泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

市議会議員の構成から泉房穂市長離去後の明石市政を展望する

【本記事は、当初4月29日に執筆したものです。5月2日に発表された新たな会派構成を踏まえ、5月3日に若干の追記を末尾に加筆しました】

 

5月1日には、新たな明石市長として丸谷さとこ氏が就任します。同時に、明石市議会の議員も改選により、新たなメンバーが着任します。

 

泉房穂市長の全面的な支持を受けた丸谷さとこ氏が市長に選出され、また、泉市長が立ち上げた地域政党明石市民の会」の市議候補5名が、大量得票で当選したことから、いわゆる泉派の市民の間では、泉路線が維持・強化されることへの期待が高まっているようです。

 

一方で、泉市長に対して反発してきた市民のうち、とりわけ保守系の人たちの間では、泉・丸谷路線の左翼政治・反成長イデオロギーが持続することへの警戒心がみられます。

 

ともあれ、明石市政の今後の方向性については、泉市長の影響力が比較的強く残存し、泉路線の政治が継続していくことを予測する意見が主流を占めるように感じられます。では、実際のところ、明石市政はどうなっていくのでしょうか。今回は、明石市議会の新旧メンバーを比較分析することにより、今後の明石市政の展望を試みます。

 

政治イデオロギーと泉市長との距離とで市議を区分

市議会は、様々な価値観や政治信条、政策選考を有する議員により構成されています。政治の在り方や政策の方向性を巡っては、実に多様な論点が存在し、単一の座標軸で政党や議員を区別するのは極めて困難なことであるのは言うまでもありません。

 

また、人間社会一般と同様に、政治の世界も「論理」「理」(正しいかどうか、べき論など)だけでコトが決まるのでは無く、好き嫌いなどの「感情」「情」がものをいう世界です。派閥や会派は、政策の中身だけでグループ化されたものでなはなく、好き嫌いなどの人間関係に依って仲間化したものです。

 

このようなことから、市議会議員を簡便に区分してマップ化するのは至難のわざではありますが、今回は、(1)政治信条が総じて右派か左派か、(2)泉房穂市長と対立的か親和的か、という2つのパラメーターによって、明石市議を区分してみることにします。



2つめの切り口である「泉房穂市長と対立的か親和的か」というのは比較的わかりやすい論点ですよね。泉市政下で与党的振る舞いをしたかどうか、ということであり、市長提案の予算案や条例案にことごとく賛成し、選挙でも協力関係を維持している政党や議員は親和的だということになります。逆に、市長提案の議案に反対票を投じる頻度が高かったり、市長の問責決議に賛同する議員は対立的だと言えます。

 

それに対し、1つめの座標軸である「政治信条が総じて右派か左派か」での区分は、ちょっと厄介なのが正直なところです。個別の政党や政治家について、どのような基準で右と左とに分類するかは、統一的な尺度は存在せず、ひとそれぞれ考え方が違うからです。

 

日本では一般的に、防衛力の強化、環境保護より経済成長を優先、インフラ整備を重視、子ども政策や女性活躍、LGBTの問題に消極的な伝統的保守政党は典型的な「右派」であり、軍縮を主張し、経済成長よりも環境保護を優先、インフラ整備(公共事業)に反対、子ども政策や女性活躍、LGBTの問題に熱心に対応する政党は「左派」と分類されます。

 

一方で、防衛力の強化を主張し、環境保護より経済成長を優先するという点では「タカ派」であるけれども、インフラ整備を追求せず(行政改革財政再建の観点からむしろ抑制的)、子ども政策や女性活躍などに理解と関心を示す政党は、「左派」的政策を包摂していると見なすことができ、典型的・伝統的な「右派」とはやや毛色が異なります。(日本維新の会がこれに該当しますが、ここでは深入りしません)

 

このように、右派と左派を区分する切り口は多数存在しますが、右派と左派のイデオロギーを代表するキーワードワードを下図にいくつかピックアップします。各党や議員の掲げる公約や主張において、下図の片方のワードが多数登場し、他方のワードには関心を示さずむしろ反発する場合は「右派」「左派」の偏りが強く、両方のワードがほぼ同等に散りばめられている政党・政治家は「中立的」と判断することにします。

