泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

泉房穂市長自身が明かしていた、明石市のなりふり構わない人口増策動の手口

明石市では、2015年策定の「明石市まち・ひと・しごと創生総合戦略」において3大数値目標として「明石のトリプルスリー」が掲げされていましたが、そのうちの1つが「さらなる人口増を目指す(人口30万人)」というものでした。

 

泉房穂市長によれば、「人口増」は明石市の目標であって目的にはあらずのようですが、それはともかく、明石市では、人口30万人という目標の達成に向け、あの手この手の策が講じられてきました。

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今回は、泉市長自身の言葉や、明石市の担当職員の発言などをもとに、明石市における人口増の実現を図るために講じられてきたシティセールス策動について見ていきます。

 

明石市のシティセールス

自治体における広報担当者の間では、「シティセールス」や「シティプロモーション」という言葉が知られています。これは、民間企業の巧みなマーケティング技術を自治体の広報に応用し、自らの自治体を積極的に外部に発信することにより自治体のブランド力の増強や、転入者の増大を図るための広報戦略を意味する用語です。

 

都市間競争が激化する中で、自治体の生き残りをかけて積極的なシティセールスやシティプロモーションを手がけていることで有名な自治体がいくつか存在しますが、明石市もシティセールスの成功例として、業界では有名です。

 

2017年10月には東京の品川で、「全国シティプロモーションサミット2017」というイベントが開催されました。これは、形式上は品川区が主催で、実質的には株式会社宣伝会議というマーケティングが企画運営したもので、「シティセールス」や「シティプロモーション」に関心のある人たちを集めた催しでした。

 



我らが泉房穂市長も、このイベントに講師として登壇し、明石市におけるシティセールスの取組みを意気揚々と語っておられました。

転入者を増やすために、泉明石市政において、如何にしたたかな広報戦略を実践してきたかを、泉市長は、包み隠すことなくその手口を有頂天になって述べておられたのです。月刊「事業構想」2018年1月号に、この催しの記録が収録されていますので、泉市長の発言を引用します。

 

「比較広報」で転入を促進

 

・・・他の市の住民に明石市を売り込む「シティーセールス」を実施している。ポイントは、新聞・テレビなどメディアからの発信に加え、他の自治体と数字で比較すること、不動産業者やマンションディベロッパーなどと連携すること、明石市民をセールスの窓口として巻き込むこと、だ。

 

最も目立つのは、「比較広報」。近隣の他の市と比べ、明石市がいかに子育てに向いているのかをアピールしている。例えば、明石市内で子育てをすると、子育て支援がない他の自治体で子育てした場合と比較して、どれだけ家庭の負担が減るのかをシミュレーション。具体的な金額をはじき出し、そのお金で何ができるかまでを例示している。また、通勤時間と家賃相場のバランスや、公園の数、保育所受け入れ枠の拡大の状況なども、兵庫県内の他市と比較して資料として公開している。

 

市内の新築マンションや分譲地のディベロッパーは、市が作成した資料を活用して不動産広告を作成し、神戸市や姫路市などで配布する。明石市としては、予算をかけずに市を知ってもらう広報活動が可能になる。

 

また、明石市に既に居住している住民も、広報の戦力として位置付けている。例えば、昨年度は、明石市民が東京圏の友達や親せきを明石市に招待した場合には、1人2泊までの宿泊費は無料で、ホストには5000円分の商品券が支給されるキャンペーンを実施した。市民の口コミ力を使って、東京から関西に転勤が決まった人などの引っ越し先を明石市にしてもらうという作戦だ。

 

一番最後の、東京圏の人向けの「宿泊費無料お試しツアー」とホストである明石市民への「5000円分の商品券プレゼント」企画、懐かしいですね。同様に、「今、明石に住もう!キャンペーン」ってのも2015年に実施されてましたね。市外からの転入者には、一人当たり1.2万円分の商品券、紹介者には1万円分のQUOカードをプレゼントする事業でした。

この手の転入促進策を行っている自治体のことを泉市長は小馬鹿にしていますが、以前はご自身が積極的に「札束攻勢」による転入促進策を展開しておられたことをすっかり忘れておられるようですね。泉市長は、よほど健忘が進行しているのかも知れません。

 

比較広報などの明石市の怪しい広報戦略

さて、一般社団法人北海道総合研究調査会という調査機関が、2020年度の調査研究事業の一環として、明石市の事例調査を行っています。この事業の事業の報告書の中で、明石市の戦略的広報の内容について整理されています。前述の明石市長自身の講演での発言内容と重複しますが、引用します。

