泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

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「ホワイトカラー・サイコパス」「ダーク・エンパス」という最も危険でヤバい性格 某中核市長の精神構造を理解するために(下)

前回のブログ記事では、某中核市長の精神構造を理解するための基礎情報として、マキャベリアニズム、自己愛傾向、サイコパシーという「ダークな」3特性を包括した心理特性であるDark Triadという概念について取り上げました。今回はその延長線で、「ホワイトカラー・サイコパス」と「ダーク・エンパス」という2つの心理学概念について紹介します。

 

最初にお断りしておきますが、サイコパスという単語は、通俗的用法と学術タームとでは大きく乖離があるところ、本稿では、もっぱら学術タームとして価値中立的にサイコパスの語を用います。というのも、通俗的には、サイコパスの用語は負のスティグマを帯び差別的意図で用いられることがあるようですが、本稿は通俗的用法には一切くみいたしませんので、ご了知おきください。

 

 

ホワイトカラー・サイコパスとは

サイコパスは、精神医学や心理学の研究領域において、国や地域、時代、研究者によって様々な定義のもとにこの用語が用いられ、概念の混乱が見られてきました。世俗的には、米国のサスペンス映画『羊たちの沈黙』(1991年)によって広く知られるようになりましたが、残虐あるいは猟奇的な異常犯罪者の代名詞のごとくサイコパスの用語が用いられることがあります。

 

現在では学問的には、サイコパスの特性は「情動と対人関係」と「社会的逸脱」の2つの軸で描かれています。「情動と対人関係」の側面では、口達者で表面的な魅力、誇大な自己評価、病的な虚言、人を操る、良心の呵責や罪悪感の欠如、冷淡などの問題特性があります。後者の「社会的異常性」は、衝動的、行動のコントロールが苦手、刺激を求める、無責任、目標の欠如などが特性です。

 

典型的なサイコパスは、自らの感情を様々な状況に見合うように処理することが苦手で、ストレス耐性が低く、衝動的、感情的に問題解決を図ろうとします。衝動性や攻撃性が強く、粗暴で犯罪や反社会的行動など不適応行動に及びます。

 

他方で、認知機能や言語性知能に優れ、また自分の衝動や攻撃性をその時の状況に合わせて抑える能力や狡猾さを有し、「社会的逸脱」が目立たず、「感情と対人関係」の問題特性だけが時に表面化するサイコパスの存在も知られています。

 

一見すると冷静であったり、権威者に従順のように見受けられますが、一方で達成感や社会における優越的な地位や名声を求め、自らの目標を達成するため、他者の排除もいとわない冷徹さや冷淡さを兼ね備えた人物です。

 

このような人物は、凶悪犯罪者として逮捕されることはないものの、犯罪すれすれの危険な人格特性を隠し持ち、善人や良識人を偽装することに優れています表面的には人当たりが良く、極めて誠実な人間として印象付けられることすらありますが、その内面の本質は全く異なり、良心の呵責という感情を欠如し、言葉巧みに他者を操り利用するのです。

 

そして周囲に気づかれないよう、だましや搾取行為を続けて社会的成功を収める人たちも少なくありません。このような特性を持つサイコパスは、「ホワイトカラー・サイコパス」「成功するサイコパス」「未犯罪サイコパスなどと呼ばれています。大衆をだまし人心を操作することに長けている場合は、政治家として成功する場合もあるようです。アドルフ・ヒトラーしかり、ドナルド・トランプしかり。そして、日本標準子午線上の某中核市長しかり(時々ボロが出て、社会的逸脱行動もあらわになってしまうようですが)。

 

ちなみに、PCL-Rというサイコパス測定法の開発者として有名なロバート・ヘア氏は、大企業や大きな組織の中に存在するホワイトカラー・サイコパス「スーツを着た蛇」(Snakes in suits)と呼称し、同名の著書を2006年に刊行しています。(邦訳本のタイトルは『社内の「知的確信犯」を探し出せ』です)

 

ダーク・エンパスとは

ダーク・エンパスとは、2021年に提唱されたばかりの新しい心理学用語です。日本では、ダーク・エンパスの知名度は低いですが、英米ではこのところ、最も危険でヤバい人格の1つとしてダーク・エンパスが、社会的に大きく注目されています。

 

そもそもエンパスとは「エンパシー(共感力)を有する人」を意味する名詞ですが、「闇の」「暗黒の」「邪(よこしま)な」「邪悪な」といったネガティブな意味合いの形容詞とエンパスというポジティブな用語が連なるこの概念は、前回の記事で取り上げた、Dark Triadという概念との対比でとらえることができます。

 

Dark Triadは、マキャベリアニズム、自己愛傾向、サイコパシーという、いずれも誠実さや謙虚さ、協調性が低く、利己的で冷淡、かつ他者を自分の思い通りに操ろうとする傾向にあるという点で共通する3つのダークな性格特性を包括した概念です。そして、Dark Triadを構成する3特性はいずれも、「共感力の欠如」という共通特性があることが指摘されてきました。

