泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

明石市は全国有数の工業都市であるという客観的事実を否定する泉房穂市長

2022年10月1日の泉市長のツイートを引用します。「地方自治体の場合、出来るところと出来ないところがある。明石市には大きな工場がある。」というnaruchu氏のツイートに対し、次のように反論しています。

お言葉ですが、大きな工場があるから、明石市がトクをしているわけでは全くありません。大きな工場が出ていった後に、住宅などができ、明石は元気になっていっているのです(税収上も)。工場の煙に経済成長を感じる時代ではありません。工場より住宅を増やす方が、明石にはメリットが大きい時代です。

 

 

次に2022年4月26日と、6月12日の市長のツイートを引用します。

 

泉市長のお好みのワードである「好循環」というタームを用いて、「今の明石市の『まちの好循環』は『市民サービスの向上』によるもので、"企業"は特に関係ありません」だの、「今の明石の好循環に、企業は直接関係していない」だのとの放言を繰り返しておられます。

 

泉房穂市長のツイート発言によると、明石市には工場は不要で、明石の地域経済の活性化に、企業は直接関係していないそうです。だけど、このような主張は全くのデマであり、病的な虚言だと断言できます

 

そもそも「明石市の『まちの好循環』は『市民サービスの向上』によるもの」という泉市長の主張は客観的データに反するもので、根拠が皆無の市長の思い込みのタワゴトに過ぎません。泉市長の持論は、ご自身の在任期間中に明石市の個人地方税収が持続的に増大し、これは人口増によって実現したものとうそぶいておられますが、これが全くのデタラメな妄言であることは、これまでにも本ブログで指摘してきました。

 

今回は、明石市が全国で有数の工業都市であり、工業生産による税収によって、泉房穂市長による放漫経営が維持されている実態について解説します。

 

 

自治体間の製造品出荷額の比較

経済産業省の「工業統計調査」では毎年、各自治体における工業事業所の事業所数、従事者数、製造品出荷額、付加価値額等を集計して公表しています。この調査に基づく明石市の製造品出荷額、付加価値額の状況について、他の自治体と比較してみましょう。

 

まずは兵庫県内の人口10万人を超える10市における製造品出荷額と付加価値額について見てみましょう。直近のデータは2019年度の数字です。人口も2019年の数値を示します。

 

明石市の製造品出荷額は1.39兆円で、3.42兆円の神戸市、2.33兆円の姫路市、1.46兆円の尼崎市についで、4位の成績です。付加価値額についても、明石市は神戸市、尼崎市姫路市に次いで4位の成績です。

 

だけど、この手の値は、自治体の規模が大きければ好成績になるのは当然なので、人口や面積が小さい自治体と比べ、明石市が好成績なのは当然ですよね。なので、自治体の規模で調整すると言う観点から、各自治体の人口1人あたりの製造品出荷額を比べてみましょう。

 

明石市は、人口1人あたりの製造品出荷額は4.6百万円となり、三田市の5.3百万円に次いで2位の成績です。人口当たりの製造品出荷額でみると、全国的に主要な工業都市である姫路(4.3百万円)や尼崎(3.2百万円)を上回る水準であることが判ります。一人当たりの付加価値を計算しても同傾向であり、姫路や尼崎以上に明石市は工業で稼いでいる都市であることが見て取れます。参考までに、西宮市は、人口の割に製造品出荷額が極めて低く、非工業都市であることがわかります。

 

次に、人口が明石市と同規模の人口30万人前後の市における製造品出荷額を比較してみましょう。人口が27万人以上35万人未満の市をリストアップし、製造品出荷額等を並べてみました。製造品出荷額は2019年、人口は2022年の数値を示します。全国の人口が同規模の自治体の中で、明石市はダントツの工業都市であることが一目瞭然ですね。

 

事業所税額を通じて工業集積の度合いをみる

さらにもう一つ、明石市が全国でも有数の工業都市であることの証拠として、ちょっとマニアックですが、「市町村税収入額に占める事業所税収入額の割合」を見てみたいと思います。

