泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

日本の子ども・子育て政策予算の推移と、泉房穂・明石市政の粉飾決算の実態

 

さて問題です。

【問1】2つの数字を挙げます。これらはそれぞれ何の数字で、両者はどのような関係にあるのでしょうか。

 「126億円」「258億円」

 

本ブログの常連読者の皆さんなら、答えをよくご存じですよね。

ここで、我らが泉房穂明石市長のツイートを2本、ピックアップします。

 

まずは、2022年12月4日のツイートです。

明石市は『こども予算』を言葉どおり倍増した。市長就任前の126億円から258億円へと132億円の増額を実現した

トップが決断して実行すればいいだけのことで、全国どこの自治体でも可能だし、まして国なら来年からでも実現可能だ。

 

 

次に、2022年8月21日のツイートです。

明石市は『予算のやりくり』だけで「こども予算」を“2倍以上”にした(126億円→258億円)。そして市独自の5つの無料化も実施し、人口増・経済活性化も実現した。財政力も弱く、国債も発行できない明石市でできることが、国でできないわけがない。

国民の負担増なき「こども予算の拡充」は当然可能だ。

 

問1の答えは、明石市の一般会計予算における民生費・児童福祉費(泉市長の言葉を用いると明石市の「こども予算」「こども部門」の予算)が2010年度は126億円だったのが、2021年度は258億円だったということです。

 

 

日本全体のこども・子育て政策予算の推移

 

さて問題です。

【問2】2010年度から2021年度までの10年間に、国や自治体など日本全体で子育て支援の予算(こども予算)は、どのように推移したのでしょうか。

 1)10年間でむしろ、子ども予算は減少した
 2)10年間で子ども予算は、ほぼ横ばい。
 3)10年間で子ども予算は、20~30%増加した
 4)10年間で子ども予算は、ほぼ倍増した。

 

事情をご存じでない方であれば、直感的に、おそらく「1)減少」ってことはないだろう、「2)横ばい」か、あるいは「3)20~30%増加」程度ではないか、このように推測されるかも知れませんね。

 

本ブログの常連読者の皆さんであれば、先日の記事「岸田総理以下、政府内で共有されているらしい泉房穂市長/明石市政の評価」の記載のことを思い出されるのではないでしょうか。

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

先日のこの記事では、タイトルどおり、岸田政権において、泉房穂市長/明石市政の子育て支援策をどのように評価されているか、旧知の全国紙新聞記者から聞き取った内容を取り上げましたが、政府は、次のような評価を下していましたね。

 

泉市長は、在任期間中に子ども予算(児童福祉費)を126億円から258億円に倍増したと誇示するが、そもそも同期間中に日本全体の家族関係支出はほぼ倍増しており、明石市だけが特異的に子ども予算が著しく増大した訳ではない。

 

すなわち、【質問2】の答えは「4)10年間で子ども予算は、ほぼ倍増した。」なのです。

 

 

これまで、大手マスコミや著名な評論家をはじめ多くの者が、「自分は10年間に子ども予算を倍増させた。すごいだろう」という泉房穂市長の雄弁な自画自賛にまんまと騙されてきたようです。けれど、なんてことはない、この10年間で、明石市だけではなく日本全体で子育て政策の充実が図られ、子ども予算はほぼ倍増を実現しており、明石市における予算の推移は特段優れた実績ではなく、市長が威張って自慢すべき手柄なんかではないのです。他の自治体でも、当たり前のレベルの政策を明石市でもごく普通にやっているだけであり、日本全体が泉市長の誇大妄想に振り回されてきただけです。

 

もとより、政府内部では、「泉房穂なんぞ所詮、雑魚(ザコ)に過ぎないので、好き勝手発言させておいても無害である。いずれ論理破綻して自滅するであろうから、政府として泉に反論すること無く、放置・無視しよう。」というのが共通認識だったようですが、本日(2023年3月31日)、政府はさりげなく反撃に出たようです。

 

というのも、夕方のニュースでも大きく取り上げられていますが、政府(具体的にはこども政策大臣)は、「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」という文書を公表しました。俗に、「異次元の少子化対策たたき台」と呼ばれているものです。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_seisaku_kyouka/pdf/kyouka_siryou1.pdf

 

この試案に盛り込まれている具体的な施策の内容については、すでに報道されているので、ここでは論評しません。私たちがこの文書において注目したのは、これまでのこども・子育て政策の変遷について振り返った次のくだりです。

○(中略)家族関係社会支出の対 GDP 比は、1989 年度の 0.36%に対し、1999年度には 0.53%とわずかな伸びにとどまった。

 

