泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

明石市は財政的に貧しいと騙る 泉房穂市長の悪質な印象操作


2023年3月21日のツイートにおいて、泉房穂明石市長は、「明石市は他の自治体より貧乏な街だ。」という衝撃的な発言をしておられます。

 

このツイートは、『子育て世代を「争奪」』『自治体、財政力で支援に差』という見出しが掲げられた統一地方選に関連する新聞の特集記事に対する泉市長のコメントですが、「『自治体、財政力で支援に差』は明らかに誤報だ。明石市は他の自治体より貧乏な街だ。違いは“財政力”ではない。市長の“やる気”だ。」とつぶやいておられたのです。

 

自らが市長を務める自治体のことを「貧乏な街だ」と堂々と断定的な語彙で自虐的に表現する泉市長殿の感性には全くもって感服いたします。市民を愚弄する不適切表現だという認識がこれっぽちもないところ、さすが泉市長ですが、それにしても「他の自治体より貧乏」と言うところの比較対象は一体どこの自治体なのでしょうかね。

 

人口375万人の横浜市、人口152万人の神戸市と比較して予算規模が小さいことをもって明石市は貧乏だと主張しているのでしょうか。あるいは、ディズニーランドで稼ぐ浦安市や、トヨタ自動車の城下町である豊田市核燃料サイクル関連事業で潤う青森県六ヶ所村のような地方交付税不交付団体(後述)と比較して、財政力指数が低いことをもって明石市は貧乏だと泉市長はのたまっているのでしょうか。

(社会通念的には、これらの自治体と比べるのはおよそナンセンスであることは自明のことですが、泉市長なら都合が悪くなると「Yes、然り」と言って煙に巻こうとするかも知れませんね。)

 

さておき、泉市長の過去の発言や講演資料を検索すると、「明石市は財政は豊か』ではありませんし(中核市の中でも厳しい方)」という発言が確認できました。2023年1月21日に、「ビリじい」氏の「明石市は巨大企業の工場が立地しているから財政は豊か」だという真っ当な指摘に対し、泉市長殿は、秋田市久留米市盛岡市青森市の歳入(一般会計)予算の額を比較した図を添付して反論しておられました。

 

このツイートで引用している歳入予算の比較図は泉市長お得意の持ちネタの1つのようで、講演会での定番アイテムとなっていますが、直接の出典は、2022年5月11日の「日本記者クラブ会見(東京都千代田区)」での講演資料(21ページ)だと思われます。
https://www.city.akashi.lg.jp/seisaku/shichou_shitsu/shise/shicho/documents/20220511kisyakurabu.pdf

 

それにしても、ふだんは、全国1位だの関西1位だの、中核市で1位だの上から数えてベストであることを自慢ばかりしている虚栄心の塊・泉市長が、このときばかりは摩訶不思議なことに、ワーストであることを自慢しておらる点で非常に興味深い比較図です。

 

ともあれ、この歳入予算の比較図の原型は、認定NPO法人フローレンス代表室長(前職)である前田晃平氏のブログにおける2020年3月23日付け泉市長インタビュー記事において、お見受けできます。
https://comemo.nikkei.com/n/n352f30edd114

 

前田晃平氏のブログ記事では、久留米市、豊島区、青森市と一般会計歳入を比較した図が添付され、泉市長は「明石市は決してリッチなまちではありません。同じ人口規模の自治体と比べたらむしろ貧しいレベル…」と語っています。


自治体の真の財政力は、市税額で評価すべきもの

これらの比較図では、明石市と人口規模が近似する自治体の財政規模が比較されていますが、比較の対象として、人口規模が類似の自治体を選択していること自体は、泉市長としては珍しく賢明な判断だと思われます。そりゃあ当たり前ですよね。人口375万人の横浜市、人口152万人の神戸市と比較して明石市の予算規模が小さいのは当然ですし、人口3000人台の兵庫県播磨町稲美町と比較して明石市の予算規模が大きいと主張するのは馬鹿げてますから。

 

