ども達の世代が、36.7億円もの利子を支払うことを余儀なくされるのです。

 

泉房穂市長の不作為により、新ごみ処理施設の整備時期が引き延ばされ、結果として建設費が狂騰し、あわせて金利も上昇局面に突き当たり、明石市の財政健全性が損なわれ更に借金が積み上がり、将来的な市民の財政負担の増大という悲劇がもたらされてしまったのです。

 

周辺自治体の人たち、とりわけ、4市町で連携し、低コストで素晴らしいごみ処理広域化に見事に成功した西側の市町の人たちからは、明石市民に対して、「あんた達が、ハッタリだけの嘘つき市長を選出したツケが回っているのであって、自業自得だよ」といった嘲笑と同情の眼差しが注がれていますね。