泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

泉房穂市長が、司法修習同期の橋下徹氏から学んだこと・学ばなかったこと(上)

 

 

泉房穂市長は、2022年12月26日のツイートで、『兵庫県明石市・泉市長、橋下徹氏とは司法修習生の同期 今も連絡は「なくはないです」と親交明かす』と題されたスポニチの記事を引用して、こうつぶやいています。

 

人間関係があるのに、ないとは嘘はつけない。司法試験合格後の司法修習生時代(27年ほど前)に、同じラグビー同好会の仲間として、居酒屋で飲んだくれていたのは事実。電話があったのに、なかったとも嘘はつけない。でも、政治的な話ではない。単なる旧友です。

 

泉市長と橋下徹氏が、第49期司法修習生同期であることは公知のことで、これまでも泉市長は、橋下徹氏との関係を自慢げに語ってきました。泉市長は橋下氏のことを「旧友」だと述べていますが、橋下氏は同様の認識なのでしょうかね。以前から橋下氏に秋波を送ってきたようですが、悲しいかな泉市長の片思いに過ぎなかったのかも知れません。

 



さておき、元大阪府知事、元大阪市長橋下徹氏は、「ハシズム」とか「橋下劇場」といった用語とともに、その政治スタイルや行動様式が注目され国政にも大きな影響を及ぼしてきた大物政治家です。ジャーナリストや評論家、政治学者、社会学者などにとっても興味深い分析対象だったようで、橋下氏の政治手法や政治理念について論評した膨大な記事や論文が存在します。

 

今回から3回にわたって、橋下徹氏を取り上げた記事や論文を紹介しつつ、泉房穂市長が、司法修習同期の橋下氏から何を学び、何を学ばなかったのか検証してみます。

 

「あいつは明らかに世の中を憎んでいた。社会的な理不尽や不平等に対する強い怒り。既存の勢力に対する激しい憤り、憎しみ。ものすごく大きなエネルギーを感じた」

 

このような出だしで、2012年4月15日毎日新聞朝刊の「橋下氏、野心の源流 破れた革ジャン5万円--司法修習同期の証言」と題する松浦丈二記者による超長文の取材記事は始まります。

 

松浦記者は、記事の中で、取材の目的・意図を次のように語っています。

 

 橋下現象という大きな“渦”が新たな地殻変動を引き起こそうとしているようにも見える。大飯原発再稼働問題では、関西電力筆頭株主大阪市トップとして野田政権との対決構図を鮮明にし、存在感を増してきた。橋下市長のエネルギーの源流を探ろうと、司法修習生時代の同期を訪ねる取材を始めた。

 

 「ポピュリスト」「独裁者」とレッテルを貼って橋下氏を論じることはたやすい。だが、新聞記者に求められているのは、そんな批評、評論ばかりだけではないだろう。一方で、メディアの露出は格段に多いにもかかわらず、橋下氏の実像はなかなかイメージできない。人物像を浮き彫りにする具体的な証言がほしい--。

 

この記事は、橋下徹氏の人物像を浮き彫りにするための「証言」を求め、5人の司法修習生同期に取材したレポートのようですが、松浦記者が取材した5人の弁護士の中で、最も印象に残ったのが泉房穂市長だったようです。記事冒頭の「あいつは明らかに世の中を憎んでいた。」とする橋下評は、泉市長の発言です。

 

この記事が掲載された2012年4月といえば、泉房穂氏にとっては市長に着任して1年足らずの時期です。市長としてはまだまだフレッシュマンといったところでしょうか。そんな時期に、泉市長は、橋下徹氏のことをどう語っていたのか、松浦記者の記事の中で、泉房穂氏の発言部分を引用します。

 

毎日新聞 2022年10月25日

橋下氏、野心の源流 破れた革ジャン5万円--司法修習同期の証言

 

  「あいつは明らかに世の中を憎んでいた。社会的な理不尽や不平等に対する強い怒り。既存の勢力に対する激しい憤り、憎しみ。ものすごく大きなエネルギーを感じた」

 

 兵庫県明石市泉房穂市長(48)は、第49期司法修習生=1995年研修所入所=の同期、橋下徹大阪市長(42)の印象をそう語り始めた。

 

 修習生時代、橋下氏と同じラグビー同好会に所属。衆院議員(民主党)を経て昨年5月に市長に就任した。同じ自治体トップとして橋下氏をよく知る人物の一人だ。ラグビーの練習後に聞かされた話を今も覚えている。

 

