泉房穂(前)市長の御言葉を検証する明石市民の会

泉房穂(前)市長の過去の発言を振り返り、明石や日本の将来について考えます

借金を8年間で203億円も増やしていながら、悪びれることなく堂々と"借金”は減っていると強弁する泉房穂市長

泉房穂明石市長の、2022年6月10日のツイートを引用します。

 

明石市は、いずれ“破綻”するに違いない」との批判がいまだに見受けられるが、そんなことはない。
事実としては、
①主要“税収入”が8年前より32億円増え、
②“基金残高”が市長就任前より51億円増え、
③他方、“借金”は減り、
明石市の“財政”は極めて“健全”な状態。
“破綻”どころか“順調”そのものだ。

 

“借金”は減り、明石市の“財政”は極めて“健全”な状態。“破綻”どころか“順調”そのものだ。」と主張されています。このツイートは、3.8万件のいいね、7,352件のリツイート、525件の引用ツイートを誇っていますが、ここで書かれていることが、事実のねつ造であり、虚言だとしたら、いいねを押した人たちは、どうリアクションするでしょうか。

 

約2週間後の6月29日には、引用ツイートとして、泉市長は以下のようにつぶやいておられます。

「事実」をお伝えしておくと、明石市の『借金』は減っていっています。
実質公債費比率(借金の返済割合)は3.4%と小さく、財政状況は県内トップレベルです。
貯金の方は更に9億円増え、121億円となりました。
「事実に基づかない批判」に対しては、「事実」をもっての説明を続けていく予定です。

 

さらに7月13日には、『引退した後のことまで考えていますか?』との質問に対し、泉市長は次のような引用ツイートを書き込んでおられます。

 

『引退した後のことまで考えていますか?』との質問にお答えします。
もちろん考えています。
明石市は、財政面も好調(税収増・貯金増・借金減)で破綻などしません。
私は”今だけ良ければ“といった発想の持ち主ではなく、子どもや孫の代にまで責任を持ちたい方です。
大丈夫です。ご安心のほど。

 

 

今ほど列挙した3つのツイートではいずれも、「税収 増えています!」「貯金 増えています!」「借金 減っています!」と書かれた3つのボックスが併置された図示されています。

 

 

本ブログでこれまでにも度々言及してきましたが、この税収・貯金・借金の3連図の元々の出典は、市内各家庭に配布されている「明石市 市政ガイド2022」であり、またこれを一部改編した泉市長の講演資料から転載されているものと思われます。

 

これら3連図の左側の税収、そして真ん中の貯金に関しては、市税収入額や基金残高の増大は全国の多くの市町村で共通する傾向であり、明石市だけ格別優れた実績というわけではなく、何ら自慢できる数値ではないことは、以前のブログ記事で説明済みです。

 

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

また、前々回のブログ記事では、右側の借金の項目にスポットをあて、借金の増減を評価するためのメルクマールとしてそもそも実質公債費比率を持ち出すのはナンセンスであることを説明しました。その上で、明石市ではここ数年、実質公債費比率は悪化傾向にあり、いずれにしても借金が減っていることの根拠とはなっておらず滑稽であると指摘しました。

 

akashi-shimin.hatenablog.jp

 

 

市債残高の推移で借金の増減を評価する

今回は、借金の増減を示すシンプルな指標は何で、その指標で見ると明石市はどのような状況にあるのかを、検証してみましょう。

 

自治体における借金が、増えているか減っているかを検証するのはどうすればいいでしょうか。このように急に言われても検討がつかないかも知れませんが、個人がローンで買い物するときの借金と全く同じことなのです。

 

ある一定の期間、例えば1年間に、個人が新たにローンで買い物をした金額の推移を見るという方法があります。同様に、自治体が、1年間に新規に借金した金額(市債発行額)の推移を経年的に比較し、増えたか減ったかを調べることができます。

 

しかし個人の借金については、新たな買いモノをして借金する一方で、同時に、過去の借金の返済も進んでいきますよね。ですので、ある一定期間の新規に借金を負った金額よりも、ある時点における借金残高を比較するほうが、経年的な増減を評価するのは適していることが理解できると思います。

 

自治体も同様で、ある年度のやりくりを考えると、例えば学校の校舎建築や公園の整備のため、新規に起債(借金)する一方で、過去の借金の償還(返済)も行っています。このため、各会計年度の終了時点である3月末の時点における市債現在高(借金残高)を把握し、経年変化を追うことで、借金の増減を簡単に評価することができます。

 

実際各自治体においては、決算資料において各年度末時点の市債現在高(市債残高)を公表しています。明石市も例外ではありません。公式な決算資料には、1000円単位の細かい金額が記載されていますが、長期的な推移を把握するのに細かい数字は不要で、億単位のオーダーで十分です。

 

明石市では、決算の状況をわかりやく市民の紹介するため、「明石市の財政 かんたんな決算の説明書」という14ページほどの資料を公表しています。

https://www.city.akashi.lg.jp/zaimu/zaisei_ka/shise/zaise/aramashi/documents/kantannakessan02.pdf

 

この資料では、10年間の一般会計の市債残高が億単位で示されています。令和2年度版の資料11ページには、平成23年から令和3年までのグラフが載っていますので、コピペします。

 

このグラブの赤紫色の折れ線が、一般会計の市債残高の推移を示しています。このグラフでは、臨財債を除いた市債残高と、別目盛りで基金残高も併せて記入されており、やや見にくいので、市債残高だけのグラフを作ってみます。市役所のホームページには、平成28年度版の資料も掲載されており、当該資料で得られる平成19~22年度のデータも追加して示します。決算カードから、平成17、18年分も加えます(ただし、こちらは一般会計ではなく総務省基準による普通会計の市債現在高です)。

 

 

8年間で203億円もの借金増!!