ちなみに、この図における左派と右派の区分は、地方行政よりも国政において典型的に該当するものだということにご留意ください。というのも、「国防、安全保障」VS「平和、軍縮」は国政レベルでの論点であり、市政や県政など地方自治体で取り組むべきテーマではなく、本来は市政や県政の公約になじむものではありません。他方で、「市民、住民参画」「福祉」「環境保全」は国政レベルでは左派政党が得意とする政策領域ですが、地方行政における本来的な政策課題であり、自治体レベルでは右派の政党や議員であっても、これらの問題に熱心に取り組むことが少なくありません。

 

改選前2022年12月時点の明石市議の分類

前置きが長くなりましたが、以上の考え方に基づき、(1)政治信条が総じて右派か左派か、2)泉房穂市長と対立的か親和的か、という2つの切り口によって改選前2022年12月時点の明石市議を区分し、(1)を横軸に、(2)を縦軸にして4象限分布図にマッピングを試みました。その結果を下図に示します。

 

この図については、異論をお持ちの読者の方がいらっしゃるかも知れませんので、考え方を少し補足しておきます。

 

まず、右上に自民党、左下に共産党が位置することについては、異論が生じる余地はないと考えます。次に公明党については、歴史的には平和・環境・福祉を標榜してきた政党ですが、明石市政においては工場緑地面積率の規制緩和を主張してきたことなど、中立よりもやや右派に位置づけました。泉市長と対立してきたことは自明ですね。

 

出雲晶三、大西洋紀の両氏による未来明石大路は、保守少数会派で、泉市長とは厳しく対峙してきました。

 

かがやきネットは、国政では旧社会党立憲民主党と親和的な左派の地域政党ですが、泉市長との関係は中立的ながら、竹内きよ子議員が、市長の言動を批判してきたことから、横軸の軸線の真上にマッピングしました。

 

宮坂祐太議員は、国民民主党系の一人会派を構成し、泉市長の言動を冷ややかに見つめながらも、泉市長との対立を回避し、泉市長の信頼を得てきたことから、横軸線の直下にマッピングしました。

 

日本維新の会から「破門」された北川貴則、森かつこ両氏は、勝手連的に泉市長に同調していましたが、泉市長からは無関係宣告され撃沈してしましました。両氏のマッピングは難しいですが、泉市長の応援団を自認していたことから、横軸線の下方に配置しました。

 

聴覚障害の当事者である家根谷敦子議員は、泉市長から同志と見なされ、選挙などで支援を受けてきました。障害者としての当事者性と泉市長との距離の近さから、「左派」と見なされがちですが、市議会において自民/公明と共産とで賛否が分かれる議案については、自民/公明に同調することが多く、必ずしも左派ではありません。

 

そして最後に、新市長に就任する丸谷さとこ議員ですが、以前は、かがやきネットのグループとも活動を共にしており、政治信条的には「左派」であることに疑いの余地はありません。今回、泉市長の「公認」により市長選に出馬し当選しましたが、元々は必ずしも「泉派」だった訳ではありません。かといって泉市長と敵対することもなく一貫して中立的で、決して泉市長とはベッタリではありませんでした。数ヶ月前(2022年12月)の時点における泉市長との関係は、宮坂祐太議員と同レベルの距離感だったことから、宮坂議員と同様に、横軸線の直下にマッピングしました。

 

改選後2023年5月時点の明石市議の分類

次に、4月23日の市議会選挙で当選した、改選後の新しい明石市議についても、同様に4象限分布図にマッピングを試みました。その結果を下図に示します。

 

この図について、若干説明します。

 

自民、かがやきネット、共産の各会派は議席数が減少しましたが、マッピングの位置は変更ありません。公明党議席数も現状維持で、マッピングの位置も変更ありません。宮坂祐太議員と家根谷敦子議員も再選し、マッピングの位置は改選前と同じです。

 

今回、4名が当選した日本維新の会が、明石市政でどのようなスタンスを取るのか未知数ですが、日本維新の会の一般的な政治イデオロギーを考慮し、また市長選では丸谷新市長の対立候補を支援するなど、泉前市長との親和性は高くないと予想されることから、上図のようにマッピングしました。