『「少子化対策地域評価ツール」を活用した対応策の検討にあたり参考となる取組事例に関する調査報告書』(2021年3月)

https://www.chisou.go.jp/sousei/about/chiikiapproach/pdf/r2-2-1-1syoushikatyousahoukokusyo.pdf

 

戦略的広報による「子育てするなら明石」の PR

 

①広報体制の整備

 明石市では、「こどもを核としたまちづくり」のねらいや施策を的確に市民や周辺地域住民と共有し、周知するための広報活動を重視している。

 このため、2015(平成 27)年に、市外向け広報を担当する「シティセールス課」を設け、市民向け広報を担当する「広報課」と両輪となって広報活動を推進している。2017(平成 29)年より、両課は政策部門を担当する政策局に置かれている。

 

②広報戦略の推進

 シティセールスの目標は、「将来にわたり住み続けてもらう」「将来の住まいとして明石市を選んでもらう」「明石市のブランド力を上げ、まちを訪れてもらう」の 3 つであり、市の課題を市民と共有するためのツールとして広報紙を活用し(月 2 回発行、2012(平成 24)年 5 月 1 日号からカラー版に刷新)、さらに、施策の内容や成果を特集的に伝える「シティセールスニュース」の発行、SNS の活用等、多様な広報ツールを活用しながら推進している。

 あわせて、民間企業への広報素材の提供、市民の口コミ効果の利用等を進め、市民や企業の力を借りながら、如何に明石市が子育てしやすいまちであるかを PR している。

 また、明石市と他都市を比較した場合、明石市がどれだけ子育てに適しているか等を数値で示し、明石市の優位性を訴える「比較広報」という手法も採用し、周知効果の強化も図っている。

 

③比較広報の採用

 比較広報とは、明石市と近隣都市を比較した場合、「明石市がどれだけ子育てに適しているか」等を数値で示し、優位性を訴えることで、住宅の取得や住む場所を探している近隣都市住民に明石市を選択してもらうことを狙った広報手段である。

 比較広報は、数字等で他地域との違いを見せることができるため、大変わかりやすく、民間では一般的に行われている手法であるが、行政での展開は珍しく、明石市ではこの手法を活用し、周知と理解に努めた。

 

④不動産業者、ディベロッパー等と連携した広報

 不動産業者やディベロッパー等に明石市が子育て施策や実績データ等の広報素材を提供し、市内のファミリー向け新築マンションや戸建てのチラシ等にそれらを活用してもらっている。

 明石市への転入を考える際には住居探しが必要となるため、転入世帯との接点の多い不動産業者やディベロッパーに明石市の PR をしてもらう効果は大きいと市は考えている。

 

⑤市民のセールスパーソン化

 明石市では、市民を明石市の「セールスパーソン」と位置付けている。これは、明石市の暮らしやすさや子育てのしやすさを体感している市民自らが直接、市外の住民に明石の良さを伝えてもらうことの効果が大きいと考えているためである。

 「セールスパーソン」である市民の口からわかりやすく伝えてもらえるよう、市の施策や実績をわかりやすく紹介した「明石市シティセールスニュース」の発行や、LINE での情報発信を行っている。

 

⑥数字を使った PR

 わかりやすく、印象に残る広報の観点から、「子育て支援に係る『5つの無料化』」、「明石市の目標トリプルスリー」、「8 年連続人口増加」など、具体的な数字を使った PR に重点を置き、広報としての訴求力を高めている。

 

虚栄心の塊である泉市長は、日本一だの、関西1位だの、中核市で1位だの、県内1位だの、とにかく1位だの上位だのと虚勢を張ってきましたが、中にはうさん臭いものもあり、いろいろと物議を醸してきました。

 

比較広告は、泉市長の常套手段ですが、他の自治体とのトラブルの元になってきました。例えば、三ノ宮から明石までは新快速で15分だけど、三ノ宮ー加古川は28分要する、などと主張し、周辺自治体をディスってきました。だけど、三ノ宮ー大久保は最短で30~32分、三ノ宮ー魚住は33~35分、三ノ宮ー土山は36~40分である事実に触れないと、優良誤認表示だと言わざるを得ません。

http://www.city.akashi.lg.jp/shise/koho/citysales/hikaku/index.html#tuukinjikan

 

「身近に公園がたくさん」というPRでは、「面積当たりの都市公園の数も、明石市は県内1にです。」なんて書いていますが、全くナンセンスで常軌を逸しています。市の面積1平方キロメートルあたりの公園の数が約8.7箇所で県内1位だと主張していますが、こんな馬鹿げた主張はあり得ません。なぜなら、自治体間の都市公園の状況を比較する場合は、人口当たりの都市公園の面積で評価するのが常識だからです。明石市は市の面積の割には公園の数は少なくないものの規模が小さい公園が多く、人口当たりの都市公園の面積の数値は、非常に劣悪なのが明石市の実態です。その事実を隠蔽して、あたかも公園環境が良好だと主張するのは悪質な詐欺行為というほかありません。

