明石市は2023年1月27日に、令和5年度当初予算編成状況について、議会説明及び記者発表を行ったようです。その際の資料が、明石市のホームページに掲載されています。
今回公表されたものは概要資料のみで、しかも、あくまでも現在検討中のものであり、今後、変更する可能性があるとのことです。ともあれ全体をざっと見たところ、4月の市長選を念頭においてうまく練られており、見事な計略ぶりでご立派です。お世辞ではありません。令和5年度当初予算の内容については、本ブログで順に批評してきますが、今回は、基金の繰り入れについて取り上げます。
本ブログで先般、泉房穂・明石市政における基金運用の問題点について連載しました。その際に、泉市長が、児童手当拡充のための財源として、基金活用を目論んでいることを暗示するツイートを書き込んでいることを紹介し、財政政策的にナンセンス極まりないだと酷評しました。
というのも、泉市長は2022年12月7日のツイートで、『児童手当拡充(高校生世代対象、所得制限なし)』について、「財源はやりくりで対応する予定。もっとも、私の市長就任時から51億円も基金を積み足してきたので(70億円→121億円)、その取り崩しも可能という趣旨。財源は大丈夫。」と主張していたのです。
このツイートを目にしたとき、私たちは、2つのことを予測しました。
1つめは、もしかすれば泉市長は、基金をアテにして児童手当拡充の予算を工面しようとするのではないか、という予測です。
2つめの予測は、市長は基金の活用を強固に主張するものの、副市長以下財政担当者が条例違反であると市長を説得し、結局、基金の活用は思いとどまるのでは無いか、
というものでした。
1月27日の公表資料を見たところ、私たちがたてた予想のうち、1つめは見事に的中し、一方で、2つめの予想は、見事に外れてしまったことが明らかとなりました。
すなわち、こういうことです。
市長は、基金をアテにして児童手当拡充の予算を工面しようとした。
副市長以下財政担当者が市長を諫めようとしたが、市長が自説を押し通し、条例違反の予算編成に邁進している、
ということです。
1月27日の新年度予算編成状況説明会の資料1「令和5年度 当初予算案概要」を抜粋します。
この資料で注目すべき点は、以下のような記載です。
3基金繰入金の主な増加要因
①物価高騰に伴う光熱費の増 6億円
②高校生世代への児童手当拡充 8億円
③国民健康保険への操出金の増 4億円
上述の本ブログ記事「財政基金などの意味を全く理解していない残念過ぎる泉房穂市長 」で言及済みなので詳細はそちらをご参照いただければと思いますが、そもそも自治体の基金というのは、条例において使途が明確に定められており、市長の趣味や思いつきで勝手気ままに使用することが許されるものではないのです。
明石市の「3基金」というのは、1)財政基金、2)減債基金、3)特別会計等財政健全化基金、の3つのことを指しますが、これらは明石市の条例において、経済事情の著しい変動等により財源が著しく不足する場合の不足額の穴埋めや、災害時の緊急対策などに使途が制限されているのです。
現在編成中の令和5年度当初予算案では3基金繰入金は40.5億円となっています。これは、市税や地方交付税交付金、国や県などからの補助金だけでは令和5年度の財源を賄うことが出来ず、貯金を40.5億円切り崩すことを念頭においているということです。
一般論として予算編成段階では、悲観的な予測を立てて基金操入金は多めに見積もりますので、実際の予算執行段階では当初予算で措置された繰入金を全て使い切ることは無く、決算時には残金が生じるものです。とは言えども、令和4年度当初予算における3基金繰入金が28.1億円だったことと比べると、令和5年度は財源不足に伴う貯金の切り崩し予定額が12.4億円も増大しているのです。
そして、その主な用途が
①物価高騰に伴う光熱費の増
②高校生世代への児童手当拡充
③国民健康保険への操出金の増
の3つなのです。
このうち、1つめの「物価高騰に伴う光熱費」については、ウクライナ戦争に起因する国際的なエネルギー危機に伴うものであり、条例に規定された財政基金の使途に合致していると言えます。
また、3つめの「国民健康保険への操出金」についても、特別会計等の財政の健全な運営を目的とした「特別会計等財政健全化基金」を切り崩すことは、かろうじて条例に趣旨に合致していると見なすことが可能です。
しかしながら、2つめの「高校生世代への児童手当拡充」については、いわゆる3基金の条例の規定に鑑みれば、どんなに屁理屈を並べても、これらの基金を充てることを許容することは出来ません。すなわち、「高校生世代への児童手当拡充」のための財源として財政基金などをアテにすることは条例違反なのです。
この点については、3月議会で紛糾は必至と考えますが、議会各会派がどのような判断を示すのか、興味津々です。