 

その前に、事業所税とは何たるかについて振り返っておきましょう。事業所税は、都市に人口、事業者が集中することによって都市環境の整備に要する財政需要が増加することを考慮し、都市環境の整備に充てる財源を確保するため、1975年に創設された事業を課税対象とする市税のことです。

 

事業所税を課すことができる自治体は地方税法において、東京・大阪の大都市圏内の市区と、全国の人口30万以上の市と規定されています。現時点では、東京の特別区のほか、20の指定都市、それ以外の56の市が該当します。明石市では、人口が30万人を超過した2018年7月から政令改正を経て課税が開始されました。

 

事業所税は、事業所床面積や従業者数が一定規模以上の事業主(法人又は個人)に課せられ、「資産割」と「従業者割」とで構成されています。資産割は、事業所床面積が1000平方メートルを超える事業主が課税対象となり、1平方メートル当たり600円が税率となっています。従事者割は、従業者数が100人を超える事業主が課税対象となり、従業者給与総額の0.25%が税率となっています。

 

従って、事業所の床面積が広ければ広いほど、そして、従業者の人数と給与額に比例して、事業所税の納税額は高額となります。事業所税を課税できる自治体にとってみれば、自治体内に、広大な敷地をかかえる大企業や工業団地が存在し、従業員人数が多く、付加価値額が高く従事員の給与が高い企業があれば、それだけ事業所税で潤うことになるのです。

 

人口など自治体の規模に応じて自治体の産業規模は異なることから、事業所税の額を単純に自治体ごとに比較するのは不毛なことです。その点、「市町村税収入額に占める事業所税収入額の割合」を比較することによって、各自治体における稼ぎの良好な大企業の集積状況を推察することが可能になります。

 

てなことで、2019年度における77の事業所税課税自治体(特別区は1でカウント)の「市町村税収入額に占める事業所税収入額の割合」を算出し、上位20自治体とリストアップしました。

 ※出典は、土屋幸輝「事業所税の使途状況について」(地方税2021年9月号)

 

明石市は16位にランクインしていることが判ります。もちろん、豊田市倉敷市をはじめ上には上が存在しますが、明石市が、全国でも有数の工業都市であることは紛れもない普遍的事実なのです。多くの明石市民が工場に勤務して給与所得により生計をたて、工場に勤務する従業員が市内で生活することにより商業が栄え、街の活性化につながるという構図は、昔も今も何ら変わりありません。(厳密に言えば、明石市は昼夜間人口比率が0.9程度と低く、明石市内の事業所に勤務する市外の居住者よりも、神戸市など市外の事業所に勤務する明石市民のほうが上回っています)

 

市内の工業事業者が、高い付加価値をあげ、従業員に給与の上昇に結びつくとともに、事業者も良き市民の一員として各種地方税を納税することで、明石市は比較的恵まれた税収が維持されてきたのです。そして、泉市長のなりふり構わない虚偽・誇大広告により転入者が増大、結果として人口が30万を超過し、事業所税の課税が可能となりました。

 

事業所税の課税により、年間16億円ほどの財政的余裕が明石市に発生しましたが、この貴重な財源を泉房穂市長は私物化し、もっぱらご自身の人気取りのために政策的効果に乏しいバラマキ施策で散財してきました。

厳密に言えば、事業所税目的税であり、使途が限定されますが、事業所税がなかりせば、他の税源をあてるべき事業に事業所税を充当することが可能となり、結果として、浮いたお金で市長の趣味で散財できるようになったのです。

 

冒頭で述べたとおり、泉市長は、明石市には工場は不要で、明石の地域経済の活性化に、企業は直接関係していないかのごとく主張していますが、真相は真逆です。明石市内の工場が高い収益を得ているからこそ地域経済は活性化し、そのおかげで泉市長は無責任なバラマキなどによる放漫経営を続けることが出来たということなのです。

 

 

(参考)明石に所在する大企業の工場の例