泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

「明石市サポート利用券」の財源は市長のポケットマネー? 泉房穂の盗人根性(その3)

さて問題です。明石市ではコロナ禍において2回にわたって、全市民を対象に「明石市サポート利用券」なる金券(1回目は5000円、2回目は3000円)が配布されました。この事業の財源は何でしょうか(費用は誰が払っているでしょうか)?

 

(1):泉房穂市長のポケットマネー(個人資産)
(2):明石市の市税(市民があまねく負担)
(3):国の税金(国民があまねく負担)
(4):明石市の市債(市民が将来負担する借金)
(5):その他

 

 

まさか(1)のポケットマネーのはずはないだろう、と真っ当な事理弁識能力を有する人であればそう考えると思いますが、令和4年6月23日の市議会・生活文化常任委員会において、第2弾のサポート利用券についての予算を審議している際に、以下のような驚くべき質疑がありました。

 

○丸谷聡子委員  (略)前回の5,000円のときに、ちょっと私、びっくりしたことがありまして、4歳の男の子が私に自分が履いてる靴を指さして、「これ、しちょちゃんに買ってもらった」って、「しちょちゃんに買ってもらって」、市長って言えないぐらいの年代の子が。お母さんに聞いたら、市長にもらった5,000円でこの靴を買いましたって言って、幼稚園でもそう言ってるんですという発言があったんですね。
 これは、市長が配るものではないので、そこもしっかり明確に広報をしていただかないと、市民に間違ったことが伝わっていきますので。そんな4歳の男の子がそういう認識で、親御さんもそうなんでしょうけれども、その辺しっかり議会でも議論をこうやってして、皆さんから頂いた税金をこういう形で還元しているんだということをきちっと伝えていただきたいんですけど、いかがでしょうか。そういうことの周知の徹底をお願いしたいんですが。


○穐原成人委員長  高橋政策局長。


○高橋政策局長兼市長室長  政策局長でございます。
 もちろん事業の趣旨につきましては、決して市長がポケットマネーでやっている事業ではございませんので、市として、可決されればですけれども、議会の御賛同を得て実施している事業だということをしっかりと周知いたしまして実施していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

市議会という市政の最重要な公式な場で、泉市長の最側近である高橋政策局長の口から、「決して市長がポケットマネーでやっている事業ではございません」という発言が飛び出したことは滑稽極まりないことですが、一部明石市民の間では、泉市長様に謝辞を表明する行動がブームになるという、偉大な国家主席を個人崇拝するどこかの民主主義人民共和国という国名の全体主義独裁恐怖国を彷彿させられる、笑うに笑えない事態が生じていたのです。

 

ツイッターの書き込みをいくつか紹介しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

事業趣旨についての泉市長の当初説明では、コロナ禍において今日・明日の食費すら確保できずにいる困窮した生活苦の市民を支援するため、極めて緊急性が高い事業とされていましたが、泉市長様に謝辞を表明する人たちからは、今日・明日の生活にも不自由しているという切迫感が全く感じられないのは気のせいでしょうか。

 

市長による予算の私物化であり、選挙目当てのバラマキではないか、という批判が生じるのも当然のことのように感じられますが、とまれ今回は、明石市のサポート券とはどのようなもので、議会ではこの事業の何が論点になったのかを再確認した上で、この事業の財源について検証していきます。

 

明石市サポート利用券」とは

コロナ禍の3年の間に、利用券やら商品券のたぐいの似たような金券が市役所によって相次いで発行され、それぞれ対象者や金額、入手方法、利用できる店、有効期限等の条件が異なっており、その違いを把握するのに苦労された市民の方は少なからずいたように思います。

 

明石市では、「サポート利用券」なる名称の金券が、新型コロナウイルス感染症流行初期段階の令和2円6月に、70歳以上の高齢者と障害者手帳所有者(約7万人)を対象に、一人1万円相当の金券が給付されました。

 

