泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

コロナ禍における高齢者、障害者、ひとり親世帯などへの給付の財源は市長のポケットマネー? 泉房穂の盗人根性(その6)

 

さて問題です。明石市ではコロナ禍初期段階である令和2年度に、高齢者、障害者、認知症者、ひとり親世帯などへの現金又は商品券等の給付が行われました。これらの事業の財源は何だったのでしょうか(費用は誰が払ったのでしょうか)?

(1):泉房穂市長のポケットマネー(個人資産)
(2):明石市の市税(市民があまねく負担)
(3):国の税金(国民があまねく負担)
(4):明石市の市債(市民が将来負担する借金)
(5):その他

 

 

関連した更問です。令和2年度コロナ禍におけるこれらの給付事業は、次のうちどれに該当するでしょうか。

(1):いずれも全国で唯一、明石市のみで実施された他の追従を許さない泉房穂市長による「冷たい社会をやさしい社会に変えるための“革命”」的な施策

(2):明石市に加え、泉市長を崇拝する首長が統治するごく少数の自治体のみで実施された先端的な福祉施策

(3):全国のほぼ全ての市町村で類似の事業がごく普通に実施されており、泉市長が独自策だと自画自賛して威張るのは愚かで恥の上塗りというべき施策

 

 

コロナ禍初期段階での社会的弱者への緊急支援策

新型コロナウイルス感染症COVID-19も、ようやく完全終息の兆しが見えてきました(再び猛威を振う可能性は完全にはゼロではないですが)。3年前のことを振り返ってみてください。2021年の1月の上旬に、中国や欧米で、未知の感染症が大流行している、というニュースが流れ始めましたが、当初日本人の多くが「対岸の火事」のような受け止めでした。

 

しかしながら、中国や欧米からの帰国者を中心に感染者が確認され、また感染症からクラスターが発生し、また、大型客船での集団感染事例などが生じる中で、3月から4月にかけて、日本社会全体が集団パニックの様相を呈するようになりました。感染患者数の増大とともに、街中からは人が消え、飲食店などは長期の臨時休業に追い込まれていきました。

 

新型コロナウイルス感染症は、特定の層の人たちだけでなく、あらゆる人たちに対して脅威をもたらしましたが、いわゆる社会的弱者とされる人たちには、特に深刻な影響が生じました。

 

サービス業における非正規雇用者を中心に、解雇・雇い止めが相次ぎ、手元のお金が尽きてしまい今日・明日の食費すら確保できない、家賃の支払いができない、といった悲痛な声が低所得者層やひとり親世帯などで聞かれるようになりました。

 

また、感染拡大に伴い、高齢者や障害者向けのデイサービス等の福祉サービスについても、営業の一時停止あるいは規模縮小が打ち出され、行き場を失うサービス利用者への対応も深刻な課題となりました。

 

このような社会的弱者とされる人たちの生活を支援するためのセーフティネットの仕組みとして、自治体では、様々な属性の社会的弱者とされる対象者を財政支援するための緊急措置が講じられました。以下において、令和2年度コロナ禍の初期段階において明石市で実施された社会的弱者向けの給付事業を列挙します。

 

1)高齢者、障害者、非課税世帯へのサポート利用券交付

 令和2年6月に、70歳以上の高齢者又は障害者手帳所有者(69,474人)を対象として、飲食や日用品の購入、タクシー乗車に利用できる1万円分の「サポート利用券」(商品券)が交付されました。

 また、令和2年9月には、非課税世帯の世帯員(44,403人)を対象として、5000円分の「サポート利用券」が交付されました。

 これらの事業(サポート利用券発行事業、所管は高齢者総合支援室)には、計8億8881万円が支出されました。

 

2)高齢者、障害者への再度のサポート利用券交付

 令和3年2月からは再度、70歳以上の高齢者又は障害者手帳所有者を対象として、「サポート利用券」が交付されました。この事業(高齢者・障害者サポート利用券発行事業、所管は地位共生社会室)は70,773人が対象5000円分の「サポート利用券」が交付され、総事業費は3億5757万円でした。

 

3)在宅要介護者・認知症者への交付金支給

 新型コロナウイルス感染症の影響により、在宅要介護者では介護サービスや地域の通い場等の利用が制約され、心身の状態の悪化や認知症の発症・進行に伴い、日常生活への支障が懸念されたとして、在宅要介護者や認知症者、その介護者の負担軽減のための現金給付が行われました。

 具体的には、在宅用介護認定者(10,706人)に対して1万円の「在宅介護支援金」が給付され、さらに、在宅の認知症の診断を受けた人(2,493人)には別途2万円の「認知症サポート給付金」が支給されました。

 令和2年10月から実施されたこの事業(認知症あんしんプロジェクト事業)の事業総額は、1億6228万円でした。

 

4)ひとり親世帯への給付金支給

 新型コロナウイルス感染症による学校園の臨時休業等に伴い、とりわけ、ひとり親世帯では、就業環境の変化による深刻な影響が懸念されました。このため、児童扶養手当受給者(2132世帯)を対象に、令和2年5月から、1世帯あたり5万円の給付金が支給されました。この事業(児童扶養手当受給者に対する緊急支援給付金事業)には、計1億660万円が支出されました。

 また、令和2年12月には、ひとり親世帯に対し、再度、5万円の給付金が支給されました。この事業(ひとり親世帯に対する臨時支援給付金事業)は、事業所の休業や勤務日数の減少等により、特に厳しい経済状況に陥っているとの懸念から実施されたものです。2385世帯が対象となり、総事業費は1億1925万円でした。

 