 

 

四日市市議会の視察報告

これまで述べてきたとおり、明石市の広報は非常にうさん臭いものですが、輝かしいシティセールスの成功例だと一部では誤認されており、明石市の広報戦略を学ぶため、全国の自治体から明石市役所や市議会には視察者が絶えません。他の自治体からの視察者に対しては、明石市の担当者は、シティセールスの実態を惜しむこと無く開陳し、そして、視察者によっては赤裸々な情報を公表している場合があります。

 

例えば、2020年1月には、四日市市議会の総務常任委員会が、シティセールスについて学ぶため明石市を視察していますが、明石市の担当者から聴取した情報や、四日市市議との意見交換のやりとりの詳細が、四日市市議会のホームページで公表されています。

 

四日市市議会 総務常任委員会行政視察報告

https://www.city.yokkaichi.lg.jp/www/contents/1001000002863/files/r01_soumu.pdf

 

 

この報告では、上述の一般社団法人北海道総合研究調査会による報告書よりも詳細に、明石市が人口増を実現するために講じた手口が記されています。興味のある方は、本文をご覧になることをお勧めしますが、ここでは「不動産会社との連携」について抜粋して紹介します。

 

不動産会社との連携

 

1)市内主要賃貸会社、パワービルダーに移住定住パンフレット活用の啓蒙と、ポスター掲示の依頼

・自社販促でのチラシ広告、Web内での明石市情報の転載、流用、リンク依頼。

・市内で分譲展開をする大阪市ディベロッパーに早期にアプローチをし、上記内容を依頼。

 

2)市内不動産業者には宅建協会を通じてシティセールス課作成のツール(シティセールスニュース等)を郵送、主要な業者へは直接訪問によるアプローチ、対面での説明、状況ヒアリングをするなどパイプを構築

※市内主要不動産会社約60社を定期的に訪問(市長主催、3~4社との懇談会を定期的に実施)

 

3)住宅展示場運営会社にもアプローチ。展示場内でのポスター掲示、ハイシーズンでのプロモーション展開を実施し、良好な関係を構築することで子育て世代の転入へのアプローチに協力してもらっている。

 

いい部屋ネット(大東建託)、suumo(リクルート)、ARUHI(アルヒ)など不動産業界の住みやすい街系ランキングにおいて、明石市が軒並み高位にラインキングしていることを、泉市長殿は日頃から自画自賛しておられますが、結局のところ、この手のランキングは明石市の真の実力が反映されたものではなく、明石市による不動産業界への露骨な売り込みが功を奏しただけの眉唾に過ぎないことが、伺い知れます。

 

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最後に、視察者である四日市市議の質問(Q)と明石市側の回答(A)の質疑の中で、興味深いやりとりをいくつか抜粋しておきます。

 

Q.明石市の人口は、2015年頃を境目に大きく伸びている。この時期に何を行ったのか。

A.他の自治体からの批判もある中、京都駅前等において、「今、明石に住もう!」キャンペーンを行っていた。また、この時期頃より「子どもを核としたまちづくり」を掲げ、保育料の第2子以降無料化など、子育て層をメインターゲットとした施策を展開している。

 

Q.移住のターゲットとしているエリアはどの範囲か。

A.例えば神戸市や大阪市等に職員を派遣してPRを行っている。市外でのPRについてはホームページを活用する自治体が主であるが、関心がなければ閲覧しないという課題がある。市長は、移住・定住に関するもっとも身近な窓口である不動産事業者と年に1度意見交換を行っており、不動産の紹介の際に明石市の施策や、明石市に住むことの利点を紹介してもらう、事業者のホームページに施策を掲載してもらうなど少しでも明石市に関心を持ってもらうための取り組みにつなげている。転入は、隣接する神戸市西区からがもっとも多く、次いで加古川市からが多い。

 

Q.不動産事業者と連携しているとのことだが、人の住める場所は多くあるのか。

A.現在、明石駅から西明石駅周辺はマンション等を除き、ほとんど埋まっているが、市の西側にはまだ余裕がある。同じ大都市圏のベッドタウンである大阪府箕面市兵庫県西宮市と比較しても住居に係る費用は明石市の方が1千万円ほど安く、大阪市へは2時間以内で到達でき、十分通勤圏内であることから明石市で住居を探す意味は大きいと考える。