そして、令和2年9月には、非課税世帯の世帯員約4.4万人を対象に、一人5000円の「サポート利用券」が給付されました。さらに、令和3年2月には再度、高齢者と障害者(約7万人)を対象に、「サポート利用券」が発行されました。

 

コロナ禍において、特に生活支援の緊急性が高い高齢者や障害者、低所得の人たちに対して、手厚い支援を行うことに誰一人として反対者はおらず、市議会ではすんなり予算が成立しました。これら3回のサポート利用券の発行額は9.2億円、使用率は約9割で8.2億円ほどが実際に使用されたようです。

https://www.city.akashi.lg.jp/gikai/torikumi/hatsugen/shiryou/documents/bunkyou25_3.pdf

 

ところが、同じく「サポート利用券」という名称を用いていても、令和3年8月の臨時会において提案された「サポート利用券」を巡って議会が紛糾したことは明石市民の誰もが周知のことですね。

 

令和2年6月から令和3年2月にかけて発行された「サポート利用券」は、特に生活支援の緊急性が高い高齢者や障害者、低所得の人たちに対象を限定したものでしたが、令和3年8月の臨時会で提案されたものは、「市民の暮らしを守るとともに市 内の経済活動を支えるための緊急生活支援策として、明石市が市民全員をサポート し、市民全員で飲食店をサポートする」ことが目的として、全市民に1人あたり5000円のサポート券が発行されました。

 

さらに、令和4年9月から実施された「市民全員・飲食店サポート事業(第2弾)」においても、コロナ禍における原油価格・物価高騰に直面している市民の暮らしを守るととも に市内の経済活動を支えるための緊急生活支援策として、全市民を対象に、1人あたり3000円のサポート券が発行されました。

 

同じく「サポート」の語を用いていますが、当初は高齢者や障害者等をサポートすることが目的だったのが、市民全員と飲食店等の事業者をサポートすることに政策目的が置き換わったのです。なお本稿では以下、もっぱら後者を指して、「サポート利用券」や「利用券」の語を使用します。

 

明石市サポート利用券」騒動の何が争点だったのか

明石市サポート利用券」を巡っては、第1弾の事業実施にあたって市長と市議会が対立し、結局、市議会の賛同が得られなかったことから、市議会の合意が得られないまま市長の独断(専決処分)によって実施され、市政に大きな禍根を残しました。

 

泉房穂市長は、市民を支援するための事業を議会の多数派が一方的に妨害したとアジテートしています。しかしながら、市議会の議事録に目を通すと泉市長の言い分には全く根拠がなく、例によって市民を愚弄する虚偽の主張であることが明らかとなります。確かに、議会ではこの事業に対し、様々な問題点が指摘されましたが、必ずしも全否定するための批判ではなく、より良い事業にするための建設的な意見だったのです。議会で特に問題視されたのは、次の3点だと思われます。

 

ⅰ)事業目的等が中途半端であること

明石市サポート利用券」は、市民全員と飲食店等の事業者の双方をサポートするということが謳われていましたが、コロナ禍で疲弊している市民への福祉的給付か、時短要請などで売上げが減少している事業者等への給付のどちらに主眼をおいているのか、また、明石市全体の経済の波及効果を生む経済対策なのかという指摘がありました。

 

仮に、市民への福祉的給付が主目的なのであれば、市民全員に一律に広く薄くばらまくのではなく、真に支援を必要とする市民に重点的にサポートすべきではないか、という批判がありました。また、30.5万人に対し1人5000円の金券給付、計15億円強という金額では市全体へ経済的波及効果を期待するのは望み薄であり、倍額の1万円以上の給付額とするか、あるいはプレミアム付き商品券の形のほうが妥当性は高いのではないか、といった指摘もなされました。

 

