泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

泉房穂市長が、司法修習同期の橋下徹氏から学んだこと・学ばなかったこと(中)5つの騙しの手口

東京大学名誉教授で、現在、和光学園理事長の小森陽一氏は、2012年刊行の論文(というか手記)において、ある政治家が有権者を扇動し、騙す手口を以下のように5つに分類して解説しています。

 

第1の手口
悪役・悪玉・適役を意図的にねつ造して、攻撃を集中させる

 

第2の手口
抑えに抑えているうらみや怒りに働きかけ、晴らすかのような幻想を与える

 

3つ目の手口
政策的な因果論的思考を有権者から奪う

 

4つ目の手口
単一の争点に落とし込み二者択一を迫り、有権者に思考停止を強制する

 

第5の手口
紋切り型の連鎖へのはめこみ

 

ここで問題です。これら5つの手口を最大限利用し、有権者を扇動し騙してきた政治家というのは誰のことでしょうか? このブログの常連読者の方であれば、瞬時に、標準子午線上に位置する中核市の某市長のことに違いない、と感じられたかも知れません。

 

だけど、小森陽一教授が論文(手記)で取り上げたのは、現在も現役の某市長のことではありません。答えは、当時大阪市長を務めていた橋下徹氏の政治手法を5つの手口として紹介したものです。

 

【出典】
 小森 陽一 橋下「維新の会」の騙しの手口
 全労連 / 全国労働組合総連合 編 (186), 1-6, 2012-08
 https://www.zenroren.gr.jp/jp/koukoku/2012/data/201208-186_01.pdf

 

小森陽一教授が主張する「5つの手口」

小森論文の記載に沿って、5つの手口を順に説明します。

 

まず第1の手口として、「悪役・悪玉・適役」に仕立て上げられるのは公務員だと指摘されています。「身近な他者」である自治体職員や公立学校の教師に対する有権者の不信感や「ジェラシー」の感情が根強く存在し、有権者は政治にリーダーシップを期待する中で、これら地方公務員と敵対し、徹底的に攻撃するリーダーとして振る舞うことで、橋下氏は「ジェラシー」から解放してくれたヒーローとして支持者から喝采をあびていると述べられています。

 

第2の手口として、人々が社会に対して抱いている不満や懸念をすくいあげ、人々の感情を煽り立て、支持者たちの「感情を統治」します。現実の生活の中で様々な不安や恐れを感じている人々の前で、特定の他者を敵として設定し、その他者を橋下氏の言葉で激しく攻撃することで、不安や恐れを怒りに転換させながら、緊張から解放された錯覚を抱かせることで橋下的支配が成立しているとのことです。橋下氏を支持している「感情を支配された人々」にとっては、「論理的に矛盾しても、感情的な流れにおいては完璧につじつまが合っている」のだそうです。

 

適切な政策を実施するためには本来、人々の怒りや恐れ、悲しみについて責任の所在を明確にして、現状を変える方向性を論理的に解明することが不可欠です。しかし、橋下流煽動の3つめの手口は、政策的な因果論定思考を有識者から奪う方向に仕向けるところにあると小森教授は主張します。橋下氏は「実行力」とか「改革」といった表現を多用するものの、現実に即した政策性は乏しく、素朴な、誰でも考えつくような枠組みでしかないと酷評されています。

 

現実に即して、矛盾や問題を解決するための政策などを無視して、とにかく目立ちわかりやすい単一の争点にすべてを落とし込み二者択一を迫ることは、結果として有権者に思考停止を強制することになる。それが橋下氏の「維新の会」の4つめの手口だそうです。「思考停止の強制」を持続させるため、次々に物議NHKや民放の長い時間枠のニュースで論評がらみで取り上げられるか、ワイドショーのネタになるかどうか、夕刊紙やスポーツ新聞の見出しになるか等々)を醸し出し続けます。果たして、橋下「維新の会」はマスメディアにとって「おいしいネタ元」になり、「思考停止の強制」が日本社会全体を覆い尽くしてしまうことになると、小森教授は憂慮しています。

 

こうした状況を踏まえて、橋下「維新の会」は全国の有識者を第5の手口である「紋切り型(ステレオタイプ)の連鎖」にはめこもうとしていると、小森教授は警戒感をあらわにします。「紋切り型」は、ある集団を構成している人々の思考(判断、概念化、抽象化、創造、記憶、推理、予想等)、感情(情動、気分、情操、興味等)や行動(身体的行動、思考に基づく行動、認知行動等)に対して、支配者が一定の拘束を加え、そのことによって成員に社会的同調を強いる社会統制の手段だそうです。

