泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

明石市税の徹底解剖(後編)泉市長在任中の個人市民税、固定資産税、都市計画税の税収伸び率は全国平均を下回る惨状

泉房穂市長は、テレビや雑誌のインタビュー、ツイッターなどで、「明石市の人口増加率は9年連続1位(中核市の中で)」「税収は8年前との比較で32億円増」などと述べ、人口増が税収アップに結びつく好循環が生じていると自画自賛しています。

 

本サイトの以前に記事において、人口増加率がナンバーワンという主張の真偽について解説し、明石市の市税について、以下の客観的事実を指摘しました。

・2010年時点(泉房穂市長着任直前)と10年後の2020年を比べると、一見、予算が大幅に増加しているよう思えるものの、実態としては国や県からの配分の増大が主要因であり、地方税(市税)自体が大きく増えた訳ではない

地方税(市税)は、10年間で10%程度増大しているものの、全国的には平均レベルの伸び率に過ぎない

 

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

 

 

今回の記事は、前回の続編として、明石市の市税の構造について深掘りしていきたいと思います。

 

根拠不明で理解不能な「税収は8年前との比較で32億円増」という主張

上述のとおり泉市長は「税収は8年前との比較で32億円増」という主張を繰り返しツイートしておられますが、何年度からの8年間なのか、具体的にどの税目を比較したものなのか明確ではありません。

 

おそらく、市税全体の推移ではないかと推察し、明石市の市税の推移をざっと見てみましたが、8年間で32億円増加したという年度推移は確認できませんでした。果たして根拠は何なのか訝しく思いながら、さらに泉市長殿のツイートをたどったところ、「個人市民税、固定資産税、都市計画税の合計額/2020年度」との記載が確認できました。

 

なるほど、個人市民税、固定資産税、都市計画税の3税の合計額は、2012年度342億円であり、2020年度374億円と比較すると、差額は32億円となっており、確かにこの3税の合計額の推移としては虚偽ではなさそうです。けれども、市税の様々な税目のうち、なにゆえに個人市民税、固定資産税、都市計画税の3税だけを抽出しているのか理解不能です。

 

明石市の2021年度一般会計決算においては、市税の歳入額として以下の款項と決算額が載っています。

 市税合計 436億6145万4千円

 

このうち、市民税は、個人が支払う個人市民税と法人が納める法人市民税とに区別するのが一般的であり、前者の個人市民税(2021年度)は165億3195万5千円、後者の法人市民税は25億9787万円でした。

 

以下において、個人市民税、法人市民税、固定資産税、都市計画税事業所税の各項目ごとに過去20年間の推移を見ていくことにより、「人口増が税収アップに結びつく好循環が生じている」とする泉市長殿の主張が的外れな妄言であることをお示しします。

 



 

 

 

明石市の個人市民税の実態

個人市民税とは、市民個々人の1年間の所得に対してかけられる税金です。町や村の場合は正確には町民税、村民税ですが、本稿ではひっくるめて市民税の用語を用います。個人市民税は所得割と均等割で構成されますが、ウエイトが大きいのが所得割です。所得控除や税額控除などのルールがありますが、基本的には、個人住民税の税額は前年の所得に連動します。なお、国の税制改正によって税率などは変動しますが、ここでは深入りしません。

 

個人の所得の水準が、景気に左右されるであろうことは言うまでもありません。景気が良くなって企業の収益が上がると従業員の給与所得もあがり、結果として行政の税収はアップします。また、景気が良くなると、財布の紐が緩んで買い物の金額が増え、個人商店の個人事業主も所得が上昇します。

 

実際、景気に連動して個人住民税の税収が変動することが知られており、2002年(平成14年)1月を「谷」として、2008年(平成20年)2月まで、73ヶ月という長期にわたって景気拡大が続きました。結果として、個々人の所得は年々上昇し、個人市民税の税収は、全国的にみて2003年から2008年にかけ上場を続けました。明石市も同様の推移をたどっています。

 

しかし、2008年(平成20年)9月にリーマン・ショックが発生し、世界同時不況により、日本も2009年には、実質経済成長率はマイナス5.2%にも達する落ち込みとなりました。その後、世界各国が協調的な景気下支えを行ったこともあって比較的早期に景気は回復しました。そして、2012年12月には、第二次安倍内閣が発足して、大胆な金融緩和策などを講じたことから、企業収益は年々上昇していきました。

 

このような景気動向に連動する形で、2010年~2011年にかけて、全国的に個人市民税の税収は悪化しますが、2012年以降2020年度にかけて一貫して税収は上昇を続けます。2011年の個人市民税収を100としたとき、2012年には126に達しており、10年間で26%上昇したことになります。