〇 2010 年代に入り、「社会保障と税の一体改革」の流れの中で大きな転機が訪れた。消費税率の引上げに伴う社会保障の充実メニューとして、こども・子育て分野に 0.7 兆円規模の財源が充てられることとなり、さらに、2017 年には「新しい経済政策パッケージ」により、「人づくり革命」の一環として追加財源2兆円が確保された。

 

〇 こうした安定財源の確保を背景に、待機児童対策、幼児教育・保育の無償化、高等教育の無償化などの取組が進められ、待機児童は一部の地域を除きほぼ解消に向かうなど、一定の成果を挙げた。これらにより、家族関係社会支出の対 GDP 比は、2013 年度の 1.13%から 2020 年度には 2.01%まで上昇し、また、国の少子化対策関係予算についても、当初予算ベースで 2013 年度の約 3.3 兆円から 2022 年度には約 6.1 兆円と過去 10 年でほぼ倍増した

 

3月31日に公表された政府の「こども・子育て政策の強化について(試案)」の参考資料に添付されている、国の少子化対策関係予算の表を引用します。

 

あわせて、家族関係社会出の推移を示します。「日本は、欧州諸国と比べ、子ども・子育て政策予算が桁違いに少ない」、という固定観念が国民の間に存在しますが、この10年で対GDP比でみた予算規模は欧州諸国に猛追しているのが真相です。

 

冒頭のツイートの記載を再引用しますが、泉房穂市長は、

明石市は『こども予算』を言葉どおり倍増した。トップが決断して実行すればいいだけのことで…国なら来年からでも実現可能だ。本当は難しくない。

明石市は『予算のやりくり』だけで「こども予算」を“2倍以上”にした。国でできないわけがない。

などと威勢良くまくし立ててこられました。泉市長は、同時期に、日本全体でこども予算が倍増しているという事実を「井の中のカワズ」で存じ上げなかったのでしょうか。それとも当該事実を知った上で、国民から賞賛を浴び自己陶酔するために国民を騙してきたのでしょうか。

 

明石市の子ども予算の財源構成

 

さて問題です。

【問3】市長就任前の126億円から258億円へと倍増を実現したと泉市長が主張されるところの明石市の子ども予算258億円のうち、市の独自財源である「市税」が占めるウエイトは何%程度でしょうか。
 1)子ども予算の財源のほぼ全額を市税だけで賄っている。
 2)子ども予算の財源のうち、市税が占めるウエイトは70~80%
 3)子ども予算の財源のうち、市税が占めるウエイトは50%程度(約半分)
 4)子ども予算の財源のうち、市税が占めるウエイトは30%弱

 

泉市長は、
市民からお預かりしている税金に、知恵と汗の付加価値をつけて、市民に戻していくのが、行政の役割だとも思っている。
明石市は「予算のやりくり」でこども予算の倍増を実現した
少子化対策には増税が必要とは思わない。明石市は、一般の家庭と同じように、お金のやりくりで『子ども予算の倍増』を実現してきた。
といった発言を堂々と繰り返し豪語しておられます。

 

このような発言を考慮すると、こども予算の「1)ほぼ全額」とまではいかなくても、「2)70~80%」は市民から預かった税金、すなわち市税で賄われているのではないか、このように予想される方が大半ではなかろうかと予想します。

 

だけど、本ブログの常連読者の皆さんであれば、答えはご存じですよね。本ブログの祈念すべき初回記事「明石市の子ども政策は、財政面で国と県に3分の2以上依存しています 」(2022年12月8日)に既に答えを書いています。

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

2021年度に258億円計上された明石市の子ども予算の財源は、次のとおりです。

明石市民が負担した市の税金:73億円(258億円全体に占める割合は28%)

明石市民が将来負担すべき借金:6.6億円(同3%)

・国から明石市に配分されたお金:140億円(同54%)

兵庫県から明石市に配分されたお金:33億円(同13%)

 

 

したがって、【問3】の正解は4)で、「子ども予算の財源のうち、市税が占めるウエイトは30%弱」に過ぎないのです。

 

明石市は『こども予算』を言葉どおり倍増した。トップが決断して実行すればいいだけのことで…国なら来年からでも実現可能だ。本当は難しくない。」
明石市は『予算のやりくり』だけで「こども予算」を“2倍以上”にした。国でできないわけがない。
などと泉市長は、煽動していますが、実態としては、国や県に全面依存して子育て支援施策が行われているのです。

 

子ども予算の額は、258億円から297億円に上方修正!?