ⅱ)事業実施時期について疑念があること

サポート利用券の利用期間は、8月30日から年末12月31日までとされていました。この時期は、まん延防止等重点措置期間中であり、また、新型コロナウイルスは冬場に流行しやすいといった知見が明らかとなりつつある中で、この事業の実施が人流を増幅させ、コロナを蔓延させるリスクがあるといった懸念も示されました。このような懸念があるにも関わらず、秋から冬にかけて事業を実施する緊急性や必然性がどこまであるのか、真に切羽詰まって経営破綻寸前の事業者に対して迅速な支援が必要なのであれば、別途緊急貸し付けなどの対策を講じるべきではないか、といった指摘もなされました。

 

ⅲ)間接経費が高額に過ぎること

 この事業では、30.5万人の市民に一人当たり5000円を給付する計15億2500万円の直接経費のほか、郵送料や印刷封入封織費等の事務経費として1.9億円の予算が組まれていました。とりわけ、市民1人づつ個人単位で郵送するとして、郵便料に1億5100万円が積算されていましたが、個人単位ではなく世帯単位で送付すれば大幅に減額されるのではないか、といった指摘がなされました。また、印刷封入封織費等は、随意契約が予定されており、これは一般競争入札の原則に逸脱するものであるとして批判を招きました。

 

これらの論点以外にも、利用対象店舗の妥当性や財源など、議会では様々な課題が提示され、当該事業について全否定するものではないものの、効率、有効性、公平性などを考慮して事業内容を再検討すべきとして、議会では継続審議という判断が下されたのです。

 

議会で指摘された事項は、いずれも正鵠を射たものであり、本来であればこれらの指摘を踏まえ、事業の内容を見直すべきものです。ところが、泉市長は、緊急性が高い事業であるとして、議会の議決が得られないまま、独断(専決処分)で事業を強行したのです。

 

最小限度の調整能力を有する市長であれば、議会側と協議し、ある程度は議会の意向も踏まえて事業を見直し、スムーズに事業実施にこぎ着けることが出来たことでしょう。しかしながら、泉房穂なる調整能力が皆無の市長は、協議を試みること無く、対立の道を自ら選んでしまったのです。

 

上述のとおり、議会では幾つもの疑念が示されましたが、せめて郵送方法に関して、1人づつ個人単位での郵送にこだわらず、世帯単位での送付に軌道修正していれば、議会との妥協が成立し、何ら禍根を残すこと無く円満に事業を実施できたはずです。

 

にもかかわらず、DV家庭で世帯主に送ってしまうと、その後の対応が非常に困難になってくるなどと主張して、役所側は、頑なに郵送方法の見直しを拒否していました。個別事情がある場合には個別に対応すればいいのであって、ごく少数の個別事情を言い訳にして、個人単位での郵送に固執し無駄に財源を消耗するのはこの上なく不健全な政策判断です。

 

なお、令和4年のサポート利用券第2弾では、郵送方法は世帯単位に軌道修正されました。結果として、郵送料は予算ベースで9990万円に留まり、第1弾のときと比べると5000万円以上コストが削減されたのです。一体、第1弾の際の不毛な騒動は何だったのでしょうか。ただ単に泉房穂市長が自身の人気取りであり選挙目当てのバラマキに過ぎないという本質を隠蔽した上で、正義のヒーローとして、悪なる議会多数派との闘いに挑むという偽りの茶番劇に振り回されただけだったようですね。

 

明石市サポート利用券」の財源は?

前置きが長くなりましたが、冒頭の説明の解答と解説に移ります。もう一度、質問を引用します。

 

さて問題です。明石市ではコロナ禍において2回にわたって、全市民を対象に「明石市サポート利用券」なる金券(1回目は5000円、2回目は3000円)が配布されました。この事業の財源は何でしょうか(費用は誰が払っているでしょうか)?