だけど、泉市長に騙されてはいけません。人口規模が近似する自治体と比較して明石市の財政が豊かでないことの論拠として、このような比較図を引っ張り出すのはナンセンスなことであり、不誠実で悪質極まりない印象操作なのです

 

自治体の財政力を比較するのに、なにゆえに一般会計の歳入総額を指標として持ち出すのか全く意味不明です。自治体の財政力を評価するのであれば、歳入総額ではなく、市税額を指標とすべきなのです。ここで、明石市と人口規模が近似する5自治体の2019年度の市税額を比較した図を提示します。

 

秋田市久留米市明石市盛岡市青森市の5市の市税額を比較すると、明石市が最も市税の額が大きいことは明らかですね。泉市長が善良な市民を騙すためにでっち上げた歳入総額の比較図から受ける印象とは全く異なりますよね。

 

市税額の比較図を見ると一目瞭然ですが、明石市が財政的に貧しいという泉市長の主張は全くのデタラメです。実際には、明石市は人口規模が類似の自治体の中では、市民や市内の企業が市に納税する市税の額は大きく、財政的に豊かなのです。

 

明石市の財政需要(市政運営に要するコスト)は低額で済む

とは言えども、ここまでの説明で、素朴な疑問を感じる読者の皆さんもいらっしゃるかも知れませんね。どうして、市税額で評価すると明石市の財政は恵まれているにも関わらず、歳入総額(予算総額)で見ると真逆で、明石市の財政は貧しいような印象を受けるのか。この差異は何に由来するのだろうか。このような疑問を感じる方がおられると思います。

 

これについて結論を先取りすると、明石市はコンパクトな市で人口密度が高く、また全国的に見て自然条件や社会的条件が極めて恵まれており、財政需要が比較的低いことから、地方交付税交付金の交付額が比較的低額となり、それ故に必然的に歳入総額は低い値となるのです。

 

この説明だと抽象的でわかりにくいと思いますので、具体的に解説していきます。

 

青森市盛岡市秋田市明石市久留米市の5市はいずれも人口が30万前後という点で共通しますが、自治体の面積は大きく異なります。青森、盛岡、秋田の3市は総面積が約800~900㎢と面積が広大であるのに対し、明石市は49㎢、久留米市は230㎢です。

 

人口が同規模であれば、市の面積に反比例して、人口密度は低くなりますよね。具体的に見ると、青森、盛岡、秋田の3市の人口密度は320~330人/㎢程度であるのに対し、明石市は6168人/㎢、久留米市は1314人/㎢という値です。

 

青森、盛岡、秋田の3市はいずれも県庁所在地であり、中心市街地はそれなりに人口が集積していますが、郊外に農地や山林が拡がっていて低人口密度地域が市の大半を占めています。それに対し、明石市には山林がなく農地面積もごくわずかで、市の面積の大半が市街地で人口集中地区となっています。各市の総面積と、市街化区域面積、あるいは人口集中地区面積を比べてみると、各市における人口集積具合のイメージがつかめると思います。

 

さて、人口密度の高い自治体と低い自治体とでは、インフラ整備や各種行政サービスのコストに雲泥の差が出ることは常識的に考えても明らかですよね。例えば、市道の総延長距離を見てみると、青森、盛岡、秋田の3市は約2000㎞であるのに対し、明石市はその3分の1程度の646㎞に留まっています。水道管や下水道管についても同様で、人口密度の高い明石市よりも、人口密度の低い自治体で敷設距離が長くなり、整備や維持管理のコストは高額となります。

 

また、人口密度が低い自治体ほど、ゴミ収集は非効率でコスト高となります。保健師によるアウトリーチ活動も同様で移動に時間と交通費を要し、コスト高となってしまいます。

 

おまけに、人口密度が低い自治体は、えてして高齢化が進行しており、高齢化率が高い傾向にあります。高齢化が進んだ地域では、介護保険や高齢者福祉サービスのニーズが高くなります。

さらに、明石市久留米市と比べ、青森、盛岡、秋田のような北国の寒冷地、豪雪地域においては、冬場は公共施設などの暖房代がかさみ、除雪にも多額の出費を要します。

 