このグラフから読み取れることは、一目瞭然ですね。泉房穂殿が市長に就任したのは平成23年度のことですが、それ以前には、市債残高は減少傾向が続いていました。小泉構造改革が吹き荒れる中、前市長時代には骨身を削る財政再建が進められていたのです。しかし、泉房穂市長が予算編成に関わるようになってからは、年々、市債残高が増大していきます。平成25年度には一気に106億円も借金が増えました。その後も、毎年じわりじわりと増加を続け、令和2年度末には、1193億円まで膨らみました

 



上述の税収・貯金・借金の3連図のうち、税収の図では2012年度と20年度を比較しているので、これを踏襲して8年間の推移をみると、2012年度の990億円から2020年度の1193億円と、8年間のうちに借金が203億円も増えているのです。率で表現すると、市債残高の増加率は20.5%にも及びます

 

なお、一般会計の市債残高の提示については、「後年に地方財政措置される臨時財政対策債(臨財債)は増大しているものの臨財債を除いた市債残高は横ばいなので、財政的には健全だ」「特別会計企業会計も加えた全会計ベースでは、市債残高は減少しているので、一般会計だけで判断するのはミスリードだ」という反論が予想されるところです。ただ、臨財債も市が負担義務を負う借金であることに違いなく、また、特別会計企業会計は独立採算による経営努力が求められるので、一般会計とは区分するのが妥当であるので、このような主張には与しません。

 

税収・貯金・借金の3連図のうち、税収・貯金は現状の記載を許容するとしても、借金の項目は、ただちに、次のような内容に修正する必要があります。

 


借金増のボックスのみ、念のため拡大しておきましょう。

 

市債残高の急増が意味すること

実はこの8年間に急増した203億円もの借金の額は、泉市長が自慢するところの「5つの無料化」施策に費やした同時期の所要額とほぼほぼ一致します。泉市長が主張する「やりくり」、すなわち財源捻出の真相は、100%全額借金によって「5つの無料化」の費用を工面していたとも言えるのです。

 

このように書くと、次のような反論が予想されます。いやいや、自治体が起債できるのは、基本的には社会資本整備のための建設・土木事業だけであり、扶助費を借金で賄うことなんでてきないのでデタラメな主張だ、と。

 

確かに、自治体による借金は、学校や焼却施設、都市整備など社会資本整備のための公共事業用途に限定されており、「5つの無料化」のような個別給付の財源確保を目的とした市債発行は認められていません。しかしながら、泉市長の好きな言葉である「やりくり」でどうとでもなる話なのです。

 

ちょっと荒っぽい説明ですが、例えば、50億円の都市整備事業を実施するのに、財政当局では、35億円を当該年度の収入で賄い、残り15億円を借金で工面する方針だったとします。しかしながら、市長から、バラマキ施策のため20億円を捻出せよと命令が下ったとします。財政当局は、やりくりのため、当初35億円を確保していた都市整備事業のための予算のうち20億円を市長肝いりのバラマキ施策に回さざるを得ません。かくして起債額は15億円から35億円に大幅に膨らむのです。

 

ともあれ、8年間の間に200億円以上も借金が膨らんだ背景について、「明石市の財政 かんたんな決算の説明書」では次のように述べられています。

市債残高は、過去の大型事業の市債の償還(借金の返済)が進むとともに、新規の市債発行(借金)を抑制してきたことなどにより減少傾向にありましたが、平成25年度以降については、土地開発公社清算に伴う第三セクター等改革推進債の発行、臨時財政対策債残高の増加、明石駅前南地区市街地再開発事業や中学校給食導入事業などの投資的経費に係る市債の発行により増加しています。

 

明石駅前南地区市街地再開発事業については、当初の計画段階では、市の負担額(補助額)は104億円程度と想定されていました。ところが事業開始時点(2015年)には139億円に膨らみ、さらに事業完了時点(2030年)には最終的に165億円にも達しました。結果として、市債額も跳ね上がりました。

 

この資料には明記されていませんが、中核市移行に伴う保健所や動物愛護センター、児童相談所等の整備にかかる市債や、待機児童対策としての保育所整備のために起債した市債もハンパな額のではありません。

 

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これから工事が予定されている市役所の建て替えについては、現時点では総工費は130億円と見込まれています。ただでさえこの手の事業は、工事の途中で価格がつり上がり、最終的には当初の計画の2~4割程度事業費は膨らむものです。今後、貸出金利の高騰が予想されているところであり、起債した場合の金利負担の激増は不可避です。

 

このような状況の中で、泉市長はさらに図書館を3カ所整備する構想を示しています。1960~70年代に建造された市立幼稚園・保育所の老朽化も深刻で、更新のための大規模工事は待った無しとなっています。このままだと、近いのうちに、市債残高は一気に150~200億円ぐらいは増えてしまう事態は避けられそうにありません。例の実質歴公債費比率も、ぐんぐんと高い値になっていくことでしょう。

 

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冒頭で引用したツイートで泉市長殿は、「明石市の“財政”は極めて“健全”な状態。“破綻”どころか“順調”そのものだ。」とのたまっています。しかし現実には、明石市の財政は破綻に向かって急な坂道を転がり落ちつつあるのです。選挙目当てのためだけで政策的意義は皆無のバラマキを一刻も早く止めないと、手遅れになってしまうことでしょう

 

次回は、近隣自治体における市債残高の推移を紹介し、明石市の状況と比較してみます。他の自治体と比較することで、明石市の異常さ・深刻さが一層浮き彫りになるはずです。ご期待ください。

 

 

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