 

論文では、小森教授特有の小難しい扇情的な表現も用いられていますが、なんとなく言わんとしていることは理解できると思います。ともあれ、小森教授が論じる「5つの手口」は橋下徹氏の大衆動員手法を分析したものですが、橋下徹氏と司法修習同期であられるところの、我らが泉房穂市長の行動様式にもこの「5つの手口」がぴったり当てはまるのではないでしょうか。

 

どうやら、泉市長殿は、司法修習同期である橋下徹氏から、政治手法として「5つの手口」を学び取ったようですね。以下において、過去のツイートをいくつか例にあげて、「5つの手口」について再確認します。

 

 

第1の手口
悪役・悪玉・適役を意図的にねつ造して、攻撃を集中させる

 

泉市長がねつ造する主な「悪役・悪玉・適役」は、「政治家」や「官僚」、それに最大の敵は、おこぼれに群がる取り巻きたる「マスコミ」のようです。

 

明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

@izumi_akashi

私利私欲に走る「政治家」や、無駄遣いを続ける「官僚」や、おこぼれに群がる取り巻き(「マスコミ」含む)から、「子育て層」へとお金をシフトすればいいだけです。

 

明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

@izumi_akashi・6月9日

最大の敵はマスコミです」(4分過ぎあたり)と、
日本記者クラブで講演した。本当にそう思う。
“政治家”に忖度し、“官僚”に騙され、
“マスコミ”は本当のことを“国民”に伝えていない。
“国民”よ、“マスコミ”を信じてはいけない

 

対立陣営のことも口汚く罵り、「明石市を“古い利権政治”に戻させないため、負けるわけにはいかない」と攻撃します。「「公共事業を増やそう」が対立陣営の合言葉とのこと」とノタまっていますが、そんな馬鹿げた合言葉など存在せず、悪意の充満した泉市長のでっち上げ策動であることは言うまでもありませんね。

 

明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

@izumi_akashi・12月24日

候補者公募の件をNHKもニュースで報じている。市議選に続き、市長選についても1月から公募を始める。対立陣営でも様々な動きが始まっている。「公共事業を増やそう」が対立陣営の合言葉とのこと。明石市を“古い利権政治”に戻させないため、負けるわけにはいかない。

 

第2の手口
抑えに抑えているうらみや怒りに働きかけ、晴らすかのような幻想を与える

明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

@izumi_akashi・12月17日

『岸田首相、増税でも「賃上げするから負担感なし」』とのニュースが流れてきた。怒りを通り越し、悲しくなってくる。おそらく首相は本当にわかっていないんだろう。国民の生活が苦しいことも、これ以上の負担が大変なことも、そして、総理が国民に支持されていないことも。

 

明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

@izumi_akashi・12月23日

普通の市民のために働く議員が少なすぎる。それは選挙と無関係じゃない。特定の団体に担がれて選挙に出ることが悪いわけじゃなく、その後、広く市民のために働けばいいだけだとも思うが、実際は・・・。

選挙における新しい可能性を、我が明石市で証明したいとの思いだ。

 

明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

@izumi_akashi

テレビ局へのお願い。

国民、特に子育て中の国民は、子育てや教育に関する費用負担に苦しめられている。これ以上、国民に負担を強いるべきではない。

TBSなどは、平均年収にして1600万円以上の高収入だが、世の中、そんな年収があるのは、テレビ局など、ほんのひと握り。
庶民感覚での報道を切に願う。

 

コロナ禍やウクライナ紛争などに起因する先行き不透明な世相のもと、物価上昇が続き、人々が様々な不安や恐れを感じている中で、政治家やマスコミを「上級市民」たる敵として激しく攻撃し、不安や恐れを怒りに転換させながら、緊張から解放された錯覚を抱かせようと、泉市長は日夜ツイートを連打されています。

 

そして、泉市長のつぶやきは、場当たり的で論理矛盾のタワゴトだらけですが、泉市長を支持している「感情を支配されたネット民」にとっては、小森教授が指摘するように「論理的に矛盾しても、感情的な流れにおいては完璧につじつまが合っている」のでしょうね。