このようなことを総合的に勘案すると、明石市の財政需要(市政運営に要するコスト)は、人口規模が類似の自治体と比べ著しく低額で済むであろうことが、容易に理解できるのではないでしょうか。

 

基準財政需要額を比較する

ここまで述べてきたことを裏付ける指標として、「基準財政需要額」という概念があります。これは、国(総務省)が、全国同一の尺度で各自治体の財政需要をシュミレーションした金額です。詳細の説明は省略しますが、基準財政需要額は、各自治体の人口と面積をベースとして、高齢化率や生活保護率、寒冷地・豪雪地域における暖房代や除雪費用などを勘案して、各自治体において、国庫補助事業を除き、この程度の歳入があれば標準的な行政水準を維持することが可能であると国が見積もった数値なのです。

 

基準財政需要額は、あくまでもバーチャルな数字なのですが、参考までに5市の比較図をお示しします。明石市の財政需要(市政運営に要するコスト)が低額で事足りることが視認できるのではないでしょうか。

 

財政力が極めて豊かな自治体であれば、市民から徴収した市税などの収入額が、基準財政需要額を上回ることがあります。けれども大半の自治体では、市税などの収入額が、基準財政需要額を下回っています。後者の場合、市税などの収入額では基準財政需要額に達しない不足額が、地方交付税交付金として、国から自治体に配分されるのです。

 

ちなみに、前者の、市税などの収入額が、基準財政需要額を上回るような財政力が極めて高い自治体では、地方交付税交付金は交付されません。このような自治体はごく少数に留まりますが、「不交付団体」と呼ばれ、浦安市豊田市青森県六ヶ所村などが典型例です。

 

厳密に言えば地方交付税交付金のうち普通交付税は、基準財政需要額と、基準財政収入額という、これまたバーチャルな数字との差額で交付額が決定されます。基準財政収入額は、国(総務省)が全国同一の尺度で見積もった各自治体の地方税(市税)の額の75%の水準に地方譲渡税等の額を加算した数値です。ちなみに、基準財政収入額と基準財政需要額の比率は財政力指標と呼ばれます。財政力指標を比較すると、青森市0.55、盛岡市0.74、秋田市0.67、久留米市0.66であるのに対し、明石市は0.76であり、相対的にみて、明石市の財政力が他の4市よりも良好であることが確認できます。

 

明石市は、青森、盛岡、秋田、久留米の4市と比較して、市税額は高く、基準財政需要額は低額であることから、おのずと、明石市地方交付税交付金の交付額は4市よりも低額となるのです。結果として、明石市の歳入総額は、人口規模が類似する4市と比較して、低い値となるのです。

 

おわりに

結論になりますが、青森、盛岡、秋田、久留米の4市と比較して、明石市の歳入総額が低いことは、明石市の財政力が低いことを意味するものではありません。泉市長の主張は、悪質なデマに過ぎません。人口規模が類似する自治体と比較して、明石市の市税額が高額であることは、明石市が財政的に豊かであることの証左であり、一方で、明石市の歳入総額が低額に留まっているのは、それ自体は財政力とは全く無関係で、明石市は自然的・社会的条件が極めて良好で財政効率性が高く、市政運営にコストがかからないことを裏付けるものなのです。

 

はっきり言えば、明石市は、泉房穂市長のようなインチキ人間が市長に就いてバラマキ型の市政運用を続けても、なんとかやっていけるだけの財政的基礎体力のある自治体だったのです。そして、見かけ上、明石市において比較的良好な市政運営がなされていたとしても、それは自然的、社会的諸条件に恵まれ、市民や市内在住の企業が、それなりに豊かでしっかりと市税を納めているからであり、決して市長の能力に依るものではありません。泉市長は、恵まれた諸条件にフリーライド(ただ乗り、無賃乗車)し、盗っ人さながら手柄の横取りで威張っているに過ぎません。

 

明石市は、もともと財政的基礎体力のある自治体だったのですが、泉房穂市長が12年間散財型の市政運営を続けてきたため、今や明石市は崖っぷちに直面しています。泉市長はそのことを自覚しているからこそ、このタイミングで責任放棄で市政を投げ出したのかも知れません。