 「橋下は破れた革ジャンをタダ同然で仕入れて1着3万円とか5万円で売って大学を卒業したと言っていた。『破れたやつを売ったらまずいやろ』と言うと『どこが悪いんですか。気付かずに買うのはお人よしや』と」。あっけらかんとした物言いには、同じように苦学して大学を卒業したこともあり驚いた。

 

 「橋下の大きなエネルギーは確かに危なっかしい。だが、閉塞(へいそく)感に覆われた今の時代には必要な存在かもしれない」。市長応接室の窓からは明石海峡大橋がよく見える。その向こうは大阪湾だ。その泉市長がこんな構想を話し出した。

 

 「まだ検討段階だが、橋下が公約する大阪都が実現したら、ここ明石市は飛び地として大阪都に参加したい。その場合、兵庫県からは抜けさせてもらう」

 

(中略)

 

同じく修習生時代の同期である、泉房穂兵庫県明石市長は「橋下は見破られなければ反則ではないというタイプ。日本的な文化では、そこまでやったら反則感は強いだろうとは思う。だが、橋下は普通とは違うやり方で、これまで生き抜いてきた」と理解を示す。

 

 それは政治手法にも通じるところがある。泉氏は「橋下はポーンと観測気球を上げて相手の反応をみてから折衷案を出してくる。難しいとみたら引っ込める。府庁舎の移転もそう。手法は確かに荒っぽいが、結果的に落としどころは外さない。たまに暴投するけど」と指摘する。

 

泉市長殿の10年前の発言ですが、「橋下が公約する大阪都が実現したら、ここ明石市は飛び地として大阪都に参加したい。その場合、兵庫県からは抜けさせてもらう」なんてことを語っていたのはちょっと驚きですが、この点については深入りしません。

 

泉房穂市長が、司法修習同期の橋下氏から何を学び、何を学ばなかったのか、という観点から3点、コメントします。

 

1点目ですが、毎日新聞の記事の中で、泉市長はこう語っています。

 「橋下は破れた革ジャンをタダ同然で仕入れて1着3万円とか5万円で売って大学を卒業したと言っていた。『破れたやつを売ったらまずいやろ』と言うと『どこが悪いんですか。気付かずに買うのはお人よしや』と」。

 

タダ同然で仕入れて暴利をむさぼり、購入者をコケにする橋下氏のことを、泉市長は批判めいた口調で語っていますが、泉市長が司法修習同期の橋下氏から学んだことの一つが、この「盗人商法」のようです。

 

明石市の財政は、国や県に大きく依存して何とかやりくりしているのが実態であるにも関わらず、市長自身の身銭を市民にお恵みしているかのように振る舞い、その事実に気づかない市民のことを内心で「お人よしや」と愚弄してほくそ笑んでいるところ、これはまさしく泉市長が橋下氏から学んだ革ジャン盗人商法に他なりません

 

2点目ですが、泉市長は橋下氏のことを、こうも語っています。

「橋下は見破られなければ反則ではないというタイプ。日本的な文化では、そこまでやったら反則感は強いだろうとは思う。だが、橋下は普通とは違うやり方で、これまで生き抜いてきた」

「たまに暴投するけど」

 

「たまに暴投する」荒っぽい手法の橋下氏を猿真似する泉市長は、「たまに」ではなく「いつも暴投」しているように感じられますが、「見破られなければ反則ではない」とする処世術も、泉市長が橋下氏から学んだことのようです。

 

それに対し、泉市長が、橋下氏から学ばなかったこともあるようです。3点目です。

「橋下はポーンと観測気球を上げて相手の反応をみてから折衷案を出してくる。難しいとみたら引っ込める。」

「手法は確かに荒っぽいが、結果的に落としどころは外さない。たまに暴投するけど。」

 

「観測気球を上げて相手の反応をみてから折衷案を出し」、「難しいとみたら引っ込め」、「結果的に落としどころは外さない」という橋下氏の高度な政治手腕を鋭く見抜いておられる泉市長殿でございますが、残念ながら泉市長は、このような高等調整能力を橋下氏から学ぶことができなかったようです。

 

理念や利害が異なる他の政治家・利害関係者との調整能力は、政治家にとって、最も重要な能力の一つで、当該能力に長けていることが橋下徹の大物政治家たる所以であり、惜しくも当該調整能力を著しく欠損していることが、泉市長の小物政治家に留まる所以ではないでしょうか。

 

次回は、近代日本文学や構造主義記号論でかつて名をはせた小森陽一教授が執筆した、橋下徹氏の政治手法を論評した論文を取り上げ、泉市長が橋下氏から学んだことを更に掘り下げていきます。どうぞお楽しみに(^-^)/