 

ところで、従来、泉房穂市長は、子どの予算の倍増を誇示する根拠数値として、冒頭【問1】でお示しした「126億円」「258億円」の2つの数字を用いておられました。ところが、2023年2月以降は、何故か「126億円」「258億円」という数字を使うのをやめて、「125億円」「297億円」という2つの数字を用いるようになりました。

 

2つの図表を比べてみましょう。泉市長の講演資料の中で、「126億円⇒258億円」の図表が最後に用いられたのは、確認できる範囲で2023年1月24日です。

 



 

そして、泉市長の講演資料の中で、「125億円⇒297億円」の図表が最初に用いられたのは、確認できる範囲で2023年2月11日です。紀元節に敬意を表して、数字を盛ったのでしょうか。

 

 

ツイッター上では、例えば2023年3月9日には、次のようにつぶやいています。

「お金がない」と“言い訳”をするのが、政治家の仕事ではない。お金を何とかして”実行”するのが、政治家の仕事。明石市は“言い訳”をせずに“実行”をした。子ども予算も、市長就任後に2.3倍(125億円→297億円)に増やした。要はトップの“やる気”次第ということだ。

 

一体全体、なにゆえに予算の額が258億円から297億円に上方修正されたのか、そのからくりについて、読者の皆さんは疑問を感じられると思います。

 

種明かしをいたしましょう。実のところ、1月まで市長が用いてきた「126億円⇒258億円」は「当初予算額」を比較したもので、2月以降に用いられるようになった「125億円⇒297億円」は「決算額」を比較したものなのです。

 

258億円と297億円の両方とも、2021年度(令和3年度)の数字であり、どちらかが誤りというものではありません。前者の258億円という数値は、2021年4月から2022年3月までの1年間に事業に用いる予定の金額として、2021年3月に市議会で議決された事前計画段階の金額(当初予算)なのです。

 

それに対し、当初予算を決めた後、追加的に事業が生じたり、あるいは事業費の過不足が発生した場合には、都度、議会と相談しながら補正予算を編成します。結果として、2021年度の1年間にこども施策に用いた金額の事後精算金額が297億円だったのです。なので、297億円という数字自体、不当に水増しされた値という訳ではありません。

 

子ども予算は多様な事業で構成されており、各個別事業によっては、当初予算額よりも決算額のほうが微妙に金額が大きくなったものがある一方で、当初予算額よりも決算額のほうが小さく不用額が発生するものもあります。ただ、子ども予算をトータルにみると、通常は予算額と決算額は、近い値となるものです。

 

ところが、2021年度については、当初予算額と決算額とで40億円もの大きな差額が生じています。この差額は、「子育て世帯への臨時特別給金給付事業」「子育て世帯生活支援特別給付金事業」など、コロナ禍における単年度限りの給付事業が大きな要因となっています。

 

当初予算を組む段階では、これらの事業経費は見込まれていなかったものの、年度途中に新型コロナ対策として予算編成されたものなのですが、これらの事業はほぼ全額、国の税金で賄われており、補正予算による追加の国費投入額は、合計56.4億円にのぼります。

 

結局、決算内容を精査すると、2021年度の明石市の子ども施策(児童福祉費)の決算額296.8億円の財源構成は以下のとおりです。

 

明石市民が負担した市の税金:63.2億円(297億円全体に占める割合は21.3%)
明石市民が将来負担すべき借金:0.8億円(同0.3%)
・国から明石市に配分されたお金:193億円(同65%)
兵庫県から明石市に配分されたお金:31.3億円(同10.6%)
・その他(使用料、寄付金等):8.5億円(同2.9%)

 

※児童福祉費の一般財源額は97.85億円であるが、一般会計総額における市税と地方交付税交付金の構成比率64.6%:35.4%で割り振って、市税63.2億円、地方交付税交付金34.7億円と見なした。

 「国から明石市に配分されたお金:193億円」は、国庫負担金・国庫補助金の158.3億円と、地方交付税交付金34.7億円の合計額である。

 

これらの数値を見て、どのような印象を受けるでしょうか? 

 

増税せずに、市民から預かった市税のやりくりで子ども予算2.38倍への増額を実現した、というのが房穂市長のご持論でありまするが、297億円のうち、市民(個人や企業)から徴収した市税はたかだた2割強に過ぎず、3分の2近くは国から財政転移、1割強は県から財政支援されたお金なのです。厚顔無恥も甚だしいですね。泉市長の主張を前提とすれば、見かけ倒しの欺瞞に満ちた粉飾決算だと言っても過言ではないでしょう。