 

明石市も同様の経過をたどります。2008年度には161億円に達した個人市民税は、泉房穂氏が市長に就任した2011年度には147億円まで低下しました。その後は、全国的な景気の動向に合致して、順調に個人市民税の税収はアップしていきました。明石市の個人市民税収は2011年度を100としたとき、2020年には114.4となっています。

 

ここで、泉房穂市長の持論を思い出してください。泉市長殿の在任期間中に明石市の人口が増加し、それに連動して税収が上昇する好循環が生じた、とのたまっておられます。けれども、泉市長殿の在任期間には、全国的に個人市民税は上昇の一途をたどっており、むしろ、明石市は、全国水準を下回る伸び率に留まっています。もしも人口増が税収アップに結びつくという市長の主張が真実なのであれば、明石市の個人市民税収はもっと高い伸びになっていないとつじつまが合いません。人口増によって税収がアップしたという主張が、嘘っぱちだということは明らかですね。

 

明石市の法人市民税の実態

法人が地域社会の一員として市に納める税金である法人市民税は、法人税額と連動し法人の所得に応じて納税額が算定される法人税割と、従業員数と資本金を課税標準とする均等割とで構成されています。

 

個人市民税の税収は景気の動向に左右されることを上述しましたが、法人市民税は個人市民税以上に景気に敏感に反応して、税収が大幅に変動します。不景気になって法人が赤字になると、当該法人には法人税は発生せず、法人市民税(法人税割)も支払う必要はありません。

 

また、法人市民税は、景気の影響のみならず、国の税制改正に伴う税率等の変更によって、税収額が大きく増減します。このようなことから、法人市民税は、自治体の税務当局にとっては扱いづらい税目です。

 

さておき、全国総計の推移の図表をご覧下さい。2011年(平成23年)度を100としたときの推移を示していますが、2011年度以前では、2005年から2008年頃にかけて好況を反映して、法人住民税の税収は高い水準を維持していますが、リーマン・ショック後の2009年、2010年にかけて税収は大きく落ち込みます。

 

2011年度以降は、景気の回復とともに税収は回復し、年度によって若干の変動はありますが、2014年度から2019年度にかけては比較的高い税収(2011年度を100とすると、おおむね110~120前後の水準)を維持します。2020年度には、新型コロナ感染症の流行に伴う景気悪化により、税収は低下します。

 

次に、明石市の推移の図表をご覧下さい。全国総計と同様、2005年から2008年頃にかけて、法人住民税の税収は高い水準を維持していますが、2009年、2010年にかけて税収は大きく落ち込みます。2011年度以降は、景気の回復とともに税収は回復し、2016年度には120.6(2011年度を100)と高い水準に達しています。

 

しかしながら、全国総計では、2017~2019年度にかけても法人市民税は高い水準が維持されているのに対し、明石市では、2017年度以降の法人市民税の税収が芳しくありません

 

人口増に浮かれる泉市長殿は経済対策が完全に無為無策であり、新型コロナ感染症が流行する数年前から、明石市内の法人が体力を失いつつあったことが見て取れます

 

明石市の固定資産税の実態

固定資産税は、土地、家屋、償却資産(事業用の機器)の所有者が支払う税金です。軽減措置や補正調整など細々としたルールがありますが、土地の税額は、基本的には地価が上がれば連動して高額になります。また、家屋の固定資産については、一般住宅の場合には、一定期間税額が軽減されますが、築後年数がたち家屋の資産としての価値の低下とともに、税額は減少していきます。

 

地価は、長いスパンで見た場合、景気が良く土地の取引が活発化した際には上昇します。バブル崩壊前には、地価が異常に高騰したことはよく知られています。一方、景気の低迷期には、政府の景気浮揚策として、金融緩和(金利の低下)や住宅ローン減税がなされ、住宅購入が刺激され、地価は上昇に転じます。固定資産税の推移を見る際には、このような景気や金利の動向などを考慮する必要があります。

 

一方で、固定資産税収は地域差も目立ちます。賑わいのある商業地や宅地開発が進み転入者が増加傾向にある住宅地ではエリアでは地価は上昇し、このような人気エリアをかかえる自治体では固定資産税の税収は経年的に増加します。逆に、過疎が進む不人気地域では地価は下がり、そのような地域では、固定資産税の税収は低下していきます。

 