 

ところが、利己的で冷淡、かつ他者を自分の思い通りに操ったり、虚言の傾向性を有するなど「ダークさ」を持ち合わあせつつも、共感力は欠如しておらず、むしろ、共感力は高いとみなしうるような人たちの存在が指摘されるに至ったのです。

 

2020年にノッティンガムトレント大学のNadja Heym氏たちは、Dark Triad特性と共感度の高さの2つの指標で、人々を次の4つのカテゴリーに分類できると報告しました。
(1)Dark Triad特性が高く、共感力が低い
(2)Dark Triad特性が低く、並みの共感力
(3)Dark Triad特性が高く、共感力が高い
(4)Dark Triad特性が低い、共感力も高い

 

(1)は典型的なDark Triadの人たちで、(2)はごく普通の人たちです。(4)の人たちは、「エンパス」と呼ばれることがあります。この研究では、(2)の特性を持つ人が少なからず存在することが確認され「ダーク・エンパス」と命名されました。

 

そしてダーク・エンパスには、次のような性格特性があると報告されました。

・一般人と比べ協調性が低く、攻撃性が高く、他人を利用・搾取する傾向がある

・攻撃性については、典型的なDark Triadの人たちほどの高さではないが、悪意あるユーモアや罪悪感を感じさせる言動で間接的に相手を傷つける

・典型的なDark Triadの人たちよりも「誇大性」が高い

外向的・社交的で幸福感(well-being)が高い反面、自己不信感を持つ

 

 

 

ダーク・エンパスは、典型的なDark Triadの人たちと同様、本性は冷淡で冷酷、不誠実であるにも関わらず、社会的スキルとして計略的に他人の心情を読み取るに能力に長けていることから、周囲の人には「共感力」があるように感じさせ、善人のように立ち居振る舞い、相手を自分の世界に引きずり込むようなキャラクターなのです。

 

ところで、エンパシー(共感力)には、認知的共感力と感情的共感力の2種類があるとされています。認知的共感力は、他人の視点にたって考えたり、他人の心情を理解する能力のことです。それに対し、感情的共感力とは、他人の心境や立たされている状況に寄り添って、同じ気持ちになったりできる能力です。感情的共感力の高い人たちは「エンパス」と呼ばれることがありますが、他人の苦痛を自分の苦痛と同じくらい強く感じてしまい、うつなどの症状を来すこともあります。

 

それに対し、ダーク・エンパスの人たちの持つ共感力は、相手が何を求め何を感じているかを理解する認知的共感力であり、彼らが思いやりのある感情的共感力をもっている訳ではありません。真の共感力ではなく、武器としての「偽の共感力」を持っているに過ぎないのです。うわべは善人ヅラしつつも、内面はDark Triadと同じくダークそのものなので、ダーク・エンパスのことを「無毒の蛇と同じ模様を持つ毒蛇」と表現する専門家もいます。

 

ダーク・エンパスの人たちは、相手の感情や苦しみを察知することができるので、一見、共感しているかのように装い、社交的・好意的に振る舞って相手の信頼を勝ち取ったうえで、その能力を自己利益のための武器として利用し、巧妙に相手を操り搾取するのです。

 

「私は、世の政治屋どもと違って、庶民の気持ちがわかるので、庶民に寄り添います。」「私は障害者の気持ちを理解し、代弁します」「私はLGBTの人たちの生きづらさに同情します」などと口にして、庶民、障害者、LGBTなどのカテゴリーの政治利用が特技で、衝動性が高く虚言行動の常習者である某中核市長は、ダーク・エンパスの典型例と言えるかも知れません。

 

おわりに

今回は、ホワイトカラー・サイコパスとダーク・エンパスという2つの心理学概念について紹介しました。見かけは、共感力が高く善人・良識人に思えるけれども、内面は真っ黒な「ダーク・エンパス」と、ホワイトカラーとして成功しているけれども内面はサイコパスそのものである「ホワイトカラー・サイコパス」とでは、それぞれ概念を提唱した学者は異なりますが、具体的な人物像はかなりオーバーラップしているように思えます。

 

ともあれ、衝動性・攻撃性が極めて高くすぐにぶち切れ、虚言行動の常習者であり、不誠実でダークな精神構造をもち、サイコパスそのものの某中核市長に対し、どうして多くの人たちはそのペテンに気付かず騙され続けるのでしょうか。

 

サイコパス研究者ロバート・ヘア氏の次の発言が参考になるので、最後に引用しておきます。以下の引用で「彼ら」「サイコパス」と書かれてある部分を、「ダーク・エンパス」と「ホワイトカラー・サイコパス」に置き換えて読んでみてください。

https://www.tabisland.ne.jp/acfe/fraud/fraud_031.htm

 

