泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

明石市の人口増加率がNo.1という、あまりに気恥ずかしい噴飯ものの主張(前半)

 

明石市役所では、子育て施策を広報する「笑顔のタネあかし」というウェブサイトを運営しているようです。

明石市が運用する子育て施策紹介サイト



このサイトには、いろいろと突っ込みどころ満載の興味深い記載が多々ありますが、最もびっくり仰天した絵図の一つが、これです。

 

 

明石市第1位 明石市の人口304,123人と書かれているではありませんか。では、いったい何が第1位なのでしょうか。この絵図の上のほうに目をやると、次のような記載があります。

 



人口増加率がNo.1だって!!!???

これについては、毎日新聞の2021年11月30日のウェブ記事にも同じ事が書いております。おそらく、明石市が記者発表したのでしょう。

 

 

 

そしてここで、泉房穂市長に登壇いただきましょう。2022年8月21日のツイートを引用します。

 

明石市は『予算のやりくり』だけで「こども予算」を“2倍以上”にした(126億円→258億円)。そして市独自の5つの無料化も実施し、人口増・経済活性化も実現した」、という毎度おなじみの持論をつぶやいておられます。

 

「こども予算」を『予算のやりくり』で確保しているというのは決してウソ偽りではありませんが、「こども予算」に限らず、すべての市の事業は「予算のやりくり」で賄っているはずで、全く無意味な口上です。ちなみに、倍にしたと豪語するところの258億円の内実は、国と県から市に供与された予算が67%、また3%は将来世代の市民にツケを回す借金で賄っていることは以前の記事で指摘したので、繰り返しません。

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

今回は、泉市長持論の後半、子ども予算の増額によって人口増が実現した、という主張について考えいきますが、これについても、因果関係を実証できない虚言だと言わざるを得ません。

 

だいいち、明石市では市長の命を受けて、人口増加率がNo.1とウソぶいておられますが、全国の市町村には、明石よりも人口増加率が高いところがいくらでも存在します。具体的な数字は次回の記事でお示ししますが、もし明石市民の方がほかの自治体の人に、「明石の人口増加率は全国トップだ」なんてことを口にすれば、赤っ恥をかくので気をつけましょう。

 

そして、明石市よりも人口増加率が高い自治体だからといって、必ずしも子育て施策に多額の予算を投入している訳ではありません。逆に、自治体の財政力や人口を考慮すれば、明石市以上に児童福祉費のウエイトが高い自治体も存在しますが、児童福祉(子育て施策)に湯水のようにお金をつぎ込んだとしても、悲しいかな人口が減り続けている自治体もあります。

 

では、どのような自治体において、人口が増加しているのでしょうか。この点については、人口学などの領域で、すでに膨大な研究の蓄積があり、コンセンサスが確立している事項は次のとおりです。

 

  1. 日本全国をマクロでみると、首都圏に一極集中が続いており、北海道や東北、四国・九州のみならず、関西圏からも首都圏に人口流出が見られ、東京都や神奈川県、千葉県、埼玉県などは人口の流入超過となっている。
  2. 首都圏において人口増加している自治体は、都心中心部の地価が高いエリアと、郊外のベットタウンに二極化している。
  3. そして、都心中心の地価が高い地域には、主として高所得の一人暮らし又はDINKSたちが、高価な高層マンションなどに居住し歓楽街も近く職住一致の都市ライフを満喫している。
  4. 一方、子育て世代には、交通の便がよく、公園や自然環境が豊かで、商業施設が充実(怪しい歓楽街は存在しない)し、雇用環境も良好で、新たな宅地開発の余地のあるベッドタウンが好まれ、子どもがいないときには都心に居住していた夫婦も、出産に伴い郊外のベッドタウンに転居する。
  5. 日本全国では首都圏に一極集中の人流であるが、地域ブロック単位でみると、雇用環境が良好で商業施設が充実した地域の中核都市(例えば、福岡や大阪、名古屋、札幌)が人々を吸い寄せ、3、4と同様に、地域ブロック中核都市の都心中心部又はその郊外のベットタウンの自治体で人口が増加している。
  6. 地域ブロックの中核都市以外でも、各県レベルでみると、主として県庁所在地周辺の交通の利便性が高く、公園など緑の環境が豊かで、商業施設が充実し、雇用環境も良好で、新たな宅地開発の余地のあるベッドタウン自治体で人口が増加していることがある。

 

人口増加率の高い自治体について、人口増加が生じている理由としては、上記の1から6のいずれかでほぼほぼ説明することが可能です。

 

ひるがえって我が明石市は、1960年代から大阪・神戸のベットタウンとして栄えてきましたが、市の西側の地区(大久保や二見)に宅地開発の余地がある土地が残存していました。そして、これらの地域でこの10年間ほど、マンション建設ラッシュが続き、子育て世帯向けの比較的安価な住宅供給源になってきたのです。

 

もちろん、「明石は子育て支援が充実している」という風説によって、転居先に明石を選択した子育てファミリーも一定数存在することは否定しません。しかし、子育て予算の拡充が人口増に寄与したウエイトは決して高いものではないのです。

 

繰り返しますが、市内に新たな宅地開発の余地のある区域が存在し、現に宅地開発が進められており比較的低価格で住宅を購入又は賃貸でき、かつ、交通の利便性が抜群で、比較的緑の環境が豊かなこと、そして日常の買い物に困らないほどほど商業施設が存在することが、明石で人口増が続く主因なのです。

 

そしてこれは、明石に限ったことではなく、子育て予算の水準に関わらず、大都市近郊で現在人口増増加が続くベッドタウン自治体に共通する人口増要因なのです。

 

本記事の冒頭で紹介した明石市のウェブサイトの「人口増加率 明石市 第1位」絵図ですが、パソコンから顔を離し視界を広げて改めて凝視すると、なんと、姑息にも、「中核市」の文字が入っているのではないですか(汗)。

 

 

毎日新聞の記事も同様でした。「62中核市で」と見出しに注意書きが入っておりました(笑)。

 



人口増加率第1位と見栄をはりながら、全市町村順位でトップなのではなく、62中核市のなかでという極めて限定的な条件下での順位だったようです。それにしても紛らわしいですね。三流タブロイド紙がウケ狙いで見だしを付けるときの常套手段ですが、景品表示法に抵触しかねないような紛らわしい広報を打っていることに、明石市の品位を疑わざるをえません。

 

まあでも、「笑顔のタネあかし」というタイトルと同レベルのジョーク・ギャグの一環ということであれば、虚偽誇大広告だと目くじらを立てるまでのことはないですね。とまれ例によって、明石市長がお詫びのツイートをしているようですが、滑稽で傑作です。