 

 

3つ目の手口
政策的な因果論的思考を有権者から奪う

 

明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

@izumi_akashi

「子どもを応援しない社会に未来はない」

求められているのは、子どもファーストへの『発想の転換』であり、『子ども予算の3倍増』と『人材の育成』だ。

明石市”で実現できたことが、“国”で実現できないはずがない。

 

明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

@izumi_akashi・5月21日

『こども家庭庁』に”あるもの“と”ないもの“。

あるのは「参院選対策への思惑」と「利権の温存」。

ないのは「こどもへの愛情」と「日本の未来への責任感」。

やってる”フリ“では、こどもは救われないし、日本の少子化も止まらない。

政治家よ、日本を消滅させるつもりか!

 

明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

@izumi_akashi・12月21日

明石市子育て支援策』なんて、海外では“普通”のことばかり。何も凄いことはない。日本だけが子どもに予算を使わないから(昔から諸外国の半分程度)、できていないだけのこと。明石市のように『子ども予算の倍増』(126億円→258億円)』をすればいいだけ。簡単なことだ。

 

見事なまでの軽佻浮薄な言葉遊びのオンパレードですね。少子化問題についての論理的・因果論的思考が皆無で、『発想の転換』『子ども予算の3倍増』「こどもへの愛情」「日本の未来への責任感」といった空虚なキャッチフレーズの連呼と人気取りのバラマキだけでやっているフリをしても、こどもは救われないし、日本の少子化は止まりません。

 

少子化問題について、政策的な因果論的思考を有権者から奪う愚かな政治家こそ、日本を消滅させる亡国の国賊と言わざるを得ませんね。

 

 

4つ目の手口
単一の争点に落とし込み二者択一を迫り、有権者に思考停止を強制する

『市民のための政治』か、それとも『私利私欲・党利党略』か、という空疎な争点に落とし込み、有権者に思考停止を強制しておられますね。

 

明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

@izumi_akashi・12月22日

最大のポイントは、『市民のための政治』か、それとも『私利私欲・党利党略』かということ。「市民のための提案」であれば、それが違う意見や考え方であったとしても、しっかりと尊重すべきだと思っている。そうではない場合には、市長としては何とも調整のしようがない。 

 

第5の手口
紋切り型の連鎖へのはめこみ

 

上述の「第1の手口」のところで、泉市長が対立陣営のことを口汚く罵っていることに触れましたが、「おたふ君」という人物による紋切り型の憶測ツイートに飛びついて、泉市長が「議会多数派の中心人物」とでっち上げる個別議員に対して、さらにステレオタイプの連鎖を増長しておられます。

 



代議制民主主義制度下において市民の信任を得て議席を確保した市民の代表者の一人である特定議員に対し、自身の主義主張と異なっているからといって、紋切り型の連鎖でバッシングすることは、当該議員に一票を投じた市民への背信行為であるという、あまりにも当たり前のことが泉市長には理解できないようです。「市民のための政治」を標榜しておきながら、自らの主義主張と異なる市民は、市民にあらずという泉市長の偏狭性・狭量性・排他性がむき出しになっていますね。

 

 

本稿の補遺

本稿では、小森陽一教授の論文(というか手記)に依拠して、泉房穂市長の政治手法について検証しました。泉市長の政治手法は、小森教授が言うところの橋下徹氏の「5つの手口」とそっくり瓜二つであることが見て取れます。泉市長は、大学時代のラグビー仲間で司法修習同期でもある橋下徹氏から「5つの手口」を学んだのでしょう。

 

ところで、小森陽一教授には、2つの顔があります。一つは、夏目漱石宮沢賢治正岡子規など日本近代文学の専門家として、難解な学術研究書を多数刊行してきました。もう一つの顔は、憲法改正に反対する「九条の会」の運営に事務局長として関わるなど、政治運動を積極的に行ってきました。

 

小森陽一教授が「5つの手口」を論じたのは、日本近代文学の専門家としての立場からではなく、橋下徹氏の思想信条を全否定し、危険思想の持ち主と批判する政治運動の一環だったようです。

 

ともあれ、橋下徹氏の政治手法を批判し糾弾するのであれば、橋下氏からそれを学んだ泉房穂市長に対しても批判的眼差しで対峙すべしという帰結になろうと思いますが、是非とも小森陽一教授には泉市長についても論じていただきたいものです。