 

(1):泉房穂市長のポケットマネー(個人資産)
(2):明石市の市税(市民があまねく負担)
(3):国の税金(国民があまねく負担)
(4):明石市の市債(市民が将来負担する借金)
(5):その他

 

令和3年8月臨時会で提示された予算案では、間接経費も含めた所要額17億1500万円のうち、国からの補助金である「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を3.7億円、地方交付税交付金の増額分4.7億円を充てるほか(註)、市の貯金である財政基金に手を付けてそこから8.7億円を捻出する予算立てでした。

(註)厳密に言えば、普通交付税の決定額は当初予算から7.2億円の増額で、一方で、臨時財政対策債が2.5億円の減額ですが、両方ひっくるめた差し引きで地方交付税交付金の増額分を4.7億円としています。

http://www.city.akashi.lg.jp/zaimu/zaisei_ka/shise/zaise/aramashi/hoseiyosan/documents/202108ippankaikei.pdf

 

 

ところが、決算では事業総額は16億6177万円で、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」が9.9億円、一般財源が6.7億円となっています。対象者30万人強のうち、サポート利用券を実際に使用したのは約96.5%であったことなどから、予算額よりも5000万円ほど減額となっています。それに対し、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の充当額が6億円以上膨らんでいるのは、他の関連事業で執行残が生じ、サポート券事業に経費を回すことができたからだと思われます。また、市の財政全体として令和3年度は余裕が生じ、財政基金に手を付ける必要もなかったようです。

 

市議会での当該事業の審議においては、郵送料など間接経費が高額に過ぎることが問題視されたことは上述のとおりですが、経費について厳しい眼差しが注がれた理由の1つには、予算編成段階では、市民の血税により積み立てた財政基金を活用する想定であったことにあると思われます。結果的に、財政基金を活用せずにやりくりできましたが、どっちにしても事業実施にあたって無駄を省くのが重要であることにかわりありません。

 

 

ところで、決算における一般財源6.7億円について、元々の財源をどう考えるかですが、そもそも一般財源というのは、市税や地方交付税交付金地方消費税交付金などのお金を混ぜ合わせて全体調整して配分されるものです。従って、一般財源6.7億円の出所を厳密に突き止めることは出来ません。ただし、8月の予算編成時に地方交付税交付金(増額分)を充てることとされていた4.7億円は、丸々この事業に充当されたものと判断するのが妥当であり、残り2億円に、その他の一般財源があてがわれたと考えられます。

 

明石市一般財源の財源割合を考慮すれば、一般財源2億円のうち、1億円強は市税、すなわち市民から徴収されたお金が充てられていると推定することが可能です(註)。すなわち、令和3年度明石市サポート券の事業の経費16.62億円のうち、市税はたかだか1億円強であり、残り15億円以上は「国の負担」により事業が実施されていたのです。

 

(註)上述の通り、令和3年8月の予算編成段階では、地方交付税交付金の増額分の4.7億円を充てるとされていましたが、この数字は、普通交付税の決定額7.2億円の増額分と、臨時財政対策債2.5億円の減額分のを差し引きしたものです。仮に、サポート利用券の事業に臨時財政対策債を充てることなく、普通交付税の増額分7.2億円から6.7億円を捻出していたのだとすれば、計算上は、当該事業にあたって市税からの持ち出しは完全ゼロだった可能性も否定できません。

 

他方、令和4年度に実施された第2弾の事業の経費については、令和4年度6月議会において補正予算が成立しましたが、所要額10億7192万円の全額を国からの補助金である「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」により賄うこととされています。

http://www.city.akashi.lg.jp/zaimu/zaisei_ka/shise/zaise/aramashi/hoseiyosan/documents/hosei4.pdf

 

ということで、冒頭の設問に対する解答ですが、ごく一部(1億円強)は市税が充てられている可能性がありますが、大半(約26億円)は国税によって事業が成り立っていたころになります。ですので、選択肢としては、厳密には「(5):その他」が正解ですが、「(3):国の税金(国民があまねく負担)」も正答として差し支えないでしょう。

 

本来、責任意識を有する真っ当な政治家であれば、財源を明確にすべきところですが、盗っ人よろしく、国が自治体を支援するために助成した補助金を「横領(横流し)」し、あたかもこの事業が、自身のポケットマネーか、あるいは市民から預かった税金(市税)だけで成り立っているかのようにウソぶく泉市長は、卑劣で誠実性を欠如した政治家だということです。