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嘘つきの精神医学入門 某中核市長の精神構造を理解するために(上)

中核市の市長様は、衝動性が強く怒りっぽいこと、また、悪びれることなく平然と嘘をついたり大言壮語を放って涼しい顔をしており、虚言癖があることが、今や市民の間で広く知れ渡っています。

 

皆さんの周囲にも、ホラ吹きとかペテン師・山師呼ばわりされている人が何名かいるのではないかと思いますが、嘘つきの病因・心理要因は単一ではなく、多様な精神疾患やパーソナリティの異常によって虚言という行為・症状がもたらされることが知られています。

 

今回は、某中核市長の精神構造を理解するための基礎情報として、症状として虚言を呈する12の疾患を取り上げます。本記事は、客観的な参考情報として、虚言行動を呈する各種疾患を紹介することを目的としたものであり、某市長がここで取り上げたいずれかの疾患に該当などと軽々しく主張するものではないので、くれぐれも勘違いなさらぬようご留意ください。

 

なお、GoogleのYMYL(Your Money or Your Life)コードに抵触しないよう、本記事の内容については、我々の仲間の医師による監修を受けていることを申し添えます。

 

嘘つきと精神医学

嘘つきの研究は、アントン・デルブリュックの「空想虚言者」(1891年)が嚆矢とされています。統合失調症双極性障害の研究で有名なエミール・クレペリンは、20世紀の初頭に「虚言者と詐欺師」を精神病質パーソナリティの1類型と整理し、「弁舌が淀みなく、当意即妙の応答がうまい」「人の心を操り、人気を集め、注目を浴びることに長けている」といった特徴をあげています。

 

その後の研究で、嘘つきの病因・心理要因は単一ではなく、多様な精神疾患やパーソナリティの異常によって虚言という行為・症状がもたらされることが明らかとなってきました。

 

自己愛性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、などの患者では、虚言・嘘が目立つことが知られています。米国精神医学会(APA)が作成し、精神医学医療域で国際的に広く活用されている診断基準である「DSM-5」においては、反社会性パーソナリティ障害のほか作為症(虚偽性障害)やギャンブル障害、素行症などの疾患において、主要症状の1つとして虚言・嘘が明記されています。

 

また、統合失調症発達障害アスペルガー症候群)、解離性障害認知症などの患者では、虚言・嘘が中核的な病理ではないものの、精神症状の反応として、結果的に虚言・嘘が観察されることがあります。

 

パーソナリティ障害とは

ここで列記した各疾患等を個別に解説する前に、まずは「パーソナリティ障害」について説明しておきましょう。

 

大多数の人とは違う反応や行動をすることで、周囲に迷惑をかけたり、本人が苦しんでいる人に対し、日常用語で「人格障害」と呼ばれることがありますね。「人格障害」という言葉はネガティブな価値を帯びているので、専門家はこの表現を回避し、認知(ものの捉え方や考え方)、感情のコントロール、対人関係といった種々の精神機能の偏りによって逸脱行動が生じる病態を「パーソナリティ障害」と呼称します。

 

ちょっと小難しい表現ですが、DSM-5ではパーソナリティ障害は「その人が属する文化から期待されるものから著しく偏り、広範でかつ柔軟性がなく、青年期または成人期早期に始まり、長期にわたりかわることなく、苦痛または障害を引き起こす内的体験および行動の持続的様式」と定義されています。

 

そして、DSM-5では、パーソナリティ障害は10種のタイプが指定され、それらは、「A群:奇妙で風変わりな群」、「B群:演技的、情緒的で移り気な群」、「C群:不安、恐怖を示す群」の3群に分類されます。虚言との関連が強い自己愛性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害の3つは、いずれも「B群:演技的、情緒的で移り気な群」に該当します。

 



それでは以下において、症状として虚言を呈する12の疾患を列記します。なお、所々下線部を引いていますが、深い意味はありません。深読みしないでくださいね。

 

(1)自己愛性パーソナリティ障害

自己誇大視と尊大・傲慢な態度が中心的特徴です。周囲の人々を軽視するも、同時にその人々からの注目と称賛を求めたり、自分を例外的存在とみなす特権的意識を抱き、そのような扱いを周囲の人に求めます。それが受け入れられなかったり、他者が自身のことを批判したり無関心を示すと、抑うつや激しい怒りが生じます自分の成功や権力、理想などについての空想にふけっていることもあります。

 

内面的には、自分に強い関心を向けており、他者の自分に対する評価に強いこだわりを見せます。自己評価はそれによって大きく動揺します。対人関係では、自分を中心に物事を考えており、他者への共感性が低く、他者の欲求や感情への認識が困難であるのが特徴です。

自己愛性パーソナリティ障害の診断基準[DSM-5]の抜粋

 

自己愛性パーソナリティ障害の診断を下すには、患者に以下が認められる必要がある:

    誇大性、賞賛の要求、および共感の欠如の持続的なパターン

 

このパターンは、以下のうちの5つ以上が認められることによって示される:

  •  自分の重要性および才能についての誇大な、根拠のない感覚(誇大性)
  •     途方もない業績、影響力、権力、知能、美しさ、または無欠の恋という空想にとらわれている
  •     自分が特別かつ独特であり、最も優れた人々とのみ付き合うべきであると信じている
  •     無条件に賞賛されたいという欲求
  •     特権意識
  •     目標を達成するために他者を利用する
  •     共感の欠如
  •     他者への嫉妬および他者が自分を嫉妬していると信じている
  •     傲慢、横柄

 

(2)反社会性パーソナリティ障害

他者の権利を無視・侵害する反社会的行動パターンが中心的特徴です。衝動的・向こう見ずで思慮に欠け、暴力などの攻撃的行動に走ります他者の感情に冷淡で共感を示さず、信頼、正直さに欠けます

 

自己の逸脱行動に責任を置こうとせず、罪悪感に乏しくその行動に後悔しない、自己中心的で自分の利益を追求し、法令や社会規範を軽視するといった特徴を示します。

 

対人関係では、他者の感情や利益に関心を持とうとせず、他者に対して脅してでも支配しようとする操作性や冷酷さ、敵意、そして不正直で無責任な振る舞いを見せます。

反社会性パーソナリティ障害の診断基準[DSM-5]の抜粋

 

反社会性パーソナリティ障害の診断を下すには,患者に以下が認められる必要がある:

    他者の権利に対する持続的な軽視

 

この軽視は、以下のうちの3つ以上が認められることによって示される:

  •   逮捕の対象となる行為を反復的に行うことにより示される法律の軽視
  •     反復的な嘘、偽名の使用、または個人的利益もしくは快楽のために他者を言いくるめることにより示される欺瞞的態度
  •     衝動的に行動したり,事前に計画を立てなかったりする
  •     絶えず身体的喧嘩を始めたり、他者を攻撃したりすることにより示される易怒性または攻撃性
  •     自分または他者の安全性の向こう見ずな軽視
  •     別の仕事のあてもなく仕事を辞めたり、請求書の支払いをしなかったりすることにより示される一貫した無責任な行動
  •     他者を傷つけたり虐待したりすることに対する無関心またはそのような行為の合理化により示される後悔の念の欠如

 

(3)演技性パーソナリティ障害

他やの注目や関心を集める派手な外見やおおげさな演技的行動が中心的特徴です。継続的に注目の的になることを求め、注目されていない場合にしばしば抑うつを生じます。感情表現は芝居がかっており、情熱的でなれなれしく、新しい知人を魅了することもあります。

 演技性パーソナリティ障害の診断基準[DSM-5]の抜粋

 

演技性パーソナリティ障害の診断を下すには、患者に以下が認められる必要がある:

    過度の情動性および注意を惹きたいという欲求の持続的なパターン

 

このパターンは、以下のうちの5つ以上が認められることによって示される:

  •     注目の的になっていないと不快感を覚える
  •     他者との交流が不適切なほど性的に誘惑的または挑発的である
  •     感情の急激な変化および浅薄な表現
  •     自分に注意を惹くため常に身体的外見を利用する
  •     極めて主観的かつ漠然とした会話
  •     はったり、芝居がかったふるまい、および感情の大げさな表現
  •     被暗示性(他者または状況に容易に影響を受ける)
  •     人間関係を実際より親密なものとして解釈する

 

(4)ギャンブル障害

仕事や家庭を崩壊に至らしめるほど、ギャンブル(賭博)にのめり込む病態である、いわゆる「ギャンブル依存症」は、DSM5では「ギャンブル障害」と呼ばれています。失ったお金を取り戻したいという切迫した欲求があり、高額な掛け金やリスクの高い賭博に熱中することが持続的かつ反復する状態を指します。賭博をしたいという強い衝動を自分で抑えることが困難で、常に賭博のことが離れなくなります。

 

ギャンブル障害の患者は、賭博へののめり込みを隠すために、嘘をつくことが多いのも特徴で、DSM-5の診断基準において、主要症状として「嘘をつくこと」が盛り込まれています。

 

(5)作為症

病気ではないのに、心身の症状を捏造・模倣し、嘘をつくことを中核的症状するミュンヒハウゼン症候群虚偽性障害)という疾患があります。この病気のことをDSM-5では作為症と定義しています。

 

患者は、幼少期に精神的および身体的虐待、あるいは自身や家族が重度の疾患を経験するなどの背景を持っていることが多く、医師や看護師、家族をはじめとして、周囲の人々から大切にされたい、同情されたいという欲求を持っています。

 

(6)素行症/素行障害

小児期・思春期に反社会的、攻撃的、反抗的な言動を何度も繰り返す病態は、行為障害と呼ばれてきましたが、DSM-5では「素行症/素行障害」と定義されています。素行症/素行障害では、他人や動物への攻撃性、器物破損、学校や家庭のルール違反などと並び、嘘をつくことや窃盗が特徴的な症状です。嘘をつくことや窃盗が、DSM-5の診断基準の中で主要症状として明記されています。

 

素行症/素行障害は、ADHD(注意欠如・多動症)の二次障害であることが多く、また、成人後には反社会性パーソナリティ障害に移行しやすいとされています。

 

(7)統合失調症

統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気で、気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。統合失調症には、幻覚・幻聴・妄想のように健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、意欲の低下など健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。

 

妄想や幻覚が現実と区別がつきにくい場合、そのような妄想や幻覚を言語表現すると、結果的に周囲の人々から「嘘」とみなされ、排斥されることがあります。

 

(8)双極性障害

いわゆる「躁うつ病」は、DSM-5では「双極性障害」として定義されています。双極性障害の躁病エピソードでは、話したい気持ちが次から次へと生じ、声も大きく、早口で多弁となり、周囲が口を挟むのも困難となります。考えが次々浮かび、話す内容も次々に変化し、関連性が乏しい話題に移っていくこともあり、観念奔逸を呼ばれます。時に、内的な緊張感と連動した活動性の亢進、例えば、足踏みを頻回にする、手をよじるなど、精神運動性焦燥といった状態を呈することもあります。

 

躁病エピソードでは、過度の自尊心あるいは誇大的思考がしばしば観察されます。自己評価が高まり、自己の能力を過信したり、「自分は神と関係がある」といった誇大妄想を呈することもあります。患者は、観念奔逸や誇大妄想によって、周囲の人々から噓つきだとみなされることがありますが、本人には嘘をついている自覚はありません。

 

(9)アスペルガー症候群

アスペルガー症候群、いわゆるアスペの患者は、感情や場面の読み取りが苦手、曖昧な表現の理解が困難、人間関係を築くのが苦手といった特性があります。このため、事実をなかったことにしてしまう、あるいは、事実を大げさにして話してしまう、話の前後で食い違いや矛盾が発生してしまうことがあり、周囲の人々からは「嘘をついている」とみなされてしまいます。

 

また、本音と建て前の使い分けが苦手、言葉の読み取り・理解が困難といった特性から、表情や態度がぎこちなくなり、周囲の人々には嘘をついているように感じられます。さらに、失敗の体験を重ね、生きづらさを抱えている患者は、その場を乗り切るために、無意識にその場しのぎの嘘をついてしまうこともあります。

 

(10)解離性障害

解離とは、意識や記憶などに関する感覚をまとめる能力が一時的に失われた状態です。例えば、特定の場面や時間の記憶が抜け落ちたり(健忘)、過酷な記憶や感情が突然目の前の現実のようによみがえって体験したり(フラッシュバック)、自分の身体から抜け出して離れた場所から自分の身体を見ている感じに陥ったり(体外離脱体験)します。こうした症状が深刻で、日常の生活に支障をきたすような状態が解離性障害です。

 

解離性障害の患者では、解離が起きている間の記憶がないので、その間にした約束事などを覚えていることができず、嘘つきとみなされることがあります。また、被災体験や事故などによる心的外傷を負った患者が、断片的に記憶されていることの辻褄を合わせようとすることによって、客観的には理解しがたい説明をすることがあります。そのような場合に、結果として周囲の人々から「嘘をついている」とみなされることもあります。

 

(11)認知症

認知症患者では、認識と現実に差が出ることがあり、他人から見れば事実から反するために嘘とみなされる事柄を、当人は事実として疑わないことがあります。例えば、認知症の典型的な臨床症状の一つに、いわゆる「もの盗られ妄想」があります。貴重品の保管場所を忘れてしまい,窃盗被害にあったと訴える症状ですが、結果として周囲の人々から「嘘をついている」とみなされます。

 

(12)健忘症候群

頭部外傷や脳の病気、アルコール中毒心理的要因などが原因で、新しい情報を学習したり、過去の出来事を思い出すことができず、日常生活に来すものの、記憶以外の認知機能は維持されている病態は健忘症候群と呼ばれることがあります。

 

健忘症候群に典型的な症状の1つが「作話」です。作話は、思い出すことができない過去の記憶を、その他の記憶や周囲の情報で埋め合わせようとし、文脈を取り違え、誤ったことを話してしまう病態です。患者には騙すつもりは全く無く、自身の発話内容の誤りに気づいていないことが多いのが特徴です。

 

おわりに

今回は、某中核市長の精神構造を理解するための基礎情報としての位置づけ、虚言・嘘を呈することが症状の1つであるような各種疾患を取り上げました。

 

中核市長に限らず皆さんの周囲の人の中には、日頃の言動・行動パターンが、今回取り上げた疾患の特性(症状等)と合致しているように感じられる人が少なからずいることでしょう。けれども、臨床診断には、専門的知識を要する医師による専門的な診察を要するものです。素人判断で「誰某は〇〇病だ、精神異常者だ」、といった安易なレッテル貼りをすると重大な人権侵害となるので、絶対になさらないよう、くれぐれもご留意くださいね。

 

繰り返しますが、本記事は、客観的な参考情報として、虚言を呈する各種疾患を紹介することを目的としたものであり、某中核市長がここで取り上げたいずれかの疾患に該当などと軽々しく主張するものではないので、ご了知おきください。