 

自民党から独立した一人会派「リーベの会」の寺井𠮷広議員、出雲晶三前議員の後継者である新人・出雲ゆき子議員、今回返り咲いた中西レオ議員については、これまでの言動を踏まえマッピングしています。

 

明石市民の会については、いわずもがななので、説明を省略します。

 

改選前後の市議会の勢力関係の比較で見えてくること

明石市議の改選前後の勢力関係を比較することで、見えてくることについて最後に何点か述べておきます。

 

泉房穂市長に親和・同調する議員を親泉派、泉市長に反発・対立する議員を反泉派と定義した場合、改選前の2022年12月時点では、親泉派と反泉派は5:19でした。
(親泉派は、共産、家根谷、北川・森の5名、反泉派は自民、公明、未来明石大路の19名)

 

改選後には、親泉派と反泉派の比は、7:19に変化したことになります。
(親泉派は、明石市民の会、共産、家根谷の7名、反泉派は自民、公明、維新、寺井、出雲の19名)

 

市議会議員選挙での得票数、得票率を見る限りは、明石市民の会の新人たちが大量に票を得ましたが、議席数を見ると、親泉派が必ずしも躍進した訳ではありません。頭目である泉房穂市長が権力基盤を喪失した以上、明石市民の会の新人たちと共産党の辻本達也議員が一枚岩になったとしても、明石市政において泉房穂的価値を温存することは極めて困難だと言えるでしょう。

 

さて、保守系市民の間では、丸谷さとこ新市長の政治信条にかんがみれば、明石市工場立地法地域準則条例の改正に再チャレンジするのではないか、外国人投票権の付与を指向するのではないか、という警戒感が高まっているようです。しかしながら、改選後の市議会の新しい勢力図をよく見ると、このような懸念は杞憂に過ぎないことは一目瞭然です。

 

というのも、環境保護より経済成長を優先する日本維新の会が、工場緑地面積の規制強化に賛同する可能性は極めて低いですし、また、外国人投票権の付与に賛成することもあり得ないからです。

 

結局のところ、エコロジストである左派の丸谷さとこ市長が誕生し、泉房穂チルドレンたる明石市民の会の新人5名が議席を有したところで、自民や維新が毛嫌いする政策を打つ余地は皆無なのです。

 

自民や維新が毛嫌いする政策を追求することなく、丸谷市長が、公明や維新と協力関係を構築できれば、(そのためには泉房穂色の払拭が不可欠ですが)、安定的な市政運営につながる知れません。

 

とまれ、丸谷新市長が、自民、公明、維新の3党とどのような関係を構築していくのか、静かにウォッチングすることにしましょう。

 

【以下は、5月3日の追記】

以上の文章は、4月29日時点で予測した内容でしたが、その後、5月2日には市議会の新たな会派構成が発表されました。

 

選挙時点から、変更になった点は、以下のとおりです。
・「自由民主党明石」に出雲委員が合流し、同会派は8名となった。

・「明石かがやきネット」に寺井議員と宮坂議員が合流し、同会派は4名となった。

・「明石市民の会」が解散し、新名称「市民の会」という会派となった。

 

4月29日時点で予想した勢力図に修正点を書き加えてみました。

 

そして、修正後の新勢力図は次のとおりです。

 

選挙前後の期間、丸谷新市長は、泉房穂前市長の傀儡(操り人形)である明石市民の会の新人たちと共同歩調をとってきたようですが、新市長が独自色を発揮しようとすれば、そのうち彼らの存在を疎ましく感じるようになる可能性が高いと思われます。

 

かがやきネットは、党議拘束で構成員を縛るようなガチガチの政党ではなく、案件に応じて各自の判断で票を投じる緩やかなグループではありますが、もともと、同会派の竹内きよ子議員は丸谷さとこ新市長と思想信条的に近く親和的で、このグループが新市長にとって頼るべき与党的存在となる知れません。

 

いずれにしても、今後の明石市政の展開を静かにウォッチングすることにしましょう。