彼らは、普通の人が求めるのと同様のものを欲しがりますが、それに加えて、権力や地位、富などに異常なほどの執着心をもっています。

その「欲望」の度合い、欲しいものは何でも手に入るという特権意識、そして手に入れるためには手段を選ばないという姿勢が我々と異なるのです。

また、自分の欲求や目標を他人と共有しないという点でも大きく異なります。

つまり、サイコパスは、他人のためという感覚や、友人の幸福、社会の繁栄、社会のルールや期待などへの配慮、相互依存といった、通常の人間の行動を導く価値観は全く持ち合わせていません

彼らは、独善的に行動し、罪の意識や後悔の念を抱くことなく、他人にどのような犠牲を強いようと常にナンバー1を目指すのです。

 

サイコパスの感情は、多くの人に比べて狭小で皮相的なものです。

浅いとか不毛なという表現が用いられることが多く、自分自身の欲求や経験に関連した、どちらかといえば未発達な「原始的感情(proto-emotion)」であるといえます。

彼らの怒りや敵意、嫉妬の感情の表し方や欲求不満への反応ぶりは、共感、愛情、恥、悲しみなどの表現よりもはるかに強烈です。

時として、サイコパスは冷淡で無常な人間に見えますが、彼らの感情表現は劇的ですが、浅く、長続きしません

彼らは、感情表現をもっともらしく模倣することはできますが、観察力が鋭い人が見れば、表面的でわざとらしく映るでしょう。

このことから、興味深い疑問が生じます。

サイコパスの感情的な生活が不毛なものなのであれば、彼らはどうやって他人の感情を「読み取り」それに反応することに長けているのでしょうか。

それに対する答えは恐らく、他人が示す感情の状態を、言葉や身振り手振りの明確なパターンに置き換えて認識しているのではないかというものです。

サイコパスは、この情報をもとに、実際には理解できない感情の状態を直感的に推し量ることができるといえます。

 

サイコパスは、メンバーの1人と知り合いになり、「仲間」として紹介してもらうという手口で集団に入り込み、巧みに詐欺行為を働きます。その結果は、鶏小屋にキツネを放つがごとく明らかです。

人は本来善人であると信じ、信仰心の表明を無批判に受け入れてしまう人々は、サイコパスにとって御あつらえ向きのターゲットとなります。

不幸にも、そのようなグループの人々の多くは、騙された後でさえ真実と向き合うことを拒み、自分を騙した相手も基本的には善人であり、自分たちを利用したのには何か理由があるに違いないと思い続けるのです。

これは類縁詐欺(affinity fraud)と呼ばれるもので、類縁集団メンバーは、価値観や信仰、興味関心を共有すると宣言している相手に強い信頼を置くという事実に依存したスキームです。

金融やビジネスに関するグループに属する教養のある人々でさえ、豊富な人脈を持っていると思われるサイコパスの魅力と誘惑には簡単に騙されてしまいます。

新規メンバーを疑って掛かるのは役立つかもしれませんが、危害を加えようという意図をもつ侵入者を完全に排除できる保証はありません。

諜報機関や犯罪組織など極端に疑り深い集団ですら、自分の資格や人脈、意図を偽る者たちから完全に身を守ることはできません。

 

 

 

【参考文献等】

 

金子周平

非犯罪者のサイコパス類型におけるパーソナリティ特性および精神病理の検討

人間学研究論集7号 2018年

 

The Psychologist

On the trail of the elusive successful psychopath

https://thepsychologist.bps.org.uk/volume-27/edition-7/trail-elusive-successful-psychopath

 

Dan P. McAdams

The Mind of Donald Trump

The Atlantic (June 2016)

https://www.theatlantic.com/magazine/archive/2016/06/the-mind-of-donald-trump/480771/

 

Dick Carozza

精神病質の不正実行者を見分ける

ヘア博士、バビアク博士とのインタビュー 「スーツを着た蛇」を知る男たち

https://www.tabisland.ne.jp/acfe/fraud/fraud_031.htm

 

Nadja Heyma et al.

The Dark Empath: Characterising dark traits in the presence of empathy

Personality and Individual Differences

https://doi.org/10.1016/j.paid.2020.110172

https://scottbarrykaufman.com/wp-content/uploads/2020/08/Heym-et-al.-2020.pdf

 

Nadja Heym, Alexander Sumich, Nottingham Trent University

‘Dark empaths’: how dangerous are psychopaths and narcissists with empathy?

https://theconversation.com/dark-empaths-how-dangerous-are-psychopaths-and-narcissists-with-empathy-178715

 

Grant Hilary Brenner MD, DFAPA

Introducing the Dark Empath

New research identifies people high in both empathy and darkness.

https://www.psychologytoday.com/intl/blog/experimentations/202008/introducing-the-dark-empath-0

 

Perpetua Neo

What Are Dark Empaths?

https://www.perpetuaneo.com/what-are-dark-empaths/

 

 

 

 

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