5)子育て世帯への緊急支援

 新型コロナウイルス感染症による学校園の臨時休業や事業所等の休業等に伴い、子育て世帯全般への影響が懸念されたことから、子育て世帯全般の経済的安定を図るための緊急支援として、令和2年6月には、児童手当受給世帯(公務員世帯を除く23.317世帯)に対し、1世帯あたり1万円の給付金が児童手当に上乗せして給付されました。

 この事業(児童手当受給者に対する緊急支援給付金事業)の総事業費は、2億2317万円でした。

 

社会的弱者への緊急支援策の総額は18億5768万円

以上、令和2年度コロナ禍の初期段階において明石市で実施された社会的弱者向けの給付事業について、各事業の趣旨、対象者数、給付額を細かく見てきました。各事業において、数千人から数万人を対象に、1人あたり数千円から数万円が給付されましたが、それぞれの総事業費は億円のオーダーでした。

 

これらの事業は、数千人から数万人を対象に、1人あたり数千円から数万円を給付するとなると、単純計算で数億円の財政負担となるということを如実に示す、財政論的にみて興味深い例と言えます。

 

コロナ禍という深刻な危機事象において、社会的弱者を支援するための施策に対し、「財政論的にみて興味深い」なんて表現を使うと、不謹慎だとお叱りを受けるかも知れませんね。誤解なきように申し上げると、今回取り上げた事業はいずれも、日本社会が長年経験してこなかった疫病の発生という非常事態において、社会的弱者の生活をサポートする公助の緊急措置(セーフティネット)としては適正かつ妥当なものであったと考えます。ただ、自治体が広範な市民に公助の支援を行うためには、かなりの財源が必要だという事実を忘れてはなりません。

 

自治体にとっての億円オーダーのお金の負担感は、当然のことながら、自治体の規模によって大きく異なります。横浜市や神戸市のように人口100万人を超える巨大な指定都市にとっての1億円は、それほど大きな額ではありません。人口数万人程度の小規模市にとっての1億円は、とてつもなく大きな金額です。それに対して、人口30万人程度の明石市にとっての1億円というのは、そこそこ大きな金額なのです。

 

このような財政の規模感を念頭におきつつ、今回取りあげた各事業の事業額を振り返ってみてください。1)から5)までの5つの事業の総額は、18億5768万円でした。

 

緊急支援策18億5768万円の財源は?

ここで、冒頭の質問を再掲します。

さて問題です。明石市ではコロナ禍初期段階である令和2年度に、高齢者、障害者、認知症者、ひとり親世帯などへの現金又は商品券等の給付が行われました。これらの事業の財源は何だったのでしょうか(費用は誰が払ったのでしょうか)?

(1):泉房穂市長のポケットマネー(個人資産)
(2):明石市の市税(市民があまねく負担)
(3):国の税金(国民があまねく負担)
(4):明石市の市債(市民が将来負担する借金)
(5):その他

 

この質問の答えは、明石市のホームページに掲載されている3つの資料、具体的には「主要施策の成果報告書」「事務事業点検シート」「令和2年度新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の実施状況及び効果検証」を見れば、判明します。

 

これらの資料をもとに、各事業の財源内訳を下図にまとめました。この表は、単位は億単位で、小数点以下は万円です。「臨時交付金」というのは、国の補助金である「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」のことです。「寄付金」は、「新型コロナウイルス感染症あかし支え合い基金」に市民などから寄せられた寄付金と思われます。一般財源は、市税に加え地方交付税交付金などの形で国や県から市に交付されたお金のことです。

 

 

これら事業の総額は18億5768億円の内訳は、17億7700万円(率にして95.7%)が国から自治体に配分された補助金である「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」、寄付金が1492万円(0.8%)、一般財源が6577万円(3.5%)であることが判ります。

 

一般財源6577万円の中には、明石市民や市内の事業者が市に納税した市税もいくばくか含まれています。市税の内数を厳密に算出することはできませんが、明石市の令和2年度決算における「市税435億9053万円」と「地方交付税交付金185億3838万円」の比率から、一般財源のうち、市税の構成割合は約30%と推定することができます。そうすると、一般財源6577万円のうち、市税は2000万円弱ということになります。

 

すなわち、今回取り上げた各事業の総額18億5768億円の内訳として、泉市長が言うところの「市民から預かったお金」は2000万円弱、率にして高々1%に過ぎず、これらの事業の大半が、国からのお金に全面依存して事業が実施されたことが確認できます。

 

ですので、設問の答えは、市税や寄付金も一部財源となっているので厳密には「(5):その他」が正解かも知れませんが、実質的には「(3):国の税金(国民があまねく負担)」が正答と見なすことが妥当です。

 

今回取り上げた事業はいずれも、日本社会が長年経験してこなかった疫病の発生という非常事態において、社会的弱者の生活をサポートする公助の緊急措置(セーフティネット)としては適正かつ妥当なものであったと考えます。しかしながら、いずれの事業についても、全国で唯一、明石市のみで実施された他の追従を許さない泉房穂市長による「冷たい社会をやさしい社会に変えるための“革命”」的な施策では断じてありません。

 

これらは、基礎自治体が住民サービスとして当然に実施すべきものであり、対象者や給付額などの条件は、自治体によって異なるものの、ほぼ全ての自治体において、類似の社会的弱者向けの緊急支援策が実施されてきました。市町村にとってごくごく当たり前のセーフティネットの施策であり、かつ、財源のほぼ全てが「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」などの形で国から財政支援されたものであることから、これらの施策を自分の手柄だと威張るような愚かで浅ましい首長などほとんど存在しません

 

全国唯一の例外は、「冷たい社会を優しく変えたい」「独自の支援策で困っている市民を助けたい」「20の独自のコロナ支援対策で市民の窮地を救った」などとホラを吹きつつ自画自賛している東経135度子午線上に位置する中核市の卑しく醜い某市長ぐらいですね。