固定資産税の税率は、市町村の条例の定めによりに微妙に異なりますが、固定資産税を人口で割った数値を比較することで、その自治体の商業地や住宅地としての魅力の度合いを評価でき、また、一定期間の経年的な固定資産税収の推移を比較することで、その自治体の人気の度合いを推し量ることが可能です。

 

2002年度以降の固定資産税の全国総計の推移をみると、2002年度から2006年度にかけて低下し、その後やや持ち直した後、2012年年度が底となり、以後、税収は上昇傾向が持続します。明石市においても、全国と全く同じような推移をたどっています。

 

しかしながら、この10年間の税収の伸びをみると、2011年度を100としたとき、全国総計では2010年度に104.6なのに対し、明石市は103.6であり、微妙に全国の伸びを下回っています。

 

泉市長殿のご持論であられる人口増による好循環によって地価があがっているのであれば、固定資産税の税収はもっと上がっているはずです。なんだかんだ言って、泉市長就任後の明石市の固定資産税収の伸び率は、全国水準を下回る伸び率に留まっているのが現実です。

 

明石市都市計画税の実態

都市計画税は、固定資産税と同様に、土地や家屋の所有者に課せられる税金ですが、全ての土地等に課せられるのではなく、市街化区域内の土地等に課税対象は限定されます。

 

市街化区域とは、すでに住宅や商業施設などが立ち並ぶ市街地になっている区域か、自治体が10年以内に優先的に市街地にしていこうと計画し、道路や下水道、公園といった都市機能や施設の整備を積極的に進めている区域です。このように、都市計画事業や土地区画事業の費用に充てることに目的を特化した市税が都市計画税なのです。

 

都市計画税の税収は、固定資産税と同様に、地価の推移に連動するものです。全国集計でも、明石市においても、都市計画税の税収は、固定資産税と似たような経年推移を示しています。ただし、この10年間の税収の伸びをみると、2011年度を100としたとき、全国総計では2020年度は104.9なのに対し、明石市は103.7であり、都市計画税残念ながら全国の伸びを下回っています

 

明石市における事業所税

事業所税は、都市に人口、事業者が集中することによって都市環境の整備に要する財政需要が増加することを考慮し、都市環境の整備に充てる財源を確保するため、1975年に創設された事業を課税対象とする市税であり、事業所床面積や従業者数が一定規模以上の事業主(法人又は個人)に課せられます。

 

事業所税を課すことができる自治体は地方税法において、人口30万以上の市と規定されています。現時点では、23の特別区、20の指定都市、指定都市以外で人口30万人を超える55の市が該当します。

 

明石市では、人口が30万人を超過した2018年7月から政令改正を経て課税が開始されました。初年度の18年度の税収は4億円ですが、以後、例年16億円ほどで推移しています。

 

行政の立場からすると、人口30万を超過したことに伴う特典ボーナスという見方もできますが、市内の事業者にとっては、取り立てられる税金が増えて不満の声も強いようです。

 

前回の記事で、明石市の市税全体の伸び率は、2010年度と比較して2020年度は11%増と微増しているものの、全市町村の市町村税率の同時期の伸び率(11%増)と全く同レベルであり、明石市が格別税収が高いわけではないことを説明しました。仮に、事業所税が課税されてなければ、明石市税の2020年度/2010年度比の伸び率は7%に留まり、全国平均よりも大きく見劣りしていることになります。

 

泉市政下での個人市民税、固定資産税、都市計画税の惨状

本稿では、市税(市町村税)の主要税目について、全国集計と明石市における過去20年間の税収の推移を検討してきました。

 

前回の記事では、明石市における市税全体の伸び率が、泉市長が自慢するほど芳しい成績ではないことを示しましたが、今回は、個人市民税、法人市民税、固定資産税、都市計画税の各セグメント毎にみても、泉市長の在任期間中の伸び率はいずれも全国集計を下回る水準に留まっていることを確認しました。人口増加に伴う税収アップの好循環など全く生じていないのです。

 

最後に、泉市長が壊れたスピーカーのごとく繰り返している「税収は8年前との比較で32億円増」の根拠となる個人市民税、固定資産税、都市計画税の3税合計の2012年度と2020年度の伸び率について指摘しておきます。

 

明石市では、個人市民税、固定資産税、都市計画税の3税合計は、2012年度342億円、2020年度374億円で8年間の伸び率は9.3%です。一方、全国集計での3税合計額は、2012年度は16兆7380億円、2020年度は19兆1360億円で、伸び率は14.3です。明石市の伸び率は全国水準を5%も下回っているのが実態で、32億増などと自慢するのは詐欺にも等しい愚挙だと言わざるを得ません。