 

Q.地価が5年連続で上昇しているとのことだが、これまでの施策の成果によるものか。住居に係る費用が高くなれば、移住に向けてはかえってマイナス要因にならないか。

A.不動産事業者においては、同じベッドタウンの中でも住居に係る費用が安いこと、市の施策が充実していることをPRして販売に当たっている。市長は、今以上に地価が上昇しても移住には影響はないと認識しているが、事業者側では上がりすぎではないかとの声も出ている状況である。このため、現状では開発が緩やかで人口の少ない西側に販売拠点を移していく方向で協議している。

 

Q.人口30万人以上の市になれば事業所税を徴収できるようになるとのことだが、現在、市内に拠点を構える事業所からの反発はないか。

A.明石市においても、人口の自然増減だけを見れば全国と同様に死亡数が出生数を上回っている状況であり、30万人に向けては伸び悩みも出ている。この状況を見れば、今後極端に人口が増えることは考えにくく事業所税の徴収に対する事業者の反応までは把握できていない。

 

 

Q.2012年・2013年頃にも大都市圏でのPRを行っていたとのことであるが、今ほど施策の充実はなかったと考える。当時は、どのような視点でPRを行っていたのか。

A.当時は住環境や、大阪市や神戸市への交通の利便性、天候が落ち着いていて子育てしやすい環境であることなど、施策よりも環境面に重点を置いてPRを行った。また、移住者に12,000円分のプレミアム付き商品券をプレゼントするキャンペーンも実施していた。

 

Q.現状ではそれほど積極的にPRをしなくても、明石市への移住はあるのではないか。

A.どのような場面であれ、市長がメディアに出る機会が多いことから、明石市」が検索される機会が増えたこともひとつの要因になっていると考える。

 

Q.(株)電通や(株)電通PRより平成28年に出向社員を受け入れているが、どのような効果があるのか。

A.出向社員については次長級や参事級の役職で受け入れている。例えばふるさと納税については、返礼品の開発に当社員のノウハウを活用することで寄附額も大幅に伸びている。また、市外の人に明石市への興味を喚起するためには、メディア等にどのように露出するかが大きな要素となると考えるが、同じイベントの開催であっても、どこにどのような仕掛けを行えばより効果的に取り上げてもらえるか、市職員にはない専門的な知見を持っていることから、同組織内で業務を行うことには非常に効果がある。なお、出向社員の受け入れに当たって、当社員の転籍は行っていない。

 

Q.転籍を行わないということは、事業者側にも金銭負担は発生しているのか。

A.委託契約のような形で、一定程度明石市が金銭負担している。

 

Q.出向社員は、十分活用できているのか。

A.以前はサンケイリビング新聞社からも1人出向社員を受け入れていたが、当社員は3代目のシティセールス課長に就任していた。PR部門やイベントの開催に強い事業者を活用することで、非常に成果があったと考える。

 

Q.明石市シティセールスニュースが非常に効果的であると考えるが、作成はどこが担っており、どのような場所で配布しているのか。

A.広報課が作成している『広報あかし』において、人口増や明石市の好循環について特集しているものを、シティセールス課職員が、不動産事業者が営業ツールとして活用できるよう体裁を整え、市外住民向けに再編集しているものである。印刷枚数は4000枚から5000枚程度であり、市内では、不動産事業者以外に市外からの集客のある施設で配布している。市外の住民が市内で出産するケースも多いため、産婦人科病院で配布を行う場合もあるなど、市外住民の目に留まりやすい場所での配布に心がけている。市外でも、不動産事業者や住宅展示場で配布したことがあるが、批判を受けることもある。

 

Q.神戸市西区からの転入が多いとのことだが、市外住民は、明石市の子育て施策が優れているということを、何をもって知ることが多いのか。

A.明石市が、自らの施策の良さを大きくPRしたとしても、それだけでは効果は薄い。実際に本市の子育て施策の優位性を体感した母親等の口コミをもって、神戸市西区や加古川市等、市外の住民に広まっていったものと考える。また、子育て世帯が住む場所等を決めるにあたっては、女性側の主導権が強いと感じている。したがって、口コミから移住定住につなげるためには、まず、女性の心に響く情報発信が重要であると考える。

 

Q.交流人口の拡大に向けて、基本的には一般社団法人明石観光協会が担い、市は運営補助金を交付しているとのことだが、具体的な金額を確認したい。

A.観光協会に対しては、年間計約8000万円の補助金を交付している。当協会には市職員を5人派遣しており、それ以外にもプロパー職員や臨時職員が在籍している。