泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

明石市の子ども政策は、財政面で国と県に3分の2以上依存しています

泉房穂明石市長は、2022年12月4日に、「明石市は『こども予算』を言葉どおり倍増した。市長就任前の126億円から258億円へと132億円の増額を実現した。トップが決断して実行すればいいだけのことで、・・・」云々と勝ち誇ったかのようにツイートしています。



グラフを見ると、2010年に126億円だったこども部門の予算が、2021年には258億円に達しているようです。

 

 

泉市長は、9月29日にも次のようにツイートしています。



また、7月25日には「有雅」氏による「明石市子育て支援はケツ拭いてくれる県や国っていう上の機関がある市町村だから考えずにできるだけで、下の面倒を見ないといけない国には向かない気がするんだよな。」というツィートに対し、泉市長は「お言葉ですが、県や国にケツを拭いてもらったことなど、ありません。」と堂々と反論しています。

 

 

さて、ここで問題です。2021年に258億円計上されているところの明石市の子ども予算でありまするが、その財源として、①明石市民が負担した市の税金、②明石市民が将来負担する借金、③国から明石市に配分されたお金、④兵庫県から明石市に配分されたお金は、それぞれ幾らを占めるでしょうか。

 

上述した泉市長の得意げなツイートを読むと、「国や県はほとんど負担していない(③や④はごくわずか)ではないか。大半は①、すなわち市民が支払った税金なのではないか。だけど無駄な公共事業をカットして予算を確保したと市長は述べているので、市民の負担は増えていないに違いない」、このように受け止める方が少なくないのではないでしょうか。

 

今回、市民の会では、「令和3年度明石市一般会計予算」を紐解いて、泉市長が言うところのこども予算258億円が、どのように捻出されているかを検証してみました。

 

結論を先に述べると、

  • 泉市長が言うところの「子ども予算」は、歳出予算の「民生費」款のうち「児童福祉費」項に該当し
  • その財源構成は、市税73億円(258億円全体に占める割合は28%)、地方債6.6億円(同3%)、地方交付税交付金33億円(13%)、国支出金107億円(41%)、県支出金33億円(13%)、その他5.7億円(2%)

となります。

 

 

財源構成の各項目について、簡単に触れておきます。

市税というのは、市民税や固定資産税など、市民や市内企業が市に納めた税金です。
地方債は、いわゆる市の借金で、将来の市民がそのツケを払い返済する必要があります。
地方交付税交付金については後述します。

国支出金は、市が実施する特定の事業に対して国が予算配分するものです。負担金と補助金の違いなど詳細な説明は省略しますが、例えば、市が里親委託に要する費用の2分の1、保育所建設による費用の2分の1ないし3分の2、延長保育に要する費用の3分の1を負担することになっています。

県支出金は、市が取り組む特定の事業に対して県が予算配分するものです。国が定めた事業に対し国と一緒に県が市に対し支出するものと、国は関与せず県が独自に企画した事業について市に補助するものがあります。

その他としては、利用料や手数料、寄付金などが該当します。

地方交付税交付金については、様々な項目が包含され本来は込み入った説明が必要です(後日説明します)が、単純に言えば、国支出金と同様に、国から自治体に配分されるお金です。ただし、国支出金は、特定の事業を対象としたもので用途が厳格に決まっている(特定財源と言われます)のに対し、地方交付税は、自治体の規模や地域特性、財政力などを勘案して配分されるもので、原則として用途は限定されず、受け取る自治体が自由に活用することができるものです(一般財源と言われます)。

いずれにしても、国支出金と地方交付税交付金の合計額が、国から市に財政転移(配分)されたお金ということになります。

 

以上の説明を踏まえ、先ほどの設問、2021年に258億円計上された明石市の子ども予算の財源について回答すると、

  • 明石市民が負担した市の税金:73億円(258億円全体に占める割合は28%)
  • 明石市民が将来負担すべき借金:6.6億円(同3%)
  • 国から明石市に配分されたお金:140億円(同54%)
  • 兵庫県から明石市に配分されたお金:33億円(同13%)

です。

 



 

泉市長殿は「国や県は子どもに冷たい」というのが持論で、明石市子育て支援策について「県や国にケツを拭いてもらったことなど、ありません」などと豪語しており、その主張を鵜呑みにしているフォロワー(信奉者)が少なからず存在しているようです。

 

けれども実際には、明石市では国や県に大きく財政依存して子育て施策が行われており(国と県は、明石市の子育て対策に相応の財政負担をしており、両者合計で67%を占める)、市の自主財源はせいぜい28%に過ぎず、将来世代の市民にもツケを回して(借金して)予算をやりくりしているのが真実なのです。

 

 

(参考)算出根拠

 

「令和3年度明石市一般会計予算」49,51,53,63,65,126~133ページ

https://www.city.akashi.lg.jp/zaimu/zaisei_ka/shise/zaise/aramashi/yosannaiyo/documents/r03_01ippann.pdf

 

126~133ページの記載から、児童福祉費(合計25,794,350千円)の財源内訳は、

国及び県の支出金:13,961,196千円(約140億円)

地方債:       661,20千円(約6.6億円)

その他の特定財源:  576,159千円(約5.8億円)

一般財源:        10,595,795千円(約106億円)

 

国及び県の支出金140億円の内訳について、49,51,53,63,65ページの記載から、国支出金は107億円、県支出金は33億円と算定した。

 

明石市の令和3年度一般会計(歳入)総額1,195,1278億1,278万円のうち、市税は417億5,660万円、地方交付税交付金は188億3000万円である。したがって、一般財源のうち、市税と地方交付税交付金が占める比率は69:31と見なし、児童福祉費の一般財源106億円の内訳は市税73億円、地方交付税交付金は33億円と算定した。

 

※市税や地方交付税交付金に該当する税目には、普通税と目的税とがあって、厳密には、都市計画税のような児童福祉費には充当できない目的税の税目は控除して計算すべきところです。計算がやや面倒なので、単純に市税と地方交付税交付金が占める全体の比率で計算しましたが、大きなズレはないと考えます。