泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

実のところ、市長はジェンダー平等には興味がないのでは?(中編)市政における女性登用

前回の前編記事では、泉房穂明石市長のツイート内容から、市長のジェンダー平等への関心の度合いについて見てみました。

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

今回の中編では、明石市政における女性登用の状況について検証します。

 

女性副市長抜擢という政治的パフォーマンス

近年、各地の自治体において、副知事や副市長に女性を登用する例が増えています。女性登用を知事選や市長選の公約に掲げる首長も少なからず存在し、一種のブームにもなっています。明石市でも、機を見るに敏な泉市長がこのブームに乗っかっておられるようです。

 

泉市長は2022年3月19日のツイートで、女性副市長の登用を予告し、実際、9月28日付けで、「兵庫県で初となる」女性副市長さんが誕生しています。また、12月議会に提出された「あかしジェンダー平等の推進に関する条例案」には、副市長、教育委員、監査委員ら特別職が男女同数になるよう努めることが盛り込まれています。

 

副知事や副市長への女性抜擢は論壇エリートからのウケが良く、わかりやすい政策として県民・市民からも評価されやすく、得票につながり得ます。このブームは日本の自治体だけでなく、世界中で見られる現象で、米国でも大統領選の選挙目当てで女性副大統領が登用されました。女性の視点の重要性は言うまでもないことですが、このような動きは冷静に判断する必要があります。

 

何故なら、女性登用は一見ジェンダー平等の理念に沿った徳行のように感じられますが、「女性ありき」の主張には「女であれば誰でもいい」という女性軽視・女性蔑視の思想が深層に横たわっているからです。

 

もちろん、明石市の女性副市長さんを含め、各地の女性副知事や副市長には、優秀で有能な方が就任していることが多いと思いますが、本来は男・女の性別に関わらず人物本位で評価し登用するのがジェンダー平等理念のはずです。人気取り・ウケ狙いの女性副市長の登用は、ジェンダー平等の理念とはほど遠い空虚な行状です。

 

大阪府四條畷市では、2017年1月に弱冠28歳で就任した市長が、民間の転職サイトを使って女性副市長を公募したことが以前話題となりました。その二番煎じで同様の「ソーシャルインパクト採用」を試みた自治体として、静岡県掛川市広島県安芸高田市などの例がありますが、後者はどこぞの市と同じように市長と議会が対立し混沌としているようです。

 

ちなみに、元祖の四條畷市では、女性副市長は4年任期で退職し、後任には、市のプロパー男性職員が就任しました。女性副市長公募が、若手市長の政治的パフォーマンスに過ぎなかったことは明々白々です。

 

審議会等委員への女性登用状況

話が脇に逸れましたが、次いで明石市における審議会等委員や管理職への女性登用の状況を県内の他市や、他の中核市と比較することにより、明石市は女性登用に熱心に取り組んできたと言えるかどうか検討してみましょう。

 

兵庫県内の他市との比較は、令和4年2月に兵庫県が発行した「令和3年度版ひょうごの男女共同参画」に依り、令和3年4月時点の数値です。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk17/documents/2021hyogonodannjyokyoudousannkaku.pdf

 

また、中核市の比較は、中核市市長会発行の「令和3年度都市要覧」に依り、令和2年度の数値です。
https://www.chuukakushi.gr.jp/_files/00132602/toshiR03.pdf

 

(参考)中核市市長会の数値の出典は、以下のとおりです。

・審議会等の女性参画率は、内閣府男女共同参画局地方公共団体における男女共同参画の形成又は女性に関する施策の推進状況(令和2年度)」において「地方自治法(第202条の3)に基づく審議会等における登用状況」として報告する数値

・管理職に占める女性比率は、内閣府男女共同参画局地方公共団体における男女共同参画の形成又は女性に関する施策の推進状況(令和2年度)」において「市町村職員の管理職の在職状況」として報告する数値

 

審議会というのは、行政機関が様々な政策を実施するにあたり、専門家や関係者・当事者をはじめ多様な立場の人たちの議論を踏まえ政策の方向性を決定していく重要な公共の場です。市の政策に女性の視点を反映させていくという観点からは、審議会委員に女性の参画を増やしていくことは極めて重要です。

 

 

明石市の審議会等委員への女性登用の状況については、兵庫県内29市中16位の28.4%に留まり、単純平均の30.8%を下回っています。中核市比較では、62市中40位であり、全国レベルでみても決して芳しい実績でありません。

 

審議会等委員への女性登用については、トップが号令をかければ、ごく短期間で数値を挙げることが可能です。従って、明石市の現状は、これまで市長が女性登用の推進に必ずしも積極的でなかったことを意味します。

 

もっとも、審議会委員の女性登用について、行政の現実を踏まえると、単に率を上げればいいという短絡的発想は慎重たるべきです。というのも現在、あらゆる自治体のあらゆる政策分野において、「優秀な女性有識者」の取り合い狂想曲が繰り広げられています。現状絶対的に女性有識者の層が薄い状況下で、優秀なごく少数の女性有識者のもとには、様々な行政機関から審議会委員への就任依頼が次々と舞い込み、一人の女性有識者が否応なく多数の行政機関の幾多の審議会の委員を引き受けていることがあります。当該女性有識者は、本来業務を犠牲にして、さらには家庭生活・ワークライフバランスを犠牲にして、審議会対応を余儀なくされている実態があるのです。審議会等委員への女性登用という社会圧の中で、優秀な女性有識者は、本業の業務パフォーマンスの低下に直面しているという現実を直視することも重要です。

他方で、とにかく頭数として「女」を確保せよという指令が下り、女だったら誰でもいいと言わんばかりに当該政策分野について経験や知識・関心の皆無の女性が委員に充てられることが増えています。結果として、会議に出席しても一言も発言せず等身大の「お人形さん」のごとく、ただただ会議の席に座っているだけの女性委員の存在も各地・各分野の審議会・検討会での日常光景です。

 

市庁管理職への女性登用状況

次に、管理職(本庁課長相当職以上)に占める女性の割合を見てみましょう。兵庫県内29市中12位の20.8%で、単純平均の19.1%を上回るものの、芦屋市の35.2%、赤穂市の31.3%などの数値と比べると、かなり見劣りします。一方、中核市比較では62市中9位であり、全国的には女性管理職割合はそこそこのレベルですが、決してトップランナーではありません。

 


管理職への女性登用については、1年、2年といった短期間で推進できるものではありません。30代から40過ぎの年齢層の、将来の幹部候補と目される優秀な女性職員を、主要部署に配置して経験を積ませるなど、幹部養成(人材育成)には相応の時間を要し、10年ぐらいのスパンで戦略的に取り組むことが求められます。逆に言えば、現時点での各自治体の女性管理職割合は、過去10年間に、どの程度ジェンダー平等を意識して戦略的人材育成を行ってきたかを実証する数値であり、この間の首長の「成績表」と見なすことが可能です。

 

泉市長はこれまで11年間、市長の座にありましたが、まさにこの期間における中期的人事戦略の成果が、現時点での女性管理職割合となって現れているのです。現時点の女性管理職割合が県内29市中12位に留まっている事実は、泉市長殿がトップランナーだの、「ガラスの天井」をなくす、「吹き抜け」にするだのといった威勢のいい言葉を発していることとは裏腹に、ジェンダー平等の取り組みを重視していなかったことを如実に物語っているのではないでしょうか。

 

 

 

akashi-